見出し画像

Metaの2023年第3四半期脅威レポート

Metaの2023年第3四半期脅威レポートが公開されていた。2023年11月30日に公開されていたのだが、あらためて同年12月15日に他のレポートと一緒に告知(https://transparency.fb.com/ja-jp/integrity-reports-q3-2023/)された。

THIRD QUARTER Adversarial Threat Report、https://transparency.fb.com/ja-jp/metasecurity/threat-reporting/


このnoteではMetaの四半期ごとの脅威レポートはできるだけ紹介するようにしている。Metaのテイクダウンの内容から全体の動向を推測することができるし、最近では他のプラットフォームまで調査していることが多い。また、分析も参考になる。
中心となっているGlobal Threat Intelligence LeadのBen Nimmo氏とはXで相互になっているので、彼のツイートで気づくだが、今回はツイートしていなかったため気づくのが遅れた。もうXには愛想をつかしたのかもしれない。

●テイクダウン

今回はメインは3件の報告だった。

1.中国 インドとチベットの特定の地区に焦点を当てた活動と、アメリカを標的とした小規模な活動

フェイスブックとXで発見。13のアカウントと7グループを削除。チベットと、インドのArunachal Pradesh地区に焦点をあてたもの。ジャーナリスト、弁護士、人権活動家を装っていた。フェイスブックとXで同じプロフィールと写真を使い、相互にやりとりしていた。
内容はニュース、文化、スポーツ、旅行など。
チベットでは独立派の活動家になりすまし、ダライラマと取り巻きの汚職や小児性愛を批判していた。
インドでは汚職や民族的暴力を非難していた。
少数のアメリカ人を装ったアカウントでは、ハフポスト、ブライバート、フォックスニュースなどへのリンクをシェアしていた。

2.中国 アメリカをターゲットとしたアメリカ人になりすました活動

4,789のフェイスブックアカウントを削除。
アメリカ人を装って異なるプラットフォームで同じ内容を投稿していた。中にはX特有のRTや@などをつけたまま投稿しているものもあった。
2023年半ば、これらのアカウントの一部はインドを拠点にしているように見せかけ始め、前項のインドをターゲットとした投稿に「いいね」などをつけていた。

3.ロシア 英語圏の利用者をターゲットにしたウクライナをテーマの活動

6つのフェイスブックアカウント、3つのインスタグラムアカウントを削除。
ロシアのプロパガンダメディアRTの関与を発見。
ロシアはウクライナ侵攻開始とともに、Telegram、X、フェイスブック、Tik Tok、YouTubeなどに草の根メディアを作ろうとした。まず、ニュースメディアを装ったページを作り(フェイスブックのシステムが検知し自動削除)、主に英語でウクライナ侵攻やアメリカやフランスの人権問題の批判などを行った。
ロシアの外交関係者のアカウントは、フェイスブック、X、YouTubeでTelegramチャンネルを宣伝していた。

●2024年に向けて

1.外国からの干渉

・ロシア
以前としたもっとも多くのCIBを行っている。
目立った活動としては、ドッペルゲンガーがある。アメリカとヨーロッパの政治にテーマにして、大手ニュースの内容を陰謀論などをまじえて改変してサイトに掲載している。
アメリカ向けサイトの例  Election Watch, Lies of Wall Street, Spicy Conspiracy, Truthgate, 50 States of Lie
フランス向けサイトの例 Le Belligérant, Les Frontières, Wanderfalke, Der Leitstern

・イラン
ロシアに次いで頻繁にテイクダウンされる国となった。最近では活動は抑制されている。
最近ではTelegram, YouTube, Gab, Gettr, Truth Socialで活動していることが確認された。大手ニュースのコピペも多い。

・中国
テイクダウンした海外をターゲットにしたCIBネットワークは5つでどの国よりも多かった。中国の活動は2021年から始まったが、いまのところ有効なオーディエンスを獲得できていない。
今回、テイクダウンした作戦ではナンシー・ペロシ前下院議長、グレッチェン・ウィトマー知事、クリスティ・ノーム知事、ロン・デサンティス知事、マーク・ケリー上院議員、マーシャ・ブラックバーン上院議員、シルビア・ガルシア下院議員、テリー・スウェル下院議員、マット・ゲッツ下院議員、ジム・ジョーダン下院議員などのXの投稿をコピペしていた。目的では不明。

2.2024年情報環境

・本物の政治的議論を乗っ取る
影響力のある政治家の投稿をコピペしていた。これにより、他国への干渉目的と、本物の議論や金銭目当ての利用者との区別がつきづらくなるなどの問題が発生した。本物の発言まで抑制されることになると民主主義の基盤が損なわれるため注意が必要だ。

・分散化
CIBネットワークは集中型ではなく、複数のインフルエンサーやプラットフォームに分散するようになった。
中国のSpamouflageは50以上のプラットフォームで活動している。ブログプラットフォームにコンテンツを掲載し、フェイスブックなどのプラットフォームでリンクをシェアしている。
分散化することで、テイクダウンされた際の復活力があがっているようだ。

・産業界、政府、市民の間での情報共有
情報共有は重要であるものの、必ずしもうまくいっていない。

・中露のナラティブに注意
中露は地政学的なナラティブを流布している。

・パーセプション・ハッキング
パーセプション・ハッキングについての警告。CIBや偽情報、デジタル影響工作はそのものの効果以外に、「そのようなことが行われている」ということを知った人々が懐疑的になる効果もある。これをパーセプション・ハッキングと呼んでいる。日本では私以外にパーセプション・ハッキングに言及している人は見たことないが、れっきとした脅威として昔から存在している。

影響工作を請け負う民間企業や、以前紹介したレピュテーション・マネジメント企業が商売のために、デジタル影響工作などの脅威を誇張して話すこともパーセプション・ハッキングの効果を広げている

・ハッキング、情報漏洩
漏洩した情報を利用した活動。漏洩した内容を改竄したり、時には漏洩情報そのものがでっちあげということもある。
今後の可能性として、生成AIにそれらしいでっち上げ漏洩文書を作らせて利用する可能性が指摘されていた。

生成AIについては項目を設けてくわしく整理されていた。


ここから先は

0字
Metaの四半期脅威レポート、プリンストン大学の情報戦統計は他ではあまりないかも。Metaは四半期毎なので数も多いです。 どちらも元は無償公開されているのでそちらを読んだ方がよいのは確かです。

Metaの四半期脅威レポート、プリンストン大学の情報戦統計、民主主義指数、V-Demなど定期的な資料の紹介記事。ご自分で記事を遡れば無料で…

本noteではサポートを受け付けております。よろしくお願いいたします。