貝塚伊吹のベストソング 2020 「次の東京オリンピックが来てしまう前に」
「よさげな俳優ワークショップに行ったらアムウェイの勧誘だった」とか「近所のバーでその日知り合った40才超の女性と次の日ディズニーに行った」とか「シンプルにコロナ渦何してた」とか Twitterではなくnoteに長文で書きたいことがいくつかあるが、腰が重くて結局年に一度ベストソングを書くことでしか機能していないのがこのnoteである。
2020年の3月(まだそこまでコロナ危機感はなかったはず) 来たる東京オリンピックによる人口増加やこれ以上東京にいても特段やりたいこともなく、東京にぼくがいる理由がもはや「当時3年付き合っていた彼女がいる」しかなくなってしまい池袋の飲み屋で突然「友達が何人かいるし私が東京で行くようなイベントは大抵大阪でもやってるから大阪に行こうかと思ってるんだけどどう思う?」と彼女に打ち明けたところブチギレられた。 止めて欲しかったとかでもなく悪意なく相談したんだけどめちゃくちゃキレられた。
その後色々あって(以下)→貯金残高30万円はちと不安だし、彼女の家に同棲していたけど契約更新のタイミングで彼女も引っ越すことになったので大阪行くか東京で新居を探すか急かされたし、ゴールデン街でヤケ酒して始発の東武東上線を何ループもした挙句財布を盗まれ免許もクレカも使えなくなって身動きが取れなくなってしまい、結局今いる西荻窪の家に引っ越すことになったのだ。
、、、
という文章が途中まで書かれて保存されていたが一体いつ書いたのか思い出せない。ここからは7月17日に書いている。
「西荻窪の家に引っ越した」の、後は緊急事態宣言が発令されて私も当時の彼女も仕事が休業になり、私の家でほぼ同棲している状態になった。引っ越したばかりだし最初の方は楽しかったはずだけど、狭いワンルームだったし、この頃はデパートも飲み屋も「本当に休業」していたのでお出かけもできないし特にやることもなくだんだんお互いイライラし始めていた。
私は東京から逃げるように大阪の友達の家に向かった。2020年5月のことだがこの時東京→大阪間の新幹線の切符代は金券ショップで1万円を切っていた。私が乗った車両には誰も乗っていなかった。夢の中にいるような不思議な気分だった。こんなことはもう二度とないと思う。と願っている。
10日間くらい大阪の友達と遊んだ。 ことに彼女は激怒していた。「こんな時にブラブラしないでくださいよ」と言われたし、奈良の鹿の写真を送ったら「なんで誘ってくれなかったんですか?」とも言われた。
コロナがきっかけで私たちは別れることになった。この世にコロナが無くても近いうちに別れていただろう。でもこの世界線では全部コロナのせいだ。ということにさせてください。色々迷惑かけてごめんなさい。
そして僕は、途方に暮れる
来週オリンピックをやるということが未だに信じられない。 常に金がないので日雇いのサイトをよく見るが「あの国際的スポーツ祭典の警備!」のバイト募集が増えているのを見て「マジでやるつもりなんだぁ」と少し実感が沸く。 コロナ前は税金を使うだけ使いまくり、ただでさえ狭い東京はもっと狭くなって「この国はいままで経験したことがないぐらいの鈍い打撃を受ける」と思っていた。が、もう世界中に鈍い打撃どころではないパンデミックが起きている。擁護する気は一切ないけど小山田圭吾もバックれたウガンダの選手もどうでもいい。コーネリアス自体は好きだけど、数年後には忘れている。そんなことよりフジロックがオールナイトではなくなったことやリキッドルームでアルコールを飲めなくなったことの方が私にとっては重要だ。ただでさえつまらない世界がもっとつまらなくなってきている。
音楽だけに縋るわけではないけど、少しでも希望が持てるような音楽が相変わらずあった。
10位 韻マン「Change My Life 」
自粛中一番聞いていた曲ってこれだと思う。いつ聞いても身体がスッと軽くなるような曲。散歩中とかごはん作ってる時によく聞いてたなぁ。 韻マンってほぼ音源出してなくてバトルで活躍している人で韻さえ踏めれば意味が通ってなくてもよいタイプの人で
いつかのバトルでゴメスが言ったように接続詞テキトーだし意味がわからないカタカナを多用していて無茶苦茶で「実際音源どーなる?」と思ってたけどいい意味で「普通にいい曲じゃん」って思った。いつ聞いてもいいし、何より聞きやすい!
