BAR シェリル44
~翌朝
「おはようございます。よくお休みになられましたか?」ダイニングに降りるとマサキさんが爽やかな笑顔で迎えてくれた。
「えぇぐっすり寝て久々に目覚めが良い朝だわ。」「それは良かった!少し冷えるので朝食は朝粥をご用意しました。」テーブルを見ると一人鍋に湯気を立てて朝粥に漬物、干物まである。
「わぁ!美味しそう。お粥の具は何ですか?」「蕪とショウガを入れてあります、温まりますよ。」「ほんとだ、良い香り、ね、たくちゃん」「そうね。朝はしっかり食べないとね。」良いタイミングで「いただきます」と声を合わせるとマサキさんはキッチンに行ったのか姿を消していた。
「美味しいね。」「そうね。贅沢な朝食だわ。」
米から丁寧に作ったであろう粥は、ほっこりと優しく身体を温めて気がつけば二人とも完食していた。
朝食を済ませ、荷物を片付けに客室に上がる前にヒカリはお土産コーナーを見るからと1階に残った。
「お薦めのお土産ってどれですか?」
フロントにいるマサキさんに訊くと
「そうですねぇ…ここは地産地消も目的の一つなので、さっきお出しした干物とかお漬物は近所のお母さん達が作ったものですが如何ですか?」「あ!干物ほんとに美味しかったです。わぁお家でも食べられますね。あ、このジャムも美味しそう」瞳を輝かせてお土産を探していると「あら!まだ選んでたの?お化粧もまだなのに。」「わたしは秒で済むから大丈夫です。じゃあこれをお願いします。」カゴ一杯に買い込んだお土産をマサキさんに預けてお会計をした後にヒカリは2階に消えた。
「可愛らしい方ですね。」噴き出しそうな笑顔でマサキさんが言う。
「ほんとに…嬉しいときには全身で喜んでいるからね。こっちまで楽しくなるのよ。あ、先にお会計お願します。」
「いえ、テラサキ様からもういただいておりますので」「え?トキコさんが?」「はい、拓海さんが特別な方とお越しになるからとご予約の際に仰有って。父も拓海さんが来られると聞いてこっそり厨房に」「まぁ驚いた。オーナーもいらしてたのならご挨拶したかったわ。よろしくお伝えしてくださいね。」「畏まりました。よろしければ是非またいらしてください。」マサキさんから名刺を受け取ったたくちゃんは「えぇもちろん!」と微笑みながら「お忙しいとは思うけど、ウチにもいらしてくださいな。」と自分の名刺を渡しながらトキコさんの心遣いに感謝するたくちゃんだった。
たくさんのお土産と共に車に乗り込むと車が見えなくなるまで、お見送りしてもらい、どちらともなくオーベルジュの素晴らしいことを話しながら、ずっと運転しているたくちゃんの横顔や袖を捲った腕の筋肉を見て昨夜のことを思い出すヒカリに「さて、ここからどこか行きたい所はありますか?」「えっとね、規模は大きくないけど動物園があるらしいの。時間があればそこに行きたいな。」「動物園?そんなのあったかしら?ちょっと車停めてナビで調べないと」ハザードを付けて調べるたくちゃんに「たくちゃんって運転上手よね。」「何なのイキナリ?そりゃ昔は街道のタクって呼ばれたものよ」「ホントに?意外!」「冗談よ、お家にアナタを無事に送り届けるまでが旅なんだからこれでも慎重に運転している…あ、あったわ。そんなに遠くないわね、では童心に返りましょうか!」ウィンクをしながら元の道に戻って一路動物園に向かった。
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