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アメリカのウクライナ支援は湾岸戦争の3分の1、日本は15分の1以下。2022年EU各国の国内向けエネルギー補助金はウクライナ支援の約10倍(キール世界経済研究所)

キール世界経済研究所( Kiel Institute for the World Economy)が、2024年2月16日に同研究所のThe Ukraine Support Trackerを分析した結果をまとめた「The Ukraine Support Tracker: Which countries help Ukraine and how?」( https://www.ifw-kiel.de/publications/the-ukraine-support-tracker-which-countries-help-ukraine-and-how-20852/ )を公開した。


●概要

G7ならびにEU加盟国(31カ国)、オーストラリア、ニュージーランド、ノルウェー、日本、韓国などのウクライナ支援を各国発表、欧州投資銀行などのデータなどをもとに現金と現物の両方を定量的に把握し、ウクライナ支援の状態を追跡した結果である。対象となった期間は2022年1月24日から2023年1月15日。

絶対額ではアメリカとEU(特にドイツ、イギリス)が目立った支援国であり、GDP比では東欧諸国の支援が多くなる。支援は資金、人道、軍備の3つのカテゴリーに分けて集計されている。

「The Ukraine Support Tracker: Which countries help Ukraine and how?」( https://www.ifw-kiel.de/publications/the-ukraine-support-tracker-which-countries-help-ukraine-and-how-20852/ )
「The Ukraine Support Tracker: Which countries help Ukraine and how?」( https://www.ifw-kiel.de/publications/the-ukraine-support-tracker-which-countries-help-ukraine-and-how-20852/ )
「The Ukraine Support Tracker: Which countries help Ukraine and how?」( https://www.ifw-kiel.de/publications/the-ukraine-support-tracker-which-countries-help-ukraine-and-how-20852/ )

ただし、アメリカとEUは提供を約束したものの、実際に実現した資金提供は半分以下となっている。

「The Ukraine Support Tracker: Which countries help Ukraine and how?」( https://www.ifw-kiel.de/publications/the-ukraine-support-tracker-which-countries-help-ukraine-and-how-20852/ )

戦車や多連装ロケットシステムなどの兵器についてもイタリアやデンマークやポルトガルは約束したもののまだ全く提供できていない。ほとんどの国は約束に実行が追いついていないようだ。

「The Ukraine Support Tracker: Which countries help Ukraine and how?」( https://www.ifw-kiel.de/publications/the-ukraine-support-tracker-which-countries-help-ukraine-and-how-20852/ )

ウクライナへの支援と過去の戦争支出の比較もしている(GDP比で1年分に換算して比較)。アメリカについて、最大の朝鮮戦争は13倍、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタンを比較するとウクライナへの支援は小規模である。

「The Ukraine Support Tracker: Which countries help Ukraine and how?」( https://www.ifw-kiel.de/publications/the-ukraine-support-tracker-which-countries-help-ukraine-and-how-20852/ )

アメリカ、ドイツ、日本、韓国の支援を湾岸戦争と比較したのが下記。

「The Ukraine Support Tracker: Which countries help Ukraine and how?」( https://www.ifw-kiel.de/publications/the-ukraine-support-tracker-which-countries-help-ukraine-and-how-20852/ )

2022年のEU各国のエネルギー補助金とウクライナ支援を比較したのが下図。

「The Ukraine Support Tracker: Which countries help Ukraine and how?」( https://www.ifw-kiel.de/publications/the-ukraine-support-tracker-which-countries-help-ukraine-and-how-20852/ )

●感想

あらためてデータで整理されると違った見え方がしてくるものだと思った。
特にメディア報道は必ずしももっとも代表的ではないこと(定量的に多数ではない)を大々的に取り上げることがほとんどなので、それらを読んだ時に生まれる認識と実態は大きく乖離する。

プリンストン大学ESOCによるメディアの系統的偏向の調査結果
https://note.com/ichi_twnovel/n/n6ec248e524ca

ESOC Working Paper #27: Media Reporting on International Affairs、Andrew C. Shaver Leonardo Dantas Amarpreet Kaur Robert Kraemer Tristan Jahn Grady Thomson Hank Cheng Katherine Gan Jazmin Santos-Perez、プリンストン大学Empirical Studies of Conflict Project、https://esoc.princeton.edu/WP27

EU各国のエネルギー補助金とウクライナ支援を比較を見て、ふと思ったのだけど、欧米の対ロシア経済制裁の有効性はいまひとつわからないけど、ロシアがウクライナに侵攻したことでエネルギー問題が拡大し、その結果、対ロシア経済制裁よりもウクライナへの支援の負担以上の経済的ダメージを負ったんじゃないだろうか?

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