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日記 8月4日

夜勤バイトを終えて外に出ると、まだ気温は上がり切る前で、水の匂いの籠る川沿いを遠回りして帰宅した。ベランダに差す朝日をシャッターで遮り、夕方まで眠れるだけ眠り、起きて街に出る頃にはもう暗くなりかけている。スターバックスでライムをコーヒー風味に抽出したものをカウンターから注文し、同級生の服装のセンスを酷評し合っている女子大生たちの隣で、ライムの果肉をストローで潰しながら飲んだ。調べてみるとカフェインが31mg含まれているらしい。

食欲はないが栄養の欠乏感に促され、どこかものを食べられるところを探し、近くのやよい軒に入店した。やよい軒に「冷や汁」があると友人が言っていたのを思い出し、「冷や汁」が何なのかわからなかったが、こういう時に食べるものだということはわかっていたので、発券機で注文し、オレンジの芳香剤の匂いのするトイレから数席ほど離れたところに座った。「冷や汁」には氷ときゅうりが浮いていて、食欲をなくした人たちの食べ物のようだった。

本を読んでいるとふたたび空が白んできたようで、ようやく正常と思しき空腹感も手伝って、なるべく朝日を目に入れないにように近くのコンビニに向かう。さきほどセブンイレブンの梅のおにぎりに昆虫が混入していたというニュースを見たところだった。どうしても同じものにあずからなくては済まないという気が起こり、おのれでも奇異なこととは思いつつ、それにしても忍びなくなり、あえて二つほど買い求めた。梅の表皮の照りは、画像でしか見ない昆虫のそれとも似つかないものであることを繰り返し繰り返し確認し、皆にも、自分にも言い聞かせるようなつもりで最後までいただいていた。
正しく食べるとはどのようなことか。

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