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ー安楽死を宣告された猫との35日間ー  33日目

BAKENEKO DIARY /DAY 33. 愛に感謝をプラスして

 事故から1ヶ月と少したった。筋力が戻ってきたミータは、踏ん張って抵抗するので、リードを取り付けるのもひと苦労。獣医のA先生から今後の通院は不要とのお墨付きを得たら、自由に外に行かせてあげるからね、と言い聞かせるが、なかなかね…。

 順調に回復するなか、ひとつ残っていた懸念は、左前肢の麻痺だった。少しずつ、手やおもちゃにじゃれて遊べるようになってきたが、動きが遅く弱々しい。以前の動きを知っているだけに、気がかりだった。

 ところがここ数日の様子を観察していると、以前通りとまではいかないが、かなり手の動きがスムーズになっているのを感じた。A 先生は「左目も、左前肢も反射が弱い」と言われていたので、どこまで戻るかなと思っていたが、この分なら以前の動きを取り戻せるだろうと確信する。

 ミータがうちにやってきた頃に住んでいた家は古い木造の建物で、私たちは小さな格子窓の付いたつし二階(屋根裏のような部屋)で寝ていた。二階と言っても一般的な住宅の2階ほど高くはなく、猫なら塀を伝って簡単に屋根にあがることができた。

コツコツ、コツコツ…コツコツ…
にゃぁぁあ。

 夜中に窓がノックされる。夕方から出かけて、私たちが寝た後に帰ってきたミータは、1階に人がいないのがわかると、屋根にのぼって私たちが寝ている部屋の窓を叩いた。窓にははめ殺しの網戸が入っているので、窓からミータを中に入れることはできない。目をこすって起き出し、一階に降りて玄関のドアを開けると、ミータは塀をつたって地上に降り、玄関から家に入ってきた。
 次に住んだ借家でも、ミータは外に出てしばらくすると、リビングにある磨りガラスの窓をノックして、開けてくれと要求した。近隣の猫たちとは仲が悪かったので出くわすとさあ大変。大声をあげて猛ダッシュで駆け戻り、ガラスをガシガシと引っ掻いた。

 当時はなんとも思っていなかったが、健康な身体だったからできたことだった。それがどんなに素敵なことのか、今ならわかる。元に戻らなくても、変わりなくミータのことは愛せた。でもこの分なら、ミータはほぼ元の身体に戻れる。ならば命の重みを心の片隅に置いて、愛プラス感謝を持ってミータと一緒に暮らしたいなと思う。

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