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地球の散歩


ああ、ここはどこだろう
深い深い海の底からきこえるかすかなねいろ

森にうごめく幾種もの生命の息吹の地層

街に息づく今はいないものたちの記憶


地球のプレートがゆっくりゆっくり散歩を続ける

森があくびをしてめざめる

風が虫たちのぬくもりをはこんでくる

鳥たちの囁きの隙間から

草木の笑い声がきこえる

ぼくのまだ知らない命の気配

花の蕾がゆっくり伸びをする

みつばちがそっと羽を休める

ぼくと空の気配が溶け合う


遠くで爆撃の音がする

かすかにすすり泣きが聴こえる

あなたは無事だろうか

命の音色がそっとそっとしずまる

零れ落ちた涙が土に消えていく

これはぼくの悲しみなのかもしれない

零れ落ちた悲しみを抱えてぼくは地球の一部になる


過去から未来へ

地球のあちこちて

生命の音色が響きあう


音色がつらなり

ぼくは音色の海に溶けていく

気配の海に溶けていく

ぼくは地球の気配の一部になる


はるか遠く遠くの星の光が

まだ見ぬ明日の音色を運ぶ

ぼくは光の一部となり

ぼくは光の当たらぬ深い深い海の一部となる

ぼくは新たな息吹の詩となる

ぼくは地球の詩の響になる



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