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【鉄面皮日記】2022.03.25.

また映画を中途で止めてしまった。
着眼点は佳いのだけど、だんだん見苦しくなってきて、終いの方は滅茶苦茶だ。
つまり残り数十分のところで断念するという残念な結果となってしまった。
*因みに映画は「キラー・メイズ(2017)」でした。

外は風が荒ぶっていて、部屋の古い引き戸をギシギシ鳴らす。
閉まりも悪いので隙間風が吹き抜けるが、気温は高めなので寒くはない。

自画像 #一骨画

時間潰しに小一時間ほどお絵描き、その辺に転がってる自分自身が題材、
無理に作り笑いをしてみたがぎこちない。
絵に集中してるとどうでもよいコトを忘却できるが、コトが済むと元の木阿弥だ。
ならば描き続ければよいのだろうが、そんな体力は出てこない。

商品の発送に日に一度は、郵便局へと外出する。
家から数十分ほどの距離なので気分転換にもなるし、気が向けばそのまま散歩にも行ってしまう。

道すがら鉄工場があり、そこの匂いを嗅ぐと郷愁に捉われた。
鉄の溶接、ラッカーや塗料の強い匂い、かさかさに乾燥した機械と錆びの空気。

小学生だった頃、父の仕事がそういった鉄工場にあったので、連れて行かれたことがあった。といっても、父の仕事はその什器のデザイン企画にあって、その制作現場は父の兄弟たちが担っていて、たまに現場へと行くような体である。
工場へ向かう前、喫茶店で念入りに新聞を舐めまわし珈琲をゆっくり啜る。
僕はジュース。

その日は雨だった。

乾燥した工場も湿り気をもち、ゆっくりとした時間が流れ、工場の人が好きな物を作っていい、と言うので端切れ板やアクリル板などを貰い、電気ノコギリなどで切ったりする。
僕は工作学校へ行っていたので、電ノコやいわゆる工作機器はある程度使うことができた。

静かな時間というのは、たぶん日曜日だったからだろう、機械も操業していなかったのだから。

同じ日だったのかしら?

名古屋の片田舎にあった工場から帰る頃、当然の豪雨に襲われ、車に乗って数分もしないうちみるみる水嵩が増え、車内にまで侵入してきた。
近くを小さな川が流れているのだったが、その川が氾濫したのだろう、物凄い勢いで自分の腰くらいまでの水が迫ってくるのだ。

車も流されてしまうんじゃないのか、恐怖に怯えながら、遠くに見える枯れ木を眺めている。その木の枝にカラスがしがみついていて、いやカラスかどうかは分からないけど黒い鳥の影だ。

枯れ木には黒い鳥、道は水に侵され、車は水没寸前。

そんな記憶が思い出されたのだったが、それは本当にあったコトなのだろうか?
数少ない父との思い出のひとつではあるが。それを確かめる術はもうない。

風はいよいよ強くなり、窓扉を叩く。
今夜はその音を子守唄にしよう。