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令和6年防衛白書を読んでみたら、レーガンの戦略防衛構想(スターウォーズ計画ともいう)を思い出した

2024年7月12日に公開された令和6年防衛白書を読んでみた。といっても認知戦、デジタル影響工作に関係する箇所だけなので、読んだのは10ページもないかもしれない。量は少ないもののちゃんと取り上げられているのはすばらしい。そのうえ、今回はこの話題にまつわるコラムまでついている。

●防衛白書から見えてくるデジタル影響工作への認識

デジタル影響工作関係の記述があったのは、主に3箇所。

・第Ⅰ部第4章第1節4項情報関連技術の広まりと情報戦 P178
・第Ⅲ部第1章第5節2項認知領域を含む情報戦などへの対処 P304
・第Ⅰ部第4章のコラム 偽情報を含む影響工作と「情報機関」による「情報戦」の論点

まず、前の2つは最近の状況をコンパクトにまとめてある
「第Ⅰ部第4章第1節4項情報関連技術の広まりと情報戦」では、デジタル影響工作が脅威となっていること、特にAIを利用したものが脅威となっていることをあげ、DARPAの検知システムなどの対応を紹介している。
「第Ⅲ部第1章第5節2項認知領域を含む情報戦などへの対処」では前の「第Ⅰ部第4章第1節4項」が比較的ボットやAIといった技術的な話を中心にしていたのに対して、認知を前面に出して世論操作などについて紹介している。とはいえ、SNSとAIというキイワードでしめくくっているので似たような終わり方だ。

このふたつはきれいにまとめているものの、なぜAIでなんとかなると思う理由などは書かれていない。防衛白書に限らず、また我が国に限らず、ほとんどのデジタル影響工作のレポートや論文には、問題の整理、影響の検証、対策の効果の検証がほとんど含まれていない。代わりにあるのは「脅威」だという主張。さすがにこれではまずいと思った良識ある学者などが昨年から次々とデジタル影響工作の影響の検証や、対策の効果の検証を行っている。他の記事で書いたが、どちらも影響も効果も少ない。
その代わり、これまで研究対象担ってこなかった二次的な影響(データボイド脆弱性など)や、対策が生む逆効果(パーセプションハッキング、警戒主義など)があることがわかってきた。それらはSNSよりも大手メディアによって引き起こされている。
もちろん、さらなる検証は必要だが、少なくともこれまで欧米がやってきた対策はろくな効果がなかったので、見直しは不可欠だろう。

とはいえ、すでにAIで真偽判定や問題投稿の検知をする方向だけは決まっているようなので防衛省も大変だなあと思う。レーガンの戦略防衛構想(スターウォーズ計画ともいう)なみの大ばくちだ。
防衛研究所にはくわしい人がいるはずだけと、大方針に反することは欠けないのだろうなあ。

コラムの「第Ⅰ部第4章のコラム 偽情報を含む影響工作と「情報機関」による「情報戦」の論点」は、全く違っていて、情報機関によるデジタル影響工作対応について整理していた。そういう視点で考えたことがなかったので、興味深かった。
ただ、このコラムではあえて触れていなかったことがある。ほとんどの国の情報機関はオフェンシブな作戦やサイバー攻撃などを実行しており、そこで得られる情報が防御の際にも貴重であるというのが、このコラムの本意のような気がした。
このコラムに書かれていた情報機関がDNIのあり方の変化は全く同感で、2024年のDNIの「ANNUAL THREAT ASSESSMENT OF THE U.S. INTELLIGENCE COMMUNITY」(2024年3月11日、 https://www.dni.gov/index.php/newsroom/press-releases/press-releases-2024/3789-odni-releases-2024-annual-threat-assessment-of-the-u-s-intelligence-community )には気候変動が社会に及ぼす影響や、中露イランがアメリカ社会の国内の問題をねらっているという指摘などが含まれていて、ふつうの役所っぽくなった感じがした。

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