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狂気と祈り



狂気が

森を焼き尽くした日の

もっと前の前から


狂気が

生命のひとひらひとひらを

灰に変えた

もっと前の前から


葉を広げあい

根と根を伸ばし挨拶をしあいながら

生きている

この森に

たくさんの祈りが

時を超えて

そっと置かれてきた



ただただ

祈っていた

あなたのことを


ただただ

祈っていた

あの子のことを


風がそっとみつめる


この島でうまれた

人々の祈りを

その切実さを

その痛みを

その願いを


森がそっと包み込み

土がそっと抱きしめる


祈りは

時を超え

紡がれ


紡がれた祈りは

時を超え

静かな願いとなる


狂気が走り出した後

包み包まれてきた祈りの

姿の現れが

動き出した願いの

たどり着く先が

どうか狂気をそっと包み

癒していく未来でありますようにと

わたしは

今日も祈りながら

森の夜に身を委ねる



わたしの祈りが森の祈りと溶け合う



灰になりかけて生き延びた

わたしの幹に宿る命たちと

わたしの命の重なりに

星の瞬きがおちるのを感じながら

今日もわたしは祈りを宿して

森の中で眠る












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