晩夏に捧ぐ 大崎梢

成風堂書店事件メモの第2弾。杏子のもとに信州の実家に帰った元同僚の有田美保から手紙が届いた。内容は、美保の勤めるまるう堂という書店に幽霊が出ている書店にまつわる謎を解決している杏子と多恵にぜひ謎を解いて幽霊退治してもらいたいというものだった。あまり乗り気ではない杏子だったが乗り気の多恵と美保に負けて8月末に夏休みを兼ねて美保の地元を訪れることになった。


ここからネタバレ含む感想

てっきり日常の謎だと思って読み進めたらなんと殺人事件ものでした…。しかも、27年前に起こった地元の有名作家がその弟子に刺殺されるという事件で犯人とされた弟子も獄中で病死するという何とも後味の悪い事件です。
その書店で出没している幽霊というのがこの弟子だという噂でした。書店主が幽霊が出いるようになってから気落ちしているということで美保はじめまるう堂の書店員がそれぞれのつてをたどって関係者に話が聞けるように段取りまでつけてくれていたので3泊4日で犯人探しという強行軍な感じのお話でした。
現在、ひっ迫している書店業界の話なんかもサラッと出てくるあたりさすが元書店員という感じです。この話の中に出てくるまるう堂もし実在するなら一度行ってみたいな…と思いました。書店の話は本当に詳しく書かれていて大きな書店なら2時間はいられる私としてはいっそ書店でアルバイトでも探してみようか…と真面目に考えていしまうくらいです。
さて、お話の方が強行軍で話を聞いて回り、多恵が不思議なスケッチ(メモ?)をせっせと取りますが、話の全容がなかなか見えてこない、犯人とされている弟子の秋郎はかなり複雑な人物で人によって印象が変わっていたり、すでに出版社にコネもありそうなのにわざわざ田舎に住む作家に弟子入りしたりと少し謎の多い人物として浮かび上がってきます。その複雑さの原因が最後の少しで一気に明かされるので事件解決からの進みが本当に早いのでそのまま読了となりました。

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