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アルミホイルと器用

アルミホイルをぐしゃぐしゃにして使うと
油も切れるし食材がくっつかないらしい。

そんなの凄い大発見じゃん。
たまたま見てたテレビで私は凄いことを
知ってしまった。

もう今すぐやってみたい。
明日にでもぐしゃぐしゃのアルミホイルで
実感したい。

さっそくお肉でも焼こう。
アルミホイルをぐしゃぐしゃにした。

アルミホイルは戻らなくなった。

ぐしゃぐしゃの形を保ったまま。
固形の塊となってしまった。

どうしてなのか。
私は思い出した。

昔テレビでこうやると簡単だよ。
便利だよって教えてくれるおばあちゃんの知恵みたいな番組があった。

私はとても好奇心旺盛なので直ぐに試した。

毎回普通にやったほうがいいだろうという結果となっていた。
たくさんの無駄になったものたちよ。

ゴールまでショートカットしたつもりが
回り道をしながら途中で外国人に英語で道を聞かれたり、足の悪いお年寄りの荷物を持って階段を一緒にあがったり、おしゃれな人気カフェが空いてて入って寛いだりしていたのだ。

私はおしゃれなカフェでケーキを食べてる場合ではないのだ。

もうテイクアウトしてでも一刻もはやくゴールに着くべきだったのに、普段読まない本まで開いていたのだ。

そんなことをふと思い出して、目の前のアルミの塊を見つめた。
そう、物には加減がある。

私の力は壊す為に強くなったのではない。
こんな力は必要ではなかったのだ。

裏技やそんなのはまず正攻法でもできる人が
より良い人生を過ごすものなのか。

不器用。そんな言葉が過った。

私が知りたかったのは器用に生きる事だったのかもしれない。
器用であればどんなに世界が変わるのだろうか。

器用は人生を豊かにするはずだし
きっとアルミホイルの塊を生成することはない。

器用になりたい。

しかし私は不器用なところもまだいとおしく思えた。
正攻法でいい。回り道をしてもたどり着く場所は一緒だから。

そんなことを考えた夕飯時。

少し焦げたお肉を食べながら
気になっていたおしゃれなカフェに行って
美味しいケーキと紅茶でも飲もうと考えてたのであった。あとは絶対に読まない本でももって。

やっぱり本は置いて行こう。

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