『スノウ・クラッシュ』(2022年1月25日、ハヤカワ文庫)

ビジネスマンがメタバースを知るため『スノウ・クラッシュ』を読むことはおすすめできない。なぜなら、現在ビジネスで進んでいるメタバースは本書のメタバースとはかなり異なるものを目指していると考えられるからだ。それに上下巻ですごく長い。「どうぶつの森」VRChatをやった方が感じがわかると思う。

本書の内容や評価については、たくさんの方が書いているのであらためて書くこと必要もないような気がするのだが、あえて言うと2022年の今、読んで楽しめる人はそんなに多くはないような気がした。最初に読んだ時は、すごくわくわくした記憶はあるけど、もうだいぶ昔のことだ。再読したら全然だった。ただし、あくまで私の個人的な感想なので、何度読んでもすごくおもしろいという人もいるかもしれない

私個人としては、『ニューロマンサー』(サイバーパンクのさきがけ)『カッコウはコンピュータに卵を産む』(実録コンピュータクライムノベルのさきがけ)はかなり古いのに今でも楽しめる名著だと思うが、本書はどうだろう……

メタバース関係の仕事をするので、『スノウ・クラッシュ』を再読したら楽しめなかった。そもそもメタバースというと、最初にその言葉を使った『スノウ・クラッシュ』を引き合いに出しているせいで読むハメになったは理不尽だ。そもそも本書が書かれたより前に仮想空間サービスハビタットがサービスインしており、利用者はアバターで参加していたので、本書は誰も想像しなかった世界を描いたわけでもない。

本書に盛り込まれている近未来アイデアの多くはまだ実現されていないから、それが参考になることもありそうだが、それ以上に現実世界でその後生まれたアイデアと商品の方が魅力的だと思う。NFTはそのよい例だ。現実で生まれたものや進行中のアイデアは無数にあるので、ビジネスならまずそっちをチェックした方がいい。

基本的に小説に関してはネガティブなことを書かないことにしているのだが、仕事上再読をほぼ強制されるような感じで読むことになったので、そうしても後向きになってしまう。大変申し訳ない限りである。私と同じ境遇に陥った方には、勇気を持ってはねのけるか、他のもっと新しくておもしろそうな本を読んで、そちらで対抗することをおすすめしたい。


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