ベリングキャット発OSINT七つの大罪

OSINTの代名詞的存在になったベリングキャットのスタッフが書いたよくないOSINT7つの大罪。

OSHIT: Seven Deadly Sins of Bad Open Source Research
https://www.bellingcat.com/resources/2024/04/25/oshit-seven-deadly-sins-of-bad-open-source-research/

  1. オリジナルのソースを提供しない
    情報源を公開するかどうかには議論があるが、経験則から言えば、できる限り共有すべきである。
    出典を共有することは、それを独り占めするよりも大きな貢献となるからだ。

  2. チアリーディングで仕事を台無しにする
    最初に結論ありき(確証バイアス)で、OSINTは結論を支援するためのチアリーディングということにならないように注意しなければならない。

  3. 資料をアーカイブしない
    オンラインコンテンツはよく消滅する。Internet Archive の Wayback Machine や
    archive.oday などを利用する他、スクリーンショットを撮っておくことも重要だ。

  4. 文脈の欠落
    特に紛争では日常的に起こっているような出来事が、本来の文脈から外れて誇張されることがよくある。例えば、NASA の FIRMS の画像やデータを読み慣れていない研究者は、定期的に計画され、コントロールされた火災やその他の熱変化を悪質なものと解釈してしまうかもしれない。

  5. ツールの誤った使用とデータの解釈
    万能の新しいツールはないし、注意すべきことも多い。顔認識ソフトウェアの場合、サービスによって長所と短所があり、いずれも確実なものとして扱われるべきではない。

  6. 映像の編集
    野良OSINTアカウントは時々、映像に音声トラックをかぶせたり、クリップのコンピレーションを作ったり、元の映像をトリミングするなど映像を編集することがある。
    例えば、「アグリゲーター」アカウントの習慣のひとつに、動画や画像に自分のチャンネルの透かしを重ねるというものがある。こうした編集が行われると、映像による検索が行いにくくなったり、貴重な手がかりとなる音がした方向が失われる問題が多い。

  7. 何が何でも一番になる競争
    誰よりも早くと思う人が多い。しかし、コンテンツの検証は常にスピードよりも優先されるべきである。

●感想

これはちょっと手を加えるだけで、SNSデータあるいは調査データにもあてはまりそうだ。

  1. 資金源を提供しない
    プロジェクトの資金源は透明性の基本であるが、公開していないものもよくある。たとえば「健全な言論プラットフォームに向けて」には資金提供元が明示されていない。

  2. チアリーディングで仕事を台無しにする
    これは全く同じだが、特にデーや解析や調査においては設計段階で自分でも気がつかないうちに恣意的な前提が紛れ込むことがある。

  3. 再現のためのデータを公開しない
    解析に用いたデータを公開しない。公開すれば追試できるし、異なる解析を行うことで新しい発見が得られる可能性もある。たまに間違いも見つかる。公開すべきだろう。

  4. 文脈の欠落
    データ解析の能力はあってもテーマに関する知見が不足している場合、致命的に文脈の欠落した方向違いの結論になるリスクがある。というか、よくある。
    また、日本のほとんどの調査研究は過去の誤・偽情報にあった問題がそのまま今でも残っていることはめずらしくない。

  5. ツールの誤った使用とデータの解釈
    過度にツールに頼ることが多い。

  6. データの編集
    必要なさそうなのに新しい合成尺度を作っているものがたまにある。よい結果にならないことが多い。

  7. 何が何でも一番になる競争
    旬のテーマをいち早くデータ解析している人や企業があるが、情報全体に対する割合や全体から見た時の影響力など重要な視点が欠落していることが多い。

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