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小さきものの苦悩、あなたは考えたことがありますか

 そんなに気にしたことはないが、人よりも背が低い。ロングスカートも丈の長いワンピースも基本引きずるしジーンズは裾上げ必須。車の運転のシート位置は常に一番前。それでもあまり気にせず生活しているのだが、困ることが一つだけある。

 それは、会社のおやつ置き場に手が届かなくなることがあることだ。

 冷蔵庫の上のスペースにツッパリ棒で棚を作ってコーヒーやおやつを置いているのだが、棚の高さが標準で190あり、手を伸ばし切ってやっとかごに手が届くのだ。おやつのたびに伸び運動をしていると思えばいいのだが、不安定におやつが入っていると雪崩れることもありスリリングな休憩時間となっている。たまに箱入りのお菓子をいただくと、おやつのかごは箱の上に置かれる。かごはますます天井近くに祭り上げられ手の届かない存在となる。

 背伸びアンド指先でかごを取りバランスを崩さないようにおろす。ちょっとした曲芸だ。食べ過ぎないように、チョコを一つ取り出し、また元にそっと戻す。

 お腹すいた・・・・。と、今日もおやつ置き場に手を伸ばしたのだが、箱入りのお菓子の上にかんかんに入ったあられまで追加されている。結構、大きい缶だ。あれ、美味しいあられだ。好きなんだよね、あそこのあられ。ふふふ、と思いながら手を伸ばすと。・・・届かない。触れるほどしかかごに届かない。つま先立ち、手を目いっぱい伸ばす。傷めている右肘が悲鳴を上げる。

「はぁ・・・。このまま届かないで終わるのか。悲しい。私が何をしたっていうの。どうしてこんな目に合わなくちゃいけないの」心の中で悲劇のヒロインぶってはみたものの、今事務所には私のみ。誰かに取ってもらうこともできない。椅子か何かを踏み台にすればいいのだが、事務所用の動く椅子しかないので危険だ。

 でも、食べたい。小腹が空いたの。月初の事務処理は意外に頭も使うから脳が糖分を欲してるの! ギブミー甘いもの! 

 気を取り直して、再度手を、背を伸ばす。両手の先がかごをとらえた。それを慎重におろす。やった、うまくいった。おやつかごの中から、せんべいをとりだすと、また、そっとつま先立ちかごをのせた。なんとかのせたはいいが、箱とかんかんがずれただけで、かごは箱の上に着地してくれなかった。おっと、これはまずいことになったのでは?このままではかごの中身が落下してしまう。伸びきった肘が痛い。でも、あと少し手を伸ばせば何とかなる。

 数分後、かごは不安定なまま置き去りにされた。落ちなきゃいいか。私の背が、あと5センチ高かったら、世界は変わって・・・るわけないか。

 「なぜ、こんな思いをしておやつを取らなければならないの・・・」そうは言っても小腹も空くし、リフレッシュもしたい。必死に体を伸ばし今日もおやつをつまんでいる。

 

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