エリアリノベーションの入り口

東日本大震災で風景保存のNPO法人を設立し過疎漁村で空き家再生を続けています。これまで空き家オーナーと交渉して3件の空き家を再生して、地域に足りないコンテンツを増やしてきましたが、過疎化の速度に追いついていません。そろそろ活動の軸をエリアリノベーションへ移行するタイミングかもしれません。

今年の活動テーマは「空き家を放置しない仕組みづくり」を考えています。建物は人が住み続けることで健全な状態を維持していますので、誰も住まなくなった瞬間から急激な劣化が始まります。現在ゲストハウスに再生中の空き家は、建物周囲に積もった落ち葉が原因で床下換気口から雨水が流れ込んでおり建物の床下はボロボロになっていました。済み継ぐ家族がいないからと使い道を決めずに放置すると、いざ使おうとしたときには改修不能な状況になっている場合もありますので空き家の劣化対策には注意が必要です。

建物を健全な状態で維持するためには住み続けるのが一番ですが、それができないなら定期的に建物内部外部の状況確認を行い、窓を開けて風を通すだけでも劣化防止になります。近くに住んでいれば簡単な作業ですが、それすらできないのが空き家問題の難しさです。空き家の周囲には1年で雑草が生い茂りますが建物の所有者が遠方の方の場合、雑草を気にする方はほとんどいません。しかしそこから建物の劣化は一気に加速するのです。そしてある日、空き家だった場所が空き地に変わります。古い港町の風景保存を目指す取り組みをしている者として、解体は最後の手段です。風景は小さな建物の集合でできていて空き地ばかりになった場所では風景になりません。建物解体を決断させているのは劣化です。つまり劣化対策は、地域に人が住める場所を保存する取り組みであり、そこに住まない所有者だけの問題ではなく地域課題だと考えを改めるべきかもしれません。

私たちのNPOは地域の空き家再生を続けてきましたが、地域課題解決を目指して空き家管理のお手伝い事業にも着手することを決めました。毎月1回空き家の窓を開けて風を通し、劣化や故障などの有無を確認して所有者にメールで報告するサービスです。責任をもって空き家を管理するために既存住宅状況調査技術者の資格も取得しました。地域の空き家を健全に維持する取り組みに協力をお願いします。

昨年12月に「空き家対策特別措置法」が施行されました。劣化が進んだ【特定空家】に指定され自治体から勧告を受けると固定資産税額がいきなり6倍になる怖い法律です。国が本腰を入れて空き家問題に取り組み始めるようです。空き家の劣化防止を考える方が増えることを願っています。

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