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吾亦紅につけて、

こんばんは、威子と申します。
昨今花の写真ツイートおじさんと化していましたが、なんとかGUMI誕に合わせて新曲を出すことができました。

今年5月頃、次はこういう曲を作りたいな~というぼんやりしたイメージがありました。しかし6月初頭、宇都宮さんのイラスト「れたー」(https://piapro.jp/t/8H0f)に一目惚れし(浮かんでいた曲のイメージとも重なっていた)、何としてでもGUMI誕に向けて曲を作ろう!!!という思いに至りました。ありがとうございました。
そして配信用サムネイルのイラストもリクエストで描いていただきました(本noteのサムネイル)。

さて、新曲「吾亦紅につけて、」について触れていきます。今回この文章を読んでいただくことで、吾亦紅につけてって何???という疑問が解消される..ように努めますので、最後までお付き合いいただけますと幸いです。
※曲の中身についてはあまり触れません。

まず「吾亦紅(ワレモコウ)」という花。
名前の由来には様々な説がありますが、その一つに「吾も亦紅なり」「吾もこうありたい」が語源となっているという説があります。素敵だ..
日本最古の百科事典と言われる「和名抄」では別名で書かれていますが、源氏物語巻42「匂宮」では"ものげなきわれもかうなどは"とあるように、この頃から既に「ワレモコウ」という名前が使われていたことが分かります。(ここでは、特に面白味もないワレモコウだけど、香りがあるから枯れるまで愛するんた...みたいなことが書いてますので、この頃は「吾亦紅」よりも「吾木香」という漢字が当てはまる気がします。「吾木香」という漢字の由来も諸説ありますが、割愛します。)

さて、そんな吾亦紅ですが、花言葉のひとつに「あこがれ」があります。

吾亦紅の開花時期は7~10月ですが、日本では古くから秋草として観賞されてきました。初夏の曲でありながら敢えて吾亦紅を題材にしているのも、涼しげな秋への「あこがれ」です。この夏、本当に暑いですね。

私は夏の暑さが大の苦手で、さらに小、中学生の頃はある理由で夏休みに遊んだ記憶がほとんどありません。しかしその後、恐らく青春と呼べるような夏の場面に遭遇こそするものの、自分がここにいて良いのかという違和感が大きく、「やはり夏は良かった」とはならなかったのです。単なる「夏へのあこがれ」は今でもありません。
それでは、アニメや漫画、小説、イラスト等で描かれている夏はどうでしょうか?キラキラした、或いはノスタルジックな、現実(自分の中での)とは違った夏。そんな誰かの視点を介した美しい夏に対して、現実になってほしいとは思わないけれど....誰かが惹かれた夏を間接的に摂取することで満足してしまうほどに、私は虚構の夏に惹かれてしまっているのかもしれません。(そして、最近出会った"感傷マゾ"という概念にも。)
「夏にあこがれている」ではなく、「"貴方が焦がれた"夏」に「あこがれて"いたい"」という表現へ。
曲中で様々な「あこがれ」が込められていますが、かなり歪んだ感情だと思います。「暑さによる歪み」が「暑さ≒歪み」になると、重症です。"貴方が慕った""虚構の"少女に、(ある意味)救済を求めるほどに..。(自分自身、"貴方"も虚構なので、自分が愛したヒロインで十分なのですが、この方がよりダメージが大きいと想像し..)

吾亦紅の話をしていたつもりが夏の話へ移行し長くなってしまいましたので、「つけて、」部分は(極力)端的に。
平安時代では、手紙の送り方に様々な工夫がなされていたようです。その工夫のひとつとして、花や木、草など植物の折り枝のやりとりがあります。手紙に折り枝をつけたり、折り枝に手紙を挟み込みこんだり、折り枝そのものに手紙を書いたり。植物を贈答品とする「たてまつる」「やる」、手紙を挟み込む意としての「さす」、手紙に植物を添える「つく」、など表現方法は様々あります。今回の曲では、手紙メインで折り枝が添え物であること、そして植物の種類を問わず広く用いられる(汎用性の高い)表現である「つく」を用いて、「吾亦紅につけて、(文をやらばやな..)」という表現にしてみました。

今日はここまでに。新曲「吾亦紅につけて、」、いかがでしたでしょうか。いつも聴いてくださる方、本当にありがとうございます。

拙い文章でしたが最後までお付き合いいただきありがとうございました。
次は恐らく秋ごろ、またどこかでお会いしましょう。

威子

/*参考
浜田豊、花の名前 由来でわかる花屋さんの花・身近な花522種、婦人生活社、2011年。
公益社団法人日本薬学会、生薬の花。
岡田ひろみ、平安中期の「折り枝」表現、表現研究/表現学会、2016。
鈴木裕子、折り枝という情報ー「源氏物語」の贈答場面からー、日本文学、2001。
三省堂古語辞典編集部、古語辞典でみる和歌 第28回 願望の表現を含む和歌、三省堂辞書ウェブ編集部によることばの壺、2016。


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