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いちばんやさしいマーケティング/インサイトと上手につき合う


マーケティングを考える中で避けては通れない市場把握(顧客理解)に「インサイト」があります。インサイトは直訳すると「洞察」や「直感」、「発見」といった意味です。「インサイト」をマーケティングで使う際は、マーケティングの対象となる生活者や消費者、時にはビジネスの相手の気持ちや行動を洞察し、見抜くことで、ビジネスの新たな糸口を探り当てることに当たります。
この「インサイト」・・普段の生活で想像しても分かるとおり・・相手の気持ちを読みとるということは簡単なことではないですよね。
だからこそ、この「インサイト理解」ができることで、自社のポジショ二ングや競争優位性の獲得、魅力的な製品の開発といった様々なマーケティングの場面で役立つことになります。
注意したいのは、相手の気持ちの奥底を慮り、複雑に考えすぎて、自分自身が身動きできないような状態になってしまわないこと。
このインサイト理解は合ってる?間違ってる?といった正解を見つけることに終始せず、相手の気持ち(潜在的なので本人も気づいていない)を「見抜く」のではなく、「汲み取る」努力をすることが大事だと考えます。
相手の状況を理解し、「不安を安心に変える」「疑いを信頼に変える」「悩みを勇気に変える」そんな、ネガティブスイッチや、押してほしいポジティブスイッチを想像して、「コミュニケーション的なチャレンジ」をすることが大事なんじゃないかと思います。

【こんな人に読んでほしい】
・よく聞くインサイトってほんとのところ何?
・インサイトって興味あるけどよくわからない
・インサイトってどうすると見つけられる?

【目指したいこと】
・インサイトをマーケティングに適度に取り入れること
・トレードオフに潜むインサイトを探れるようになること(イノベーションにつながる)
・インサイト理解で人間力を上げること
顧客インサイトは「正解」にこだわらず、「コミュニケーション・チャレンジ」をしてみる。



1)インサイトとは?


「人間の行動に作用する潜在的欲求」だと、私は定義づけています。
「顧客インサイト」という言葉で、消費者を対象に、購買に至る潜在的欲求を指すこともあり、行動デザインや行動経済学の一環として研究されていることもあります。共通するのは、「本人も気づいていない潜在的な欲求」という点で、下記のような説明もネット上には上がっています。

・消費者の行動や思惑、それらの背景にある意識構造を見ぬいたことによって得られる「購買意欲の核心やツボ」
・「顧客インサイト」や「消費者インサイト」など、対象による消費活動や購買意欲を促す潜在的な欲求のスイッチ。
・AIDMAのDesire(欲求)をAction(行動)へと変化させる要因であり、これを確定させることで、消費活動や購買意欲を促進させる商品の開発や効果的なサービスを実施することができる。
等々・・。

冒頭にも述べましたが、「インサイト」を直訳すると、「洞察」や「直感」、「発見」といった意味合いを持ち、このことから、消費者の気持ちを洞察し、それに必要なもの、ことなどを発見するという意味になります。WEB分析で使われる「インサイト」とはこれを指し、ユーザーが入力する検索ワードからユーザーの気持ちを「洞察」する分析方法を表すこともあります。

インサイトについて

2)インサイトはなぜ注目されている?


こういった潜在意識は過去からずっと、存在するものですが、なぜ、この「インサイト」が注目されるようになったのでしょうか。自信の記憶では20年くらい前から書籍やセミナーが増え、広告や販売促進の業界ではこの「インサイト」を言及することが、顧客の気持ちを理解する手法として大切にされてきたように思います。
このインサイトは、マーケティングの地図で言うと、下記にあたると考えます。

