あとがきとかそういうの

『湖畔の漂着物』の発想と組立

『湖畔の漂着物』

 基幹コンピュータからカッコウの声が流れる。起床の時刻。地球で進化してきた我々のため、この星と地球の自転を綿密に計算して生活時間が導き出してある。
 かつて地球は大宇宙時代だった。多くの開拓民という名の難民が地球からフロンティアとされる星へ飛び立った。もう何世紀も昔のことだ。今の地球がどうなっているのかは知らない。知るすべもない。多くのフロンティア惑星で、人類はその息を絶やそうとしていると思う。そう願う。なぜならこの星がまさにそうだから。広い砂漠に覆われたこの星の、唯一のコロニーで暮らす人類はわずか数人だ。次世代に命は繋げそうにない。
 基幹コンピュータからカッコウの声が流れる。では先程の声は目覚めの夢だったか。飲料水を飲んで今日の仕事を確認する。我々に残された仕事、コロニーの管理。そう難しいものでもない。
 基幹コンピュータからカッコウの声が流れる。三度目でさすがに幻聴ではないなと思う。まさか故障か。だとしたら直せる者は誰一人としていない。科学者も技術者も、もういなくなってしまったから。
 どうしたものかと困惑して外を見たのだ。空に強く光る塊を認識。衝撃。コロニーが壊滅していたのが次の光景。

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 500文字の心臓の第134回タイトル競作に参加しました。

 このタイトル競作っていうのは、作品タイトルが提示されて、そのタイトルに合う超短編(超短篇)を書き、作者匿名の状態で作品群が発表されて評価し合う、というシステムになっています。
 正選王(良いという評価を一番もらった人)と逆選王(良くないという評価を一番もらった人)は次回のタイトルを決めることができます。

 システムに関することは上のリンク先で500文字の心臓を見てもらうことにして、『湖畔の漂着物』というタイトルでどうやって上記のお話をひねり出したのかってお話をします。

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まず、背景として「SFを書きたい」っていうのがありました。
 仲良くしているネット作家さんたちがSF企画に参加していて、私はその企画には参加してなかったんですが、SF作品の感想をよく目にしていてちょこちょこ私も読んでいて、「私も書きたい!」って思ったんですね。

   ♪しっずかっなこっはんっのもーりのかげっから
っていうこの曲ね。
 じゃあってんで、歌詞を検索してみたのだけれど、歌詞サイトとyoutubeに上がってる動画と、2番以降の歌詞が一致しない……。ならば1番だけでなんとかしてやろうじゃない! という感じです。

 カッコウの声で起こされる→目覚まし?→遠くの惑星で自転速度が違って、健康に過ごすには睡眠時間が管理されてる必要があるのでは?
 というのが前半の説明部分になります。ここは冗長といわれてしまったので説明を説明だけで終わらせないようにするのが今後の課題。

 地球から遠くの惑星に人類が、という設定が出てきたときに「地球は人口爆発しているのでは」と考えたので、それとの対比として「移住先の惑星では人類は滅亡の危機に瀕している」という設定を加えました。ちょっと新井素子『チグリスとユーフラテス』の影響があるかもしれない。好きな本です。

 このあたりで「バッドエンドにしよう!」と思いまして、「漂着物」は隕石で、それによりコロニーが破壊されてしまう、という結末に決めました。

 このくらいまで決めてから一気に書きあげました。この段階で500文字をちょっとオーバーするくらい。
 ここから推敲などの微調整に入ったのですが、気を付けていたのは

1)歌を効果的に使う
2)最後の隕石落下は「突然!」って感じにする

1)に関しては、元の歌が輪唱なので繰り返せばそれっぽくなるかなあと思いました。
「湖畔」をクリアするためにはこの歌がないとなんのことやらなので、歌がベースにあることは仄めかしておかないといけないという判断です。

2)に関しては、隕石落下までは文章のスピードを比較的ゆっくりにして、隕石が出てきてからは文章を走らせようかな、と。
 最後の隕石落下の段落が、実は一番手を入れたところだったりします。隕石を見た状況とか、それをどう描写したら効果的かとか、文章を削れそうだったら削りましたし、使う単語もより端的なものにしたり、語調も(最終的には体言止めを多用しましたが)どんな風にしたらいいのか試行錯誤したり。

 部分部分で細かく調整した後で何度か通しで読みながらバランスを調整して、「湖畔の漂着物」は完成しました。
 結果は……次点が2点。
 宇宙ネタが被ったのがマズかったかしらーとか、指摘されたように説明が冗長だったのねーとか。まああれですよ、反省点は次回以降に生かすのです。

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