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回憶録 世の常人の常「あの娘(こ)/あの人間(ひと)」#創作大賞2023#オールカテゴリ部門

「あの娘(こ)/あの人間(ひと)」

   
水面に浮かぶ 二人
 
背を向け合いながら
 
一人は水面にもたれかかるように座り
 
もう一人は三の角を型どり座る
 
夜空には朧げな月と
 
周囲には注ぐ森林
 
静寂の中 想い—
 
 
 
あの娘(こ)が嫌がること言って
傷付く顔を見ること好物
 
その位当たり前
いつもちやほやされて
いい気になっているから
 
 
/ あの人間(ひと)の言動など真意ではない
  それ以上にわたしはわたしの道を失って
  はいけない
 
 
奈落の底に落ちればいい
みじめに粉々になってお終い
 
けれど粉は底から舞い上がり
私になにかを問う
 
 
 
/ わたしはわたしを抱きしめて
  大丈夫よ、と さする
  生きること プロセスには
  心に幾度も傷を負い
  それでも
  わたしはわたしが大切だから
 
  よく頑張ったわ
 
  さぁ、この痛みをどう料理する?
  美味しくするか、不味くするか
  答えはもう、決まっている
  前者にしたら、沢山の人達に振る舞える
  もの!
 
 
他人に言えない悩みを持ち
元気な笑顔のあの娘が疎ましかった
 
私が一生持てないものを
あの娘(こ)は持っている
 
 
/ 鬱な気持ちなんていつでもある
  誰だってそうでしょう
  
  みんながそうだと思えば
  共に笑えばなんとかなるわ
 
  さぁ、スパイスはどれにする?
 
 
どうして笑っていられるの
奈落の底に落ちた筈なのに
 
私の言葉が足りない
もっと粉々に—
 
 
/ あの人間(ひと)は
  なにに囚われているの
  目の前の偽りの幸福に奪われて
  なにに怯えているの
 
  己を守るために
  他人を傷つけていい理由なんて
  どこにもない
 
  大切なこと
 
  わたしは只、二歩・三歩先の未来を見る
  その為にわたしは
  現在(いま)なにをすべきかが
  必然的に視えるから
 
  それに従うだけなのに
 
 
あの娘(こ)を私の視界から消すことが使命
けれど私には
なにも見えない
私は粉々になっていく
あの娘(こ)にしたように
 
私は最期まで私を愛せなかった
真の私はどこを彷徨うの
 
 
/ あの人間(ひと)の往く末などわたしの
  知り得ることではない
 
  只わたしは、自身の偽りさえも
 
  愛おしい
 
 
 
 
木々に隠れて獣たちが
「ひと」というものが
こういうものなのかと、
 
生き物として
 
理解が出来ない
 
生きる術
 
 
 
月が互いを照らし
 
獣が咆哮しては
音が水面へと伝わり
 
揺れる
 
 
振動
 
 
二人は月の存在に
 
 
いま、気付く




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