違法移民ハンティング・ショーの舞台となったアメリカ国境

日本では私人逮捕系YouTuberが話題になったが、アメリカではメキシコ国境で違法移民を狩り、ボランティアを罵倒する移民ハンターのYouTuberが寄付を集めて活動している。YouTuberを取材したwired誌は地元民との会話で「全員を射殺しろ」という言葉を耳にした。先日は民兵グループで国境に行き、銃器や爆薬で移民を駆逐しようとした男がFBIに逮捕された。
バイデンは2024年1月の不法入国者が12月に比べて半減したと誇ったが、その数は124,220であり、記録的な高水準にある。そもそも例年、1月は不法入国者の数が減る月という事情もある。
移民の専門家たちは、近いうちにまた数が増えると予想している。移民は1月に減少したものの、再び増加しているという。シェルター・ネットワークは10月、11月、12月には毎日約1000人の移民を受け入れていた。2024年1月の最初の3週間には1日平均約500人に激減したが、翌週は再び1,000人台となった。

移民の多くは、共和党所属のテキサス州知事が手配したバスでボストン、デンバー、シカゴ、ニューヨークといった民主党の強い都市に送られる。このあからさまな行為に各都市の民主党市長はテキサス州知事を「移民を政治に利用している」と批判している。65,000人以上の移民をホテル、シェルター、テントなどに収容しているニューヨークを始めとして各都市は深刻な状況に陥りつつある。
共和党にとっては民主党の強い都市で、移民急増の反発を広げ、支持を弱めることができるうえ、反移民の広がりは共和党への追い風になる。一石二鳥だ。

まさか国内で「移民兵器」( https://note.com/ichi_twnovel/n/necc23fea665a )が使われているとは思わなかった。移民を利用して他国に嫌がらせを行う方法は昔から使われており、高い成功率を示している。今回も効果をあげそうな見込みだ。

メキシコ国境を越えてくる移民の問題は深刻な問題であり、これからさらに悪化することはほぼ間違いない。少なくとも今年中に解決することはなく、トランプ再選への追い風になる。
反移民はYouTubeや動画でリアルタイムのエンターテインメントとして極右の収益源となり、より過激になってゆく可能性が高い。「危機にあるアメリカ」を象徴する身近でわかりやすいビジュアルだ。しかも民主党の強い大都市には、多数の移民が送られてきて日常的に接することになっているのだ。こうした劇場型政治戦にとってSNSプラットフォームは貴重な空間であり、アメリカでSNSプラットフォームへの規制が後退するのは当然の流れなのかもしれない。

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出典

YouTube Livestreamers Made Money ‘Hunting’ for Migrants Along the US Border
https://www.wired.com/story/far-right-convoy-youtube-live-stream-harass-migrants/

Tennessee man arrested after undercover FBI investigation reveals travel plans to the Southern border with weapons
https://edition.cnn.com/2024/02/07/us/tennessee-man-border-plot-fbi/index.html

Texas has arrested thousands on trespassing charges at the border. Illegal crossings are still high
https://apnews.com/article/texas-immigration-law-border-b0100138a88a0d034ae8e68787ef41b7

Illegal Border Crossings Plummeted in January
https://www.nytimes.com/2024/02/13/us/politics/illegal-border-crossings-january.html

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