92%の事実? 主要登場人物を胸くそ悪く描いた、笑える官邸ポリス物語

2018年末に刊行された『官邸ポリス 総理を支配する闇の集団』(幕蓮、講談社、2018年12月12日)は当時の安倍総理にまつわる実際の事件や人物をモデルにして描いた小説である。著者は元警察キャリアで、書評や紹介では92%の事実などと書かれており、それなりに事実が含まれているようだ。
著者の正体は不明だが、望月記者が著者に取材している(リアル告発"総理を支配する闇集団"の実態、プレジデントオンライン、2019年3月18日号、https://president.jp/articles/-/27855)

もちろん、厳しい評価をしている人もいる(『内閣情報調査室』と『官邸ポリス』への違和感(特別寄稿)、2019年6月21日、https://agora-web.jp/archives/2039815.html)。

話題にもなったし、こうした方々が取材したり、コメントしたりするということは、全部を真に受けるのはともかくとして読んでみても悪くないだろうと思って1昨年読んで爆笑した。最近、Netflixの『新聞記者』を観て、ふとこの本を思い出して紹介することにした。

世間を騒がせた前川喜平元文部省事務次官のスキャンダル、山口敬之元TBSテレビ報道局記者の事件などの裏側でなにが起きていたかが語られる。その一方で、官邸に関連する組織や人の動きが解説されていて、わかりやすい。

登場人物が体制側に寄り添った正義漢に酔って、反体制的な言動を蛇蝎のごとく毛嫌いし、貶めている様子は過剰で、正直笑いながら読んだ。胸くそ悪さもここまで来ると笑える。映画の『日本で一番悪い奴ら』くらいありえなくて笑える。
『日本で一番悪い奴ら』は実話を元にした映画で、現役の警察官が点数を稼ぐために暴力団に頼んでわざと銃を置いてもらって摘発するということを繰り返す。そのうち、銃がなくなったのでそれを入手するための資金作りに覚醒剤を売買するようになるというとんでもない話だが、実話なのである。『官邸ポリス 総理を支配する闇の集団』(幕蓮、講談社、2018年12月12日)もそれくらいありえない話と登場人物が続々と出て来て笑いが止まらない。

読み終わってから、これが92%も事実だったらヤバいなという思いと、さすがに登場人物のモデルはここまで胸くそ悪いバカではないだろうと信じたくなったが、望月記者の取材を読む限りではそうでもなさそうなので笑えるくらいにつらい。


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