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『知能化戦争』感想+中国におけるAIと認知戦

昨日、『知能化戦争』の紹介記事を書いた。これはその感想である。

各種資料で中国のAI兵器化について読んだことはあり、本書もおおまかに言えばその範囲のものだったのだが、きわめて具体的にいろいろなことが書かれていて、それがイメージがクリアになった。

ただ、ところどころ記述に食い違いがあったりするのは気になる。たとえば認知戦の扱いは場所によって異なる。本書では認知戦の扱いはきわめて少ないので大きな影響はないのだけど。
以前、紹介した髙木耕一郎の論考「新しい技術、新しい概念:中国のAIと認知戦争についての計画」(https://www.mod.go.jp/gsdf/tercom/img/file1836.pdf)では具体的な例が示されているが、その出典は『知能化戦争』となっている。だが、『知能化戦争』にはなかった。念のため他の出典も確認してみたが、なかった。実はこの論考を読んだことが『知能化戦争』を読むきっかけだった。しかし、その目的は果たせなかった。
防衛研究所の安全保障戦略研究第1巻第2号(2020年10月、http://www.nids.mod.go.jp/publication/security/security_202010.html)には飯田将史の「人民解放軍から見た人工知能の軍事に対するインパクト」と、八塚正晃の「人民解放軍の智能化戦争」が掲載されている。どちらも認知戦が重要視されているという指摘があるものの、認知戦の具体的な内容はない。

いくつか気になることをあげておく。
・死傷者が劇的に減ると書かれているのだけど、これはおそらく中国やアメリカが他国を攻撃することを想定しているからかも。攻撃された方は多数の死傷者を出すと思う。
・戦場に人を送り込まずに支配下におくことができるのだろうか? 無力化することはできると思うけど。そもそも
・知能化兵器をもってすれば中国やアメリカに対しての本土攻撃も可能なような気がする。なにしろ知能化兵器は突破能力が高いのだ。
・知能化兵器はとんでもない間違いをしでかすことがありそう。たとえば指揮権を持つデバイスがハッキングされた時のために、相手が正しい指揮官であるかを判別するアルゴリズムも組み込まれるが、人間の意識や行動には一貫性がない。そのため本人であっても本人と認証されないリスクがある。同様の問題はあらゆる局面で起こり得るし、その発生確率を高めるような状況を作ることが有効な攻撃になる。
・個人的にはAIと認知戦、デジタル影響工作はきわめて親和性が高いと考えている。AI支援デジタル影響工作ツールや内乱の文法はそのひとつにすぎない。

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