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#1 教学マネジメント指針について具体的な公表情報と可視化例まとめ

文科省から「教学マネジメント指針」の構造の一つとして情報公表を重要視しています。

各大学が外部に対し積極的に説明責任を果たしていくこと により、在学生や学費負担者、入学希望者等の直接の関係者に加え、社会からの信頼と支援を得るという好循環を形成することが求められる。また、社会からの評価を通じた大学教育の質の向上を進めることが求められる。大学全体の教育成果や教学に係る取組状況等の大学教育の質に関する情報を、様々な角度から示せるよう公表していくことが重要である。

https://www.mext.go.jp/content/20200206-mxt_daigakuc03-000004749_001r.pdf

今回は、文科省から推奨されている情報の中でも、

1 - ①「卒業認定・学位授与の方針」に定められた学修目標の達成状況を明らかにするための学修成果・教育成果に関する情報

大学の教育活動に伴う基本的な情報であって全ての大学において収集可能と考えられるもの(6項目)

について、公表すべき指標、実際の掲載・可視化事例などをまとめましたので、ぜひご活用ください。


「卒業認定・学位授与の方針」に定められた学修目標の達成状況を明らかにするための学修成果・教育成果に関する情報について

その名の通り、学生が卒業時に到達すべき知識・能力を評価するための項目が集められています。
基本的には、以下の2種類に分かれています。

  • 大学の教育活動に伴う基本的な情報であって全ての大学において収集可能と考えられるもの(6項目)

  • 教学マネジメントを確立する上で各大学の判断の下で収集することが想定される情報 (7項目)

 

各授業科目における到達目標の達成状況

公表の意義
学生が、個々の授業科目の履修の結果として「卒業認定・学位授与の方針」に定められた資質・能力を獲得してゆく過程について、全体的な状況を明らかにする

公表することが考えられる内容
同一の学位プログラムに属する学生の単位修得に関する以下の情報
 ・入学年度別・年度毎の平均履修単位数(※)
 ・入学年度別・年度毎の平均修得単位数(※)
(※)必修科目、選択科目及び自由科目で細分化することも考えられる。
(学修時間や学事暦の柔軟化の状況、履修単位の登録上限設定の状況、GPAの活用状況と併せて分析を行い、公表することが有益)
関連する法令等:基準第32条

(卒業の要件) 第三十二条 卒業の要件は、大学に四年以上在学し、百二十四単位以上を修得することとする。 2~4(略) 5 前四項又は第四十二条の十二の規定により卒業の要件として修得すべき単位数のうち、第二十五条第二項の 授業の方法により修得する単位数は六十単位を超えないものとする。

参考:大学設置基準32条

公表する情報の収集等の方法
教務システム等を活用した個々の学生の授業科目の履修履歴の収集

要は、学生が各授業科目を履修することで、卒業時に求められる資質や能力をどのように身につけていくか、その全体的な流れを明らかにするための情報を公開したほうが良いということです。

具体的な公表情報

  • 入学年度別・年度毎の平均履修単位数

  • 入学年度別・年度毎の平均修得単位数

  • 入学年度別・年度毎の単位修得率(上記2項目より算出可能)*

上記の項目を公開することが推奨されています。(*任意)
可能であれば、学部学科別での算出が推奨されます。

参考大学

和歌山大学 | 「入学年度別・年度毎の 平均履修(修得)単位数」(Power BI)
専修大学 | 「入学年度別・年度ごとの平均履修単位数」(Plotly)
 

学位の取得状況

公表の意義
個々の授業科目の履修の結果として「卒業認定・ 学位授与の方針」に定める資質・能力を備えた学生が何人卒業しているかを明らかにする

公表することが考えられる内容
学位プログラムが授与した学位の名称と授与者の数 ・当該学位に係る「卒業認定・学位授与の方針」に定められた資質・能力
関連する法令等:規則第172条の2第1項第1号、 第4号及び第6号

公表する情報の 収集等の方法
学位授与履歴を収集

具体的な公表情報

  • 学位プログラムが授与した学位の名称

  • 授与者(卒業者)数

上記の項目を公開することが推奨されています。
また、学校教育法施行規則第172条の2で公表の義務が明文化されている項目でもあります。


参考大学

関西学院大学 | 「学位の取得状況(卒業者・修了者数)」(Tableau Public)
和歌山大学 | 「学位の取得状況」(Power BI)
関西国際大学 | 「学位取得状況(2023年度実績)」(HTML Canvas)
 

学生の成長実感・満足度

公表の意義
・学生が、「卒業認定・学位授与の方針」に定められたそれぞれの資質・能力をどの程度身に付けられているか等に関する学生の主観的な評価について、全体的な状況を明らかにする
・大学が、ある学位プログラムに所属する学生から「卒業認定・学位授与の方針」に定められた資質・能力の育成に関してどのような評価を受けているかについて、全体的な状況を明らかにする

公表することが考えられる内容
同一の学位プログラムに属するそれぞれの学生の、「卒業認定・学位授与の方針」に定められた資質・能力の伸長に対する主観的な評価の年度毎の平均値及び分布その他の全体的な状況

公表する情報の収集等の方法
学生へのアンケート調査を通じた収集

具体的な公表情報

  • DP 項目に関するアンケート

  • 卒業時満足度アンケート

上記の項目を公開することが推奨されています。

DP 項目に関するアンケートでは、学生の『成長実感度』を感じられたかの質問を問うアンケートを調査する必要があります。そのアンケートは大学によって様々ですが、基本的に「ーー能力が身につきましたか。」という質問形状のアンケートが一般的です。

