『だめ連の資本主義よりたのしく生きる』を読んだ 世界に広がるオルタナティブという名のだめネットワーク
●概要
『だめ連の資本主義よりたのしく生きる』(神長恒一、ペペ長谷川、現代書館、2024年1月23日)を読んだ。500ページに迫る大著かつ、386ページからは2段組みになっている。さらにほとんど字ばっかりなので、予想以上の分量だった。全体は大きく4つに分かれている。
1.生きる、暮らす
2.遊ぶ
3.アクティビズム
4.交流・トーク
そして、1から3は著者ふたりの対談で、最後の4はゲストを呼んでの対談。つまり全部対話=交流で生み出されたものとなっている。読んでいると著者の生き様や人となりが伝わってきて楽しい。
だめ連そのものの起源は古いが、最近になってだめ愛好会が各地の大学を中心に生まれたり、交流バーが生まれたりと広がりを見せている。ある意味、トー横もその中に含まれるのかもしれない。以前、ご紹介したがんばって下克上を目指すBreakingdown(https://note.com/ichi_twnovel/n/n612b9a72036b)とは真逆である。
Breakingdownについて「時代が変わる兆しを見たかも」と書いたが、だめ連については、時代の多数派になりつつあると感じている。
・時代の手引き書
本書に書かれているように、もう今の世の中でふつうに努力してもふつうの生活も幸福も手に入ることはない。世界中で格差が拡大して、中間がなくなった。上位に行くか、底辺のままかの二択になってしまった。ふつうはもうどこにもない。
そういう時代になってしまって、あらためて幸福や人生の意味を見直すと、結局、幸福や人生は人との交流であり、そこから生まれる楽しさにつきるということになる。それでいいなら、底辺でも充分幸福な人生を送れる。そもそも人口の大変は平均収入も平均資産もない状況なのだから、底辺と呼ぶのもおかしい。オルタナティブ・メジャーとでも言えばいいんだろうか? 矛盾した言い方だけど、よさそうな気もする。
これまでの社会の尺度での優先度や重要度で図った時の代表的な人たちは資産や収入が上位10%にいて、それ以外は人数は多いけど金や権力を持たない。でも、それでも楽しく幸福に生きられる。
そのための生き方の指南をしてくれるのが本書だ。実際に何十年もほとんど収入なしで楽しく暮らしている実例がたくさん登場する(著者ふたりももちろんそうだ)。将来を悲観している人は元気づけらるかもしれない。
しかも、こうしたこれまでの尺度で底辺とされる人たちが尺度の外で楽しく暮らす動きが世界中に広まっている。中国の寝そべり族は有名だし、韓国にもいる。だめ連というと特殊な人のように聞こえるかもしれないが、時代の先端であり、世界の多数はなのだ。
下剋上が難しそうな人、働かずに楽しく生きたい人、居場所のない人に一読をおすすめしたい。
●感想
あまり政治や思想は出さないような気がした。だめライフ神奈川の人もそんなことを言っていたなあ。
本書にも書いてあったけど、だめ連もだめライフ愛好会も大学卒、大学生が中心だったと思う。多数派なのだから、手引き書ももっと門戸を広げるようなエッセイマンガや手軽かつ実践的なものがあってもよいと思う。
ちなみに私は住む場所も収入源も年々かおきに変わる根無し草なので、だめ連やだめライフはすごく気になる。本書で知人の名前や聞いたことのある名前をいくつも見つけてにやにやしていた。
素朴な疑問なのだが、本書には界隈の人は知ってるけど、一般に知られていない人には説明が書いてある。げんきいいぞうさんには説明がなかった。げんきいいぞうさんってそんなに有名なひとだったっけ? 私は大好きですよ。代表作とも言える「生きていれば、よしとする」もよいですが、「毛糸の地引き網」が特に好きです。
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