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あっちとこっちときみとぼくと

こっちがぼく

あっちはきみ

ぼくときみの間に境界線が現れた


こっちにこないで

きたいときはどうするの?


現れた境界線の力に

思わず立ち止まるぼくときみの頭の上を

ムクドリたちが飛んでいった


ねえ ぼくも鳥になれたらいいのに



あっちがぼく こっちがきみ

きみがゆっくり眠れるように

ぼくが自分でいられるように

ぼくときみは自由に動かしたり上げた下げたりできる境界線をつくった


ほっとするね

そうかもね

だけどぼくじゃなくてぼくたちでいたいときはどうするの?


境界線をあっちこっちに動かすきみとぼくの足元に

木の根っこが絡まりながら顔を出した

上を見上げると 絡まった根っこから生えている木は

一つ一つ別々にたっていた


ねえ ぼくたち 森みたいだったらどうなんだろう


あっちもこっちも

ぼくもきみも

あっちだけどこっちで

ぼくだけどぼくたちで


ぼくときみは

いろんな境界線と出会うたびに

トゲトゲしたり

ほかほかしたり

悲しくなったり

嬉しくなったり


いろんなぼくをぼくの中にみつける

いろんなきみをぼくの中に映す


ぼくの中に映ったきみは

きみなのにぼくたちで


ぼくの中にみつけたぼくは

ぼくなのにきみで


ぼくときみは

じぶんの中では海のようになって

時々溺れそうになっては見えない境界線に目を凝らし

慌てて、じぶんのからだの境界線を確かめる


ぼくときみは

じぶんの中では空のようになって

時々溶け合って見えない境界線に安心して

ふと手を伸ばして触れた境界線に傷ついて

慌てて、海のような空のような曖昧さに戻る


あべこべないろんな本当の気持ちに境界線を引けぬまま

ぼくは今日も境界線に揺らぐ







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