見出し画像

曇天の午後

 今日は朝から、櫛の手入れをしようと決めていた。

 髪のために木製の櫛を使っている。普段使いは桃の木で作った櫛だが、祖父母の形見の木曽のお六櫛、父母からの木曽の柘植櫛、この春贈られた京都 十三やの櫛を仕上げに使う。十三やの櫛は滑らかで木目が透き通るように美しい。

 ティッシュに椿油を湿し汚れを落とすように櫛を拭く。汚れを落としたらラップに髪を敷き椿油をしみこませる。その紙に櫛を一つづつ包みさらに油を含ませる。椿油でパックする要領だ。そのまま置いておく。

 午後、一通りのことが終わりラップをはがす。椿油の独特の匂いがする。くるんでいた紙で櫛を拭き上げる。しっかりと油がしみこみ木地に艶がでる。桃の櫛は濃い茶色になり艶が出た。油がぺたぺたする感じがするがその油が髪を梳かすときに髪を艶を出すのだ。

 十三やの櫛は鼈甲のような艶が増し、美しい。椿油の香りが残り、特別な物としての存在感を感じさせる。柔らかい布で磨きピンクの花柄のちりめんのケースにしまった。

 木の櫛は静電気も起きず髪を傷めにくいと言われる。今は肩の下までだが、この先また腰まで髪を伸ばしていくので、この櫛で髪の手入れを続けて綺麗に伸ばしていこうと思う。髪とともに櫛も大切にしていこう。

 大切な宝物とは、こうやって増えていくのだな。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?