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事故や災害が起きたときのケアについて〜子ども「心」のケアの視点から〜

子どもたちが過ごす集団においての事故や事件など、そこにいた本人や身近な方々にとってとても辛く痛むような出来事が起こることがあります。

このような出来事に対し、震災や過去の事件をきっかけに、先人である専門家たちが積み上げてきた様々な知恵があります。その知恵は、誰もが活かせるものでもあり、知っておくことで有用かもしれない知恵でもあります。

そっと手元に届いたらと思い、一般公開されている心理的なケアについて、こちらに転載します。

災害や事故・事件によりどんな反応が現れるの?


大きな事故や事件、災害が起こった時、私たちのこころは、身体と同じように様々な反応が現れることがあります。そしてその反応は、危機に対する自然な反応です。

では、どんな反応が現れることがあるのでしょうか。現れうる反応について、兵庫こころのケアセンターのホームページに詳しく載っています。

また、特に子どものこころが傷ついた時に現れる反応についてはこちらの「子どものこころのケア」の6〜8ページ目に詳しく載っています。

これらは全て公開されているページ(*子どもこころのケア〜保護者の方々へP2)に書いてありますが、こころが傷つきうるような体験をした後の反応として、

ご飯が食べられない、眠れない、頭が痛いなど身体に起きる変化。

イライラする、いつもだったら反応しないことにビクビクする、自分のせいで起きたと自分を責める、出来事を急に思い出す、自分の気持ちがわからないというようなこころの変化。

落ち着いていられない、何かに集中することが難しい、以前楽しめていたことが楽しめない、無謀な行動などの生活や行動の変化。

といった、様々な変化が起こりえます。こういった反応は誰にでも起こりうる自然な反応です。


起こった反応はどう変化していくの?


災害や事故、事件、予期せぬショックな形での喪失など、こころが傷つきうる体験の後の反応は、誰にでも起こりうる反応です。そしてその反応は危機に対しての自然な反応です。

どのような反応が起こるかは人によって異なります。特に小さいお子さんの場合、言葉で教えてくれるより前に、身体や行動などの変化が先に起こることがあります。

基本的には、多くの場合は、徐々に、自然に回復していきます。回復までにどのくらいかかるかは人によって異なります。

時に回復までに長い時間がかかることもあります。また、こころの傷が大きい場合や、傷が深い場合には、自然な見守りだけでは回復が難しい場合があります。生活に支障が生じる場合もあります(*子どもこころのケア〜保護者の方々へP5-6) 。そんな時には、専門家も一緒に考え、力になります。早めに気づくためのサインはどんなサインか、そしてどんな時に専門家への相談が必要になるのかが、こちらの「子どものこころのケア〜保護者の方々へ〜」の5〜6ページに載っています。こころの傷への治療が日本にもあり、こころの傷は適切な対応をしていくことでちゃんと回復します。

子どもたちはどんなことを感じることがあるの?何を伝えたらいいの?


出来事をどう捉えるかは人によって様々です。子どもたちも、自分なりに、出来事や出来事により現れた反応について必死で考え、自分なりに理解したり意味づけたりしようとしていることがあります。

それにより、例えば、「自分のせいかもしれない」と考え周りに相談することをためらっていたり、「自分だけがこんな風に思ってるんじゃないか」と周りと違う自分のことをそっとしまい込んだり、「誰も信じてくれないかもしれない」と思っていたりする子もいるかもしれません(*子どもこころのケア〜保護者の方々へP8)

上記の冊子に書いてあるように、「安全で安心な状況」をつくり、具体的にこころが傷ついた時に現れる反応がないか尋ねることも必要になります。(*子どもこころのケア〜保護者の方々へP8) 

また、子どもたちのさまざまなサインの背景の気持ちを言葉にしながら(怖かったね。嫌だったね。など)、そのサインと背景にある気持ちを受け止めていけたらと思います。

一時的に、今の年齢より前の年齢に戻ったような行動が見えるときも、それは不安などの現れであることがあります。例えば不安を癒すためにギュッとしてほしい願いに目を向けてください。


また、出来事は、その出来事を体験した方々のせいではありません。子どもの気持ちを聞きながら、「あなたが悪いわけではない」「あなたのせいではない」ことを丁寧に伝えていけたらと思っています。


危機に対しての初動に必要なことは?地域にどんな資源があるの?


こちらには、学校で危機が起きた時の初期に必要な対応についての手引きが、全国精神保健福祉センター長会より出されています。これまで転載してきたこころのケアや心理教育だけでなくメディアへの対応や子どもの周りの方々へのケアなども含めて包括的な初期対応および初期体制が書かれています。


また、もしかしたらご自身のお住いの地域にあるかもしれない資源として、こころの緊急支援活動チーム(CRT:CrisisResponse Team)というチームが置かれている地域があります。危機が起きた時の初動の支援を担うチームです。

全ての都道府県及び政令指定都市にあるわけではありませんが、一部の都道府県や政令指定都市に置かれています。県や政令指定都市の精神保健福祉センターに司令部があり教育委員会とは独立した多職種の専門家チームです。

先ほども申しましたように、全ての地域にあるわけではなく、地域ごとに偏りもあること、また保育園に対応しているかどうかも地域により異なる現状ではあります。

子どもの周りの方々へ

子どもの保護者や、保育園の先生、学校の先生と、子どもに関わる方々も、大きな事故や事件の当事者でもあり、辛い体験をしている一人でもあるかと思います。

ご自身も辛い体験をされながら、まずは子どもの身近で安全で安心な環境を優先されている方も少なくないと思います。本当に頭が下がります。是非ご自身の反応も大切に、労わり、ケアして頂けたらと思っています。

保護者や子どもの周りの方々へのメンタルヘルスについても、上記の「子どもこころのケア〜保護者の方々へ」のP9-10に載っております。

以下にエッセンスを引用します。

・ご自身を責めすぎないでください。
・ご自身の感情をコントロールできなくなったら、それは「ご自身のケアが必要である」ことの大事なサインです。
・勇気を出して相談してください。
・ご自身へのいたわりを大切にしてください。

最後に

子どもや子どもに関わる方々の傷が癒えていく土台には、「安全で安心な日常」がとても大切です。傷が癒えるための環境と、癒えるまでの時間がちゃんと守られていくためには、生活が脅かされない環境が必要なのではないかと思います。

その環境を作るのは、子どもや子どもの周りにいる方々のさらに周りにいる私たちではないだろうかと思っています。一人一人が発信媒体ともなりうる現代において、一人一人が紡ぐ言葉により脅かされる生活もあれば、守られる生活もあるかもしれないと思うのです。

最後に、子どもと、そして子どもの隣で今日も安心安全な日常を取り戻そうとなさっている周りの方々への敬意と共に、しんどさがこれ以上深まらず、少しでも癒えていくことを願っております。


*参考資料

サイコロジカルファーストエイド
http://www.j-hits.org/psychological/index.html…

兵庫こころのケアセンター子どもの心のケア
http://www.j-hits.org/kokoro/index.html





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