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別に本当に死にたいわけじゃないよ



生きていくのが少し面倒だ。

特別今はやりたいことがあるわけでもない。

めちゃくちゃ生きていたいと思っている人ってすごいな。仕事で生き生きしている人は、仕事以外でも生き生きしているからすごいな。

きっとそんな人だって辛いこととかやりたくないことをこなしているんだろうな。そんなことも全部当たり前じゃない。けどわたしからしたら当たり前に乗り越えているように見える。みんないろんなことを乗り越えて道を進んで生きているのに、何かを乗り越えることに怖くなったわたしは、躓くこともなくなったけど、ただぐるぐると自分の周りを歩いているだけで、そんな退屈が苦しいなんて贅沢な悩みを抱えて生きてしまっている。






わたしは会社員を辞めてから人と話をするのがめっきり苦手になってしまった。

本当はなるべく人と話さないで生きていきたい。でもそうしていると生きていても疲れてしまう。人と話をしていても疲れてしまうし、人と話をしていなくても疲れてしまう。めんどくさいことを言っているのは承知の上だ。


この前わたしは今働いている飲食店で報奨金みたいなものを頂いた。

売上や接客態度の評価がいいと店長補佐の数名がもらえるものらしい。たった数千円だったけどわたしは嬉しかった。

会社員時代に死に物狂いで働いて手に入れた数十万、数百万のボーナスよりわたしは嬉しかったし、何より今のわたしは嬉しいことに喜ぶ余裕があったのだろう。


その数千円を握りしめてわたしは休日に前から行きたかった喫茶店に行った。

たった一杯の珈琲を1時間ほどかけて飲んだ。代金は600円。実を言うと頂いた報奨金は5000円だった。さあ残り4400円。


次は本屋さんに行った。都内の大きい本屋さん。割と新しいところだったので店内はピカピカに輝いて見えた。そこで最近覚えた作家さんの小説を一冊買った。

そのあと近くの小さい古本屋さんに行ってタイトルだけに引き込まれた小説を買った。

大きいお店も小さいお店もどっちにも良さがあってわたしは好きだ。ただ古本屋さんの方が本の匂いがして好きだ。大きい本屋さんはちゃんとお手洗いが近くにあるから好きだ。青木まりこ現象に悩まされることもない。勿論品揃えもいいけど。

代金は二冊合わせて1000円ぐらい。よし残り3400円。


その日のわたしはちょっとだけ勇気があった。

好きなブランドの洋服屋さんにも行った。

お世辞にも広くはない店内。女性の店員さんが二人だけ。

店員さんはお淑やかな見た目に優しい笑顔で迎えてくれた。こういってはなんだけどわたしはあまり買う気はなかった。どんなものが売っているか見たい、ただそれだけの勇気だった。

シャツだけで数万円するラインナップにわたしは膝をついた。

店員さんはその日のわたしの服を沢山褒めてくれた。身につけてるアクセサリーもピアスも全部褒めてくれた。それが全部嘘でも全然良かった。

お客さんもあまりいなかったので、店員さんと沢山話をした。気づけば店員さんが最近好きな人に振られた話を聞いていた。とても可愛く笑う人だった。

そんな時間が楽しかった。わたしは苦し紛れに、最後に気に入ったデザインの指輪を買って「また来ます」と伝えお店を去った。

代金は3000円ぐらい。いよいよ残り400円。別に使い切ることが目的ではなかったけど。


帰りにコンビニで一番甘そうなデザートを買った。

代金は300円ぐらい。もう残りは殆どない。


真っ暗な家に一人ただいまと小声で言うのがわたしの毎日だ。

残りのお金をわたしは貯金箱に入れた。多分まだ1000円も貯まっていないと思う。


こんなつまらない休日でもわたしはいい。

むしろこれが良かったんだと自分に言い聞かせてすらいる。



昔は

たかがひとつ恋が終わったぐらいで、

たかが会社をクビになったぐらいで、

それはもう酷く泣いた。この世の終わりだと思った。わたしは他の人より圧倒的に劣っていて、社会に必要のない人だと思った。

紛れもなくわたしは「死にたい」と思っていた。


けど「死にたい」=「死にたい」ではないし

ただ楽になりたいだけなんだよ。

けど「楽」は生きていないと感じれないから、もうちょっと生きていたいな。

そうだ、暇だから最近ベランダで育ててるお花に水をやろうかな。この子はわたしがいないと生きていけないからね。




書き続ける勇気になっています。