9位 フィロソフィーのダンス「なんで?」
Especiaとか
初期の東京女子流とか
ディスコ&R&Bライクなアイドルソングが好きだけど、フィロソフィーのダンスはなぜか今までハマらなかった。 色んなディスコチューンから「引用」していて特にCHIC(ゲットラッキーのギター弾いてる人)の影響がデカいらしいけど、
私のツボ的にあんまりピンとこなかったんです。でも「なんで?」はもう曲も抜群にいいし
日向ハルの圧倒的な歌唱力によって「日本に本物のソウルグループが爆誕してしまった」と思いました。聞けば聞くほどおとはすのビブラート効いてない音程不安定な声のほうが気になりすぎてしまうスルメ的な魅力もあります。
8位 藤井風「何なん?」
「なんで?」からの「何なん?」 1年に1人くらいは音楽界に超ド級の新人(例えば崎山蒼志とか)が現れるけど2020年はこの人じゃないだろうか。岡山弁×R&Bのインパクトとこのルックスのカッコよさに引っ張られるけど、よく聞くとモタっとしたリズムとサビ前のスキャットもヤバすぎる。
あと、出身が岡山の里庄らしいけど私の実家は隣町の鴨方なので全く面識ないけど勝手に親近感も感じています。
7位 Jacques 「Dans La Radio」
みんなどうやって音楽掘ってるんでしょうか?私は好きなDJがかけてる曲をひたすらシャザムするとか、好きなハコ(リキッドルームとかWWXとか)に出ている知らないアーティストをググるとかして掘ってるんですけど、もっと深く潜りたいなら「サウンドクラウド」で好きなアーティストがいいねを押した曲をひたすらスワイプし続けるのがおすすめです。 ちなみにこれはLICAXXXがいいねしていた曲で夜中布団の中でこれを見つけた時立ち上がって踊りましたね。
MVもア×ッドやった時みたいなルックでたまらないですね!
6位 tofubeats「RUN REMIX (feat.KREVA & VaVa)」
原曲をリアルタイムで聞いた時、最近「流行ってる短いトラップじゃん」って全然いいと思わなかったんだけど、「アフターシックスジャンクション」で披露したRemixでやっとこの曲の良さがわかったというか、、
これは後付けの悪ふざけ的なものだったんだろうけど歌詞の意味がスッと入ってきたんすよ。
「うかうかしてる間に 時間だけが過ぎた
誰かに呼ばれるまで やめることはない
新しいことはできないし塞ぎ込んでしまう
こんなにたくさんいるのに
たった一人 走る時」
しかもRemix版はVaVaとKrevaとのコラボ。1行1行韻を全部踏んでいるKrevaにも感服。そういえばコロナ渦ではKrevaの後輩とのコラボが盛んでしたね。
5位 MAMAMOO「Dingga」
「こういうのが好きなんでしょ?」ではなく、メンバー一人一人の「私はこれがカッコいいと思ってる!」ってのがビシビシ伝わってシビれた。フェミニズムとかアンチルッキズム運動が盛んですがやっと現れるべくして現れた現代のアイコン。
曲中で祈りのように何度も叫ばれる「Dingga」とは「とにかく楽しもうぜ!」というスラング。「アイスクリーム食べたいなぁ」「酒でも飲もうよ」と基本的にはパリピ的なチャラい歌詞なんだけど、歌詞を全部読むと世界に対する皮肉が溢れまくっていて素敵です。
4位 イヤホンズ「記憶」
イヤホンズという声優三人組のユニットを口ロロ三浦康嗣がプロデュースした曲。
15歳のときの、下駄の音、祭囃子、風鈴、花火。
5歳のときの、信号機、クラクション、エレベーター。
25歳のときの、コンロ、ラジオ、サックス、掃除機。
三浦氏の代名詞である「フィールドレコーディング」という日常の音を組み合わせて音楽にしてしまう手法に合わせて、
三人の声優が一人の女性の「記憶」を三部に別れて歌うんだけど、セリフのようなラップのような不思議なフロウが合わさってとんでもねぇ曲になってる。途中で三連符かましたりとんでもない早口ブッコむところとかスキルフルな声優さんにしかできないヤバい曲。
五輪はやって欲しくないけど音楽は三浦康嗣がやったらよかったのになぁと勝手に思ってる。
3位 舐達磨「GOOD DAY」
初めて見た時ヴィジュアルだけでもくらってしまったけど、lo-fiなビートに乗っかる低音、中音、高音ボイスな三人の心地いいラップが最高に気持ちいい。
舐達麻は非合法なこともやってて現にメンバーの二人は今捕まってしまっているしカルマだらけだと思うんだけど、どっかで見たWEBインタビューで「俺らは悪いことはいっぱいしたけど、罪は償ってるから大丈夫っすよ」って言ってて私はなんかすごいスッキリしたというか心が楽になったんすよね。カルマって一生背負って生きていかなきゃいけないものだと思ってたから。