マーケティングの地図における「インサイト」の位置付け

いわゆるインサイトマーケティングが注目された背景には、「価値観やニーズの多様化」「製品のコモディティ化」「インターネット普及に伴う広告の洪水や媒体の多様化」などにより、企業が製品を販売する環境がとても厳しくなっていることがあげられます。インターネットの普及は、「顧客が直接的に企業や製品の敵になる環境」も作り出しました。
ものを作る、提供する企業は多様な顧客の声をしっかりと聞き、顧客ごとに適した方法での広告や接客を用意する必要が生まれてきたのです。そこで、重要になってきたのが、顧客、広くは(顧客になる前の)生活者の心の内や、本人も気づいていない行動につながる潜在意識を知ることでした。
また、インターネットやテクノロジーの発展で「あらゆる変化がとても早くなっている」ことは、製品開発のスピードを上げていく必要性も生み出しました。そこで、「開発スピードを早める」ために、環境分析に時間を取られすぎず、顧客層に早い段階でアプローチし、ターゲット顧客の声をしっかりと聞き、コミュニケーションをじっくり取りながら「顧客を味方にする」、そういった「インサイトマーケティング」の手法が注目されてきたのです。

3)インサイトの見つけ方と上手なつき合い方


では、どうすれば、顧客や顧客になる前の生活者の「インサイト」を発見し、上手くマーケティングに活用することができるでしょうか。
インサイトは「ヒューマンインサイト」と言う、「そもそも、あり得る潜在意識」(マズローの欲求にも通じる)と「カテゴリーインサイト」と言う、「カテゴリーやブランドに特化した感情」に分けることができ、この整理から始めることもあります。
そして。さらに「インサイト」の中から、「行動を強く後押しする」ものを「キーインサイト」として抽出し、このインサイトに直接的に働きかけるプロモーションを開発することもあります。
いずれにしても、「インサイト」を見つけるには、顧客の潜在欲求への想像を膨らませて、行動を起こさせる感情の種類を数多く出していくしかありません。
しかし、ある時、気づいたのは、数多くの感情の種類もいくつかの大きな感情カテゴリーに集約することができるようだということです。
そこで、毎回、「ヒューマンインサイト」や「カテゴリーインサイト」から「キーインサイト」を導き出す過程をふむのではなく、ある程度カテゴリー分けできるインサイトの中から、その市場や製品環境に合致する顧客インサイトを選び出す、という作業に置き換えてみようと考えました。

ヒューマンインサイトとカテゴリーインサイト

そこで、これまでの経験やリサーチの体験、様々な書籍から得た知識をもとに、自分なりに「インサイト」に紐付きやすい感情の一覧を作りました。
追加や分類を繰り返しながら、11のインサイトにまとめました。
特に、「行動を起こさせるスイッチ」としては、心の中にある「ネガティブな感情」が強く影響するようです。反対にネガティブな悪魔の声に抗おうと、天使の声に従う行動を起こすと言うこともあるようですが・・。

インサイトに紐づく11の感情

※一部、書籍「本当の欲求は、ほとんど無自覚」(大松孝弘 (著), 波田浩之 (著)株式会社デコム発刊)の内容も参考にさせていただいています。  

今後、この感情分類はさらに整理していくことができると考えており、その過程の半ばではありますが、参考サンプルとして共有させていただきます。

そして、最後に。
大事なのは、「インサイトを見つける」ことそのものではなく、この「インサイトと上手につき合う」ことだと考えます。
苦手な人だからと言って、「つき合わない」のではなく、どう声をかければ、
「つき合うことができるか?」と、考え、チャレンジするイメージです。
「インサイト」を想像したり、「キーインサイト」を導きながら、「共感」を伝え、行動を「後押し」する「コミュニケーション」を投げかけるのです。

(そう考えてるんだ・・)「なるほど!そうだね!」
(そうしたいんだ・・)「よし、その通りやってみよう!」
(そんなことがあったんだ・・)「大変だったね、、これで気を取り直して」
(そこが不安なんだね・・)「心配しないで、こうすれば、大丈夫だよ!」

どういった「コミュニケーション」がどのインサイトにマッチするか?
この掛け合わせが「コミュニケーション・チャレンジ」であり、「インサイトとの上手なつき合い方」だと考えています。
googleやInstagramのインサイトは、こういった「コミュニケーション・チャレンジ」の当たり外れを数値化する解析ツールと考えることもできますね。

「インサイト」に関する考察は今後も続けていきながら、「ユニークなインサイトとコミュニケーション」を発見し、自らも開発していきたいと思います!

次回は「インクルーシブデザイン」について、「いちばんやさしいマーケティング」視点で紹介します。興味があればぜひ、ご一読ください!


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