拝啓 彼方からあなたへ 谷瑞恵

手紙をテーマにした連作短編。
「おたより庵」は、手紙にまつわる雑貨を販売するお店で、中高生を中心に人気のある店である。経営者の詩穂は、メールや電話より手紙派で昔からよく手紙を書いてきた。そんな、詩穂が預かっていた手紙が1通ある。それは、中学時代の友人響子から預かったもので、もし、響子が亡くなったらこれを投函してほしいと頼まれていたものだった。響子とは、手紙のやりとりが続いていたが、なんとなくやり取りが途絶えて1年くらいたった頃、響子の訃報が届く。


ここからネタバレ含む感想

響子の手紙をどうするか考えていた詩穂だったが、投函する直前に手紙を濡らしてしまい宛名が読めなくなってしまう。中身を乾かすのを手伝ってくれた書道家の城山に相手に渡したほうがいいと促されて相手に送るが手紙の相手、香苗は手紙を読まずに詩穂へ返しに来る。
そういえば、最近は年賀状以外ほとんど手紙を書かないなぁ~と思いながら読んでいました。このお話の中で手紙は、直接は言えないことを手紙で相手に伝えるというのがテーマになっているのですが、怪文書も登場するので相手を怖がらせたりするのにも有効であるという諸刃の剣のような気がしました。
短編5話の構成で、それぞれ1つずつ深い手紙が登場し、それによって相手の人生の転機が訪れるお話ですが、それと並行して、最初に登場した響子の死にまつわる謎解きがちりばめられていてミステリー仕立てにもなっていますのでミステリー好きな方でも楽しめるのではないかと思います。
谷さんのお話には、過去に傷を持つ人が多いですが、今回も傷だらけの人たちがちょっとホッとするようなお話になっています。心が疲れていてる人にもおすすめです。
最後、新しい展開がありそうな、詩穂と城山ですが、どちらも奥手な感じなので、関係が発展するには周りがやきもきするくらい長い、長い時間がかかるのだろうな…と思いました。
そして、たまには手紙を書くのもいいなかなぁ~と思える作品です。(いきなり手紙が届いたら相手はさぞかしびっくりすると思いますが…)

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