卒業時アンケートに関しては、大学生活、教育内容、教職員、就職先への満足度を問うアンケート内容が一般的です。

参考大学

和歌山大学 | 「学生の成長実感・満足度」(Power BI)
聖心女子大学 | 「数字でわかる聖心女子大学」
 

進路の決定状況等の卒業後の状況(進学率や就職率等)

公表の意義
進学や就職等を希望する学生の進路状況を明らかにする

公表することが考えられる内容
・学位プログラム毎の以下の情報
・就職を希望した学生数を分母とする就職者の割合
・学生の主な就職先
・進学を希望した学生数を分母とする進学者の割合
・学生の主な進学先
・特定の職域の人材育成を目指すなど、「卒業認定・学位授与の方針」に照らして期待される進路がある学位プログラムにおいては、当該プログラムの卒業生数を分母とする当該進路への就職者の割合及び主な就職先(卒業生に対する評価や卒業生からの評価と併せて分析を行い、公表することが有益)
関連する法令等:規則第172条の2第1項第4号
関連する調査等:「大学等卒業者の就職状況調査1」

公表する情報の収集等の方法
・進路が決定した学生へのアンケート調査を通じて収集
・「卒業認定・学位授与の方針」に照らして期待される特定の進路の有無についてあらかじめ分析した上で、一致の程度について分析

具体的な公表情報

  • 就職率

  • 進学率

  • 就職・進学先

上記の項目を公開することが推奨されています。
また、学校教育法施行規則第172条の2で公表の義務が明文化されている項目でもあります。

参考大学

甲南大学 | 「就職率と大学院進学者数」(Tableau)
京都大学 | 「進路・就職状況」(Power BI)
学習院大学 | 「Employment Data 就職・進学データ」
 

修業年限期間内に卒業する学生の割合、留年率、中途退学率

公表の意義
・厳格な成績評価が行われていることを前提に、大学が、修業年限期間内において学生の資質・能力を計画的に伸ばし、学位の取得まで到達させていることを明らかにする
・履修単位の登録上限設定の状況やGPAの活用状況と組み合わせて分析することで、大学が、密度の高い学修を可能とする環境を提供していることや、厳格な成績評価に基づく質の高い教育を提供していることを示すことができる重要な情報の一つとなる

公表することが考えられる内容
・学位プログラム毎の、各年度における入学者の修業年限期間が満了した時点での卒業者、在学者、退学者の数と割合(公表の際には、単にこれらの情報のみを公表するのではなく、学位プログラムのカリキュラムの在り方や、履修単位の登録上限設定の状況、GPAの活用状況、留学の位置づけといった修業期間・成績評価に関連する情報や、積極的な進路変更(他大学への転学や他学部への転部など)の有無、退学の理由(大学に起因するものと大学に起因しないものの別など)も踏まえた分析を付することが望ましい。)
関連する法令等:規則第172条の2第1項第4号
関連する調査等:「学校基本調査2」

公表する情報の収集等の方法
教務履歴や学校基本調査の調査過程において収集

具体的な公表情報

  • 年限内卒業者数

  • 退学者数

  • 留年者数

  • 年限内卒業率

  • 退学率

  • 留年率

上記の項目を公開することが推奨されています。

年限内卒業率について
春入学と秋入学を合計して算出します。
◯◯年度のデータは、◯◯年度卒業者のデータとして算出します。

算出式:年限内卒業者数(春入学の卒業者+秋入学の卒業者)÷ 入学者数(春入学の入学者数+秋入学の入学者数)
https://www.niad.ac.jp/media/006/201909/20190909_akinyuugaku.pdf

参考大学

和歌山大学 | 「修業年限期間内に卒業する学生の割合、留年率、中途退学率」(Power BI)
駒澤大学 | 「卒業者数」(Tableau)
鹿児島大学 | 「標準修業年限内卒業・修了率」
 

学修時間

公表の意義
単位制度の趣旨を踏まえ、学生が授業内及び授業外で取り組む学修の平均時間を明らかにすることで、学生が、学位プログラムが期待する水準の資質・能力を身に付けるための一般的な前提条件を満たしているかについて、全体的な状況を明らかにする

公表することが考えられる内容
・同一の学位プログラムに属するそれぞれの学生が、当該学位プログラムに関連する授業内外それぞれの学修に費やした時間の平均値及び分布その他の全体的な状況(各授業科目における到達目標の達成状況や履修単位の登録上限設定の状況と併せて分析を行い、公表することが有益)
関連する法令等:基準第21条

公表する情報の収集等の方法
・学生へのアンケート調査を通じた収集
(※)今後新たに調査・収集を行う大学においては、例えば以下のような手法での調査・収集が考えられる。
・学修時間の集計単位:1時間単位での把握
・集計期間の選定:試験直前期や長期休暇期間などを除く平均的な一週間における学修時間
(※)学修時間以外の生活時間の調査についても、学修成果・教育成果の把握・可視化の観点から併せて行うことも考えられる
・教務システム等を活用した個々の学生の授業科目の履修履歴の収集

具体的な公表情報

  • 授業内外それぞれの学修に費やした平均時間

参考大学

和歌山大学 | 「学修時間」(Power BI)
長崎大学 | 「学習状況報告2022」(Tableau)

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