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5年と3か月③

理不尽

付き合って4年ほど経ったころ、恋心は薄れていた。
「情」だった。

仕事帰りにパチンコへ行く、23時前に帰ってきてご飯を食べて酒を飲んで風呂に入って寝る、休みの日は開店から閉店までパチンコ、一緒の休みの日もパチンコ、の彼。

仕事帰りにパチンコ店まで送ったあと買い物へ行く、帰宅して昨日の夜ご飯の片づけをする、夜ご飯を作る、ビールを冷やしておく、氷のストックを確認する、帰ってくるのを待つ、23時過ぎから夜ご飯を食べる、酒をつくる、食べ終えたら風呂に入って、日付が変わって寝る、私。

え、なんの罰ゲームなの?と今では思う。


私は彼がいたので、男友達とは会わなかったし、2人では絶対に会わなかった、彼がよく思っていなかったから。
けど、彼は女性と2人で飲みにも行っていた。

「そういうのじゃないから」

と。
いや、私だってそういうんじゃないのよ。

友人に相談した。
「もういいじゃん?普通に遊んだりしたら?なんでちいだけ我慢しなきゃいけないわけ」と言われて、もういっか、と納得した。

嫌味を言われたが、友達とたくさん遊ぶようにした。
同じ休みの日も、友達を遊ぶことを優先した。
2人でいる時間は、少なくなった。

きっかけ

些細なことだった、本当に些細な。
今となっては、覚えていない、喧嘩の理由も。

ある時、幼馴染の結婚式があった。
とても楽しみにしていた前日の夕方、大喧嘩をした。

怒鳴られて、怒鳴り返した。

「もう別れる」

と言われた私は

「そう、じゃあ出ていってよ」

と言った。

すぐに荷物をまとめだした彼は、出ていった。

「他の荷物は、ちいが結婚式に行ってる間に運び出す、鍵はポストに入れておく」
「はい」

悲しくなかった、こういうことかと思った。

「情」

とは、こういうことで。
「好き」という気持ちは残っていなくて、私がいないとダメな人だと勝手に思い込んでいた。


翌日、結婚式から帰ると、彼の物はなくなっていた。

すっきりした。

あっけなかったけど、すっきりした。


そんな5年と3か月。

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