おすすめです! データ分析読解の技術 (菅原琢、中公新書ラクレ、2022年3月9日)

データ分析読解の技術 (菅原琢、中公新書ラクレ、2022年3月9日)拝読。いわゆるデータ分析を行うためのものではなく、新聞などに掲載されているデータ分析結果に騙されないための本である。正しくデータ分析結果を評価、判断するための評価眼(本書では相馬眼と呼んでいる)を養うための手引きである。

そのためには失敗例を学ぶことが効果的であるとして、陥りやすいデータ分析の誤りごとに実際の新聞記事などを例としてあげて、その誤りをチェックしている。リアルな新聞記事を題材に「失敗」を検証するというのは非常にリアルでわかりやすい。
実例の中には、毎日新聞と立命館大学の協同プロジェクトという大がかりなものもあり、権威を安易に信用してしまうことの危うさがわかるようになっている。
実例は問題となっていて、読者が自分で間違い探しをできるようになっているのもよい。

記事などのネタになりやすく、関心を集めやすい因果関係についてくわしく扱っているのもとてもよかった。特に移住者数のからくりや、ツイッターを活用したことが選挙の勝利につながったとする記事の誤りの指摘などには驚いた。
時系列データや地域別統計に偽の相関が出現しやすいといったTipsも役に立つ。

また、「肯定的な結果を出してほしい」といったプレッシャーがあったり、妥当性はともかくデータを利用しやすいからとビッグデータ統計(ツイッター)にとびついたりする裏事情の解説もある。

生の新聞記事を検証していることを含め、本書はデータ分析に関係する人(おそらくほとんどの日本人)にとって実践的かつわかりやすいものとなっている。



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