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『ブロンソン(Bronson)』(2008)

『ブロンソン(Bronson)』(2008)
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演: トム・ハーディ

これは実話である、というテロップはもうお腹いっぱいであるが、この映画には度肝を抜かれた。
公開当初は未公開だったが、トム・ハーディとレフン監督の知名度と共に日本でも見られる。
ハーディはイギリスの役者、「ブラックホーク・ダウン(2001)」デビューだそうだが記憶にはない。
やはりバットマン映画「ダークナイト・ライジング(2012)」からの「マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015)」ということになるだろう。
バットマン繋がりでヒース・レジャーの影を感じた。
C.ノーラン監督「インセプション(2010)」「ダンケルク(2017)」
マーベル「ヴェノム(2018)」シリーズではコミカルな役柄もこなしてる。

本作では「ダークナイト・ライジング」へ至る狂気さを、徹底的に演じている。
筋書きはあってもなくても勝手に、自称チャールズ・ブロンソンことマイケル・ピーターソンが時折姿を表し、進行していくスタイル。

どんどん理由なき暴力で溢れていく。
何が狂っているかって、その理由がない、というところだ。

とにかく肉体を弾丸にし、あらゆる方向へと乱射し、相手を傷つけ自らも壊れていく。
途中少し失敗して「カッコーの巣の上で」な方向へハマってしまうが、盲滅法と暴れまくって方向転換、いったいこの映画は何を表現したいのか、呆れてしまうくらいの無軌道ぶりだ。

常軌を逸したこの囚人には目的がない。

ただ闇雲に暴れることだけだ。

いや目的はあった。

有名になりたい、らしい。

確かに有名になったが、果たしてこれでいいのか、不思議な精神構造を持った人もいるものだ。
後半、その特異な思考が芸術へと昇華しそうになる。
振り切れてしまう狂気が、余剰のエネルギーとなって彼の筆先から溢れ出す。
そこもまた見ものであるが、それは理由なき交戦への寄り道にすぎない。

「チャールズ・ブロンソン」ことマイケル・ピーターソンはイギリスで最も有名な囚人であり、34年の刑務所生活のうち、30年を独房で過ごし、いまだに服役中である。

Bronson #一骨画