日本だと京都と千葉で体験できるヴィッパッサナー瞑想というものに私はずっと興味があるんですけど、10日間スマホ、読書、人と会話すどころか目を合わすことすら禁止されてひたすら瞑想をやり続けるらしいですが何日かするとどうしても「カルマ(心にこびりついた嫌な記憶)」が悪夢のように襲いかかってくるんですって。で、どう対処するかざっくりいうと「この世は円でできいている。人間の細胞も小さな円の集まり。円はまわる。生まれてはすぐ消えていく果敢ないもの。だから怒りや悲しみも生まれるけど消えていくもの」と思って瞑想するんですって。
彼らにとってカルマって大麻の煙のようなものであって、吸って吐いたら煙は出てくるけど消えて無くなってしまうようなものって考えてるんじゃないかなって勝手に思ってる。
「昨日今日明日明後日
燃やすスモークのように上がってく
深く吸って 過ぎてくgood day
深く吐いて 迎える good day」
みんながどんどん生きづらくなっている世の中で、嫌なことがあってなにもできないような日でも、「こんな幸せ時間がずっと続けばいい」と思えるような日でも明日は勝手にやってきて今日になる。
2位 Reol「第六感」
すべてのギャンブラーに捧げるアンセム。
これは意味不明だった去年の競艇のCMソング。
このCM自体はさっぱり意味不明でもはや不愉快なんだけど、これは競馬のCMもそう。なんでこうなってしまうかというと公営ギャンブルのCMって「射幸心(「金稼ぎたい!」という気持ち)」を煽っちゃダメなんですよ。ギャンブルってそこが魅力なのにそれをアピールできないから「ボートに関係のない物語」だったり「あの馬は可愛い!」みたいな意味不明なCMばかりになっている。
それでもこの曲自体は「競艇」「賭ける」という禁止ワードを一切使うことなく水の音を使ったりMVでも一瞬競艇場を映したりしてサブリミナル効果的に競艇場を想起させるような仕掛けに溢れていてすごい。
「今が一番若いの 第六感、六感またがって
今日は年甲斐ないことしたいの
予定にないこと 第六感、六感おしえて
物足りないの 引き合いたいよ 偶然とハートしたい」
こんなん聞いたらテンションあがるし「今日はいつもより強気に賭けちゃおうかな!」って思っちゃいますよ。しかも「偶然とハートしたい」って競艇のキャッチコピーまでちゃんと歌詞に入ってて大喜利の回答として凄すぎる。
、、、
ポルカドットスティングレイ「JET」もある企業の広告のために作ったゴリゴリのCMソングなのに微塵もそれを感じさせないのがすごい。
この「途中まで何のことを言っているかわからない仕掛けソング」の元祖は元を辿ると東京事変の「能動的三分間」だと思う。
「第六感」も「JET」も「三分間」も全部「just the two of usコード」だし
オートチューンバキバキに効いた機械的なボーカルだと思ってたけど補正なしの生歌で一切外さずここまで歌えるってもう化け物みたいな歌唱力ですね。
1位 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール「京マチ子の夜」
2020年 私は大変な喪失感を味わった出来事が起こって(失恋じゃない)もう身体が動かなかくなるくらいどうにもできない気持ちになって、誰かに相談できる内容ではないし相談してもどうしようもないことなんだけど、菊地成孔に「今こんな気持ちなんですけど少しでも気が変わるような音楽はありますか?」と相談したら「今あなたのそのメンタリティで音楽を聞いても何も響かないし、そのことを受け入れて生きていくしかないですよ」と言われた。ただ、やることもないし試しにペペ・トルメント・アスカラールにフラっと行ってみたんだけど
「生きてるとたまにはいいことあるなぁー」って久しぶりに思えた。
私は小さい時から母子家庭な上にネグレクト状態の崩壊した家庭で育ったので、デフォルトで孤独だし希死念慮も常にあるし、酒飲んでる時意外暗いしダウナーに入ったらとことん気分が落ちるんだけど、このライブ行ったら幸せで幸せでたまらなくなっちゃったんすよねぇ。
菊地成孔はこのライブのMCで「私たちのバンドの目的は皆様に生きててよかったなと思ってもらえるような演奏をすることです」と言ってて痺れた。
ありがとう死ぬとこでした。「生きづらい」って思ってるだけで全然死なないけどね
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