エリアリノベーションの出口

前回、空き家を劣化から守るためには定期的に見守る「放置しない仕組みづくり」が重要だと書きました。今回はその続きとなる空き家の活用方法について書きます。

空き家活用で問題になるのが、傷んだ空き家を貸せる状態まで改修する工事費です。費用の回収を急ぎ家賃を高くすると入居希望者が集まりませんので、適正な家賃設定を考えて工事予算を決める必要があります。そもそも過疎漁村は家賃設定が安いので大規模な改修をしては事業になりません。空き家活用を目指して工事の見積を取ってみたけれど金額を見で活用を諦めてしまう方がいるのも理解できます。そもそも建物全体をある程度の状態で貸し、傷つけた部分は入居者の負担で元に戻すアパート経営のような賃貸経営は空き家活用では馴染みません。古い建物ですが、給排水給湯設備が使用可能で、風呂トイレ台所が問題なく使えるなら住めます。傷んだ部分は入居者が自分で直してください。その分家賃は安くしますよ。なんでしたら内装とかを自分好みにアレンジしてくださってもいいことにします。ドアノブが取れてますが、こちらでは直しません。直さないで住んでも構いませんし、なんでしたらドアを外してもいいですよ。そのくらいのおおらかさが空き家活用の面白さです。そこそこの広さがあり低家賃で改修可能の古い家を探している住まいにこだわりの強い方は少数ですがいるんです。アパートを全室埋めるのではなく、1軒の空き家の入居者を探すのですから普通じゃなくても問題ないです。

とはいえ改修工事費と家賃設定は「貸す側」と「借りる側」だけでは解決できない厄介な課題です。例えば「空き家所有者」に移住希望者を引き合わせ、改修工事の手配まで手伝ってくれる「第三者」がいるとします。地域の将来を考えると、この「第三者」はいい仕事をしているように思えますが、「貸す側」と「借りる側」の間の工事で利益を上げます。入居者が数年で退去した場合の工事費は所有者が負担しますが、この「第三者」に損失はありません。何だかずるい話に思えてきますね。

空き家再生は規模が小さいですが遊休不動産の活用事業ですので、この「第三者」は事業に出資するぐらいの責任ある立場で事業に参加してほしいと思います。事業が軌道に乗れば彼にも工事での利益以上の収益が見込めますので、真剣さが違ってきます。「貸す側」と「借りる側」のそれぞれの思いを聞き取り、予算内で工事可能な落としどころを見つけて責任ある立場で事業を進めます。工事が終わっても入居者に寄り添い長くかかわり続けることになるでしょう。地域の空き家活用には、そんな熱意のある事業者が求められているのです。

地域課題である空き家を再生して過疎漁村に新しい住人を集めることがエリアリノベーションの出口となります。この第三者を建築士でもある私が引き受ける予定です。

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