オンライン授業のコツのまとめ (2020年4月27日バージョン)

Facebookグループ「オンライン授業のコツ・知恵・経験談の共有(よりよいオンライン授業を目指して)」に寄せられた情報をもとに、オンライン授業のパターン・ランゲージをつくっていきます。その第一稿として、2020年4月27日までの投稿をもとにしたまとめをつくりました。

教師側のものと、受講する学生(生徒)側のものがあります。

ぜひ、ご自身のオンライン授業の計画・実施にご活用ください。

また、ここに書かれたことに関連したコツ・知恵・経験談がある方、ここにないコツ・知恵をお持ちの方は、ぜひ上記グループの該当欄(カテゴリーごとに書く場所を設けます)にご記入ください。

カテゴリー
(A)授業の計画・設計
(B)授業の環境・設定
(C)授業直前の準備
(D)オンライン環境に慣れる練習
(E)授業のファシリテーションとインタラクション
(F)授業のクロージングとフォロー


■■■ (A)授業の計画・設計

授業運営チーム

教師:全体プログラム統括役のメイン講師(自分)のほかに、受講者の反応などをメイン講師に伝えたり、プログラムの進行をサポートする問いかけをチャットで行なう「講師サポート役」と、ブレイクアウトルームやミュートなどのオペレーションを行う「オペレーション役」の3人以上のチームを組んで授業を実施する(チャット対応やオペレーションに徹するメンバーがいないと、そこに想定以上に時間をとられてしまい、進行が滞る)。

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余裕のある計画

教師:オンラインでは、同じことを伝えようとしても教室のときよりも時間がかかるので、余裕を持った授業プランにする。

オンラインならではの授業

教師:単に教室でやっていることをオンライン化するという消極的な移行ではなく、オンラインだからこそできる授業を考える。

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オフラインとのミックス

教師:授業設計の際には、すべてをオンライン・画面上で行う必要はないので、オフラインにして作業をするなどの時間・工夫も効果的に入れるようにうする。

屋外でつなぐ可能性

教師:授業設計の際には、必ずしも屋内を想定するだけでなく、学びの領域が広がる屋外でつなぐことも、意味がありそうかを考えてみる。

リラックス・モード

教師:みんなでお菓子を食べるなど、リラックスできる工夫をする。いつも誰かの顔を見て話すだけでなく、焚き火を囲むように画像や映像を一緒に見ながら語り合う時間をつくったりするのもよい。

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事前の接続テスト

教師:授業の初回に接続トラブルや操作のことでバタバタしないように、事前に授業スタッフと履修者が接続テストをする日・時間を、事前につくる。授業と同じ曜日の同じ時間帯だと、その時間帯のネット環境の重さもわかるので、ベター。
学生:事前の接続テストに参加し、きちんとつながり問題がないことを確認するとともに、ツールの使い方も確認しておく。

つながるための初回

教師:オンライン授業が初めての人も居たりするので、そういう人へも配慮し、初回はみんながつながることを目的とする。

 
■■■ (B)授業の環境・設定

【みんなのためのイヤホン】

共通:スピーカーで聞いていると、スピーカーから出た音をマイクが拾ってしまい、音が増幅されてハウリングという現象が起きてしまい、みんなの耳を攻撃してしまうので、イヤホンを使う。

【聞きやすさのためのマイク】

教師:聞きやすい音声にするために、しっかりしたマイクを使う。

【広めのディスプレイ】

教師:PCで広めのディスプレイを用いることで、授業に関する資料や提出物をZoom画面などの横に広げて授業をすることができる。

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【安全空間の設定】

教師:パスワードつきの設定にするとともに、接続のアドレスは参加者だけに届くようにして、オンラインの安全な空間をつくる。
学生:アドレスやパスワードなどは授業外の他の人には流さず、自分のところでとどめるようにする。

【一斉連絡の手段】

教師:オンラインツールのサーバーの不調や、教師側のネットトラブルなどで、授業ができない場合や、急なアドレス変更などに備、履修者に一斉に連絡できる手段を別途持っておく。

【受講トラブル時の連絡先】

教師:学生が接続トラブル等の際に、連絡できる・すべき連絡先を明示しておく。
学生:接続トラブル等のときに、連絡する連絡先を把握しておく。

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【黒板専用】

教師:手書きの黒板やホワイトボード使う場合には、講師の映像とは別に、黒板/ホワイトボードだけをずっと映しておくだけのカメラとPCを用意し、それを流す専用のアカウントも用意すると、教師の話している姿と板書を同時に表示できる。

【共有編集ドキュメント】

教師:チャットに書き込むだけでなく、Google Documentなど、みんなが書き込め、編集できるページをつくり、みんなで書記ノートをつくるようにする。

 
■■■ (C)授業直前の準備

【外行きモード】

教師:自宅だとしても、授業・映像に適したきちんとした格好をする。
学生:自分の部屋だからとラフな部屋着で受講するのではなく、きちんとした服に着替えたり、コンタクトレンズをしたりと、授業に臨むモードに切り替える。

【少し早めのスタンバイ】

教師:余裕をもって始めるために、少し早めにアイドリング時間をもつ。(そのときはカメラをオフにし、音声をミュートにしておくのもよい)
学生:きちんと最初から参加できるように、少し早めにアクセスして待つ。(カメラをオフにして、音声をミュートにしておくとよい)

【「これから授業」宣言】

共通:家族や同居人に「これから何時まで授業中です」と宣言し、集中させてもらえるようお願いする。

 
■■■ (D)オンライン環境に慣れる練習

【入室のあいさつ】

教師:入室時に、参加者に、挨拶のひとことと名前を言ってもらうようにすると、出席状況と参加者のコンディションを確認でき、また、オンライン空間に「風通し」が生まれる。(参加者の受講姿勢が受け身から、少しアクティブになるとともに、マイク発話ややりとりの確認にもなる)

【カメラオフ参加】

教師:カメラをオフにして顔の映像を出さない参加も許可とすると、参加のハードルが下がる。

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【基本のミュート】

共通:みんながマイクをオンにしていると、周囲の雑音が入り、話している人の音声が聞き取りにくくなるので、マイクのミュートは基本的にはオフにし、話すときだけ、ミュートを外すようにする。

【話す前のミュート外し】

共通:話すときは、マイクのミュートを外すように注意する。また、話している人がミュートを外し忘れていて、声が聞こえなかったら、「ミュートになってます」と声を掛け合う。

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【大きめリアクション】

共通:小さく頷いても相手に伝わりにくいので、ジェスチャーも入れて、大きめのリアクションを心がける。

【丁寧に伝える】

共通:キーボードの操作を伝えるときには、口語でしっかり動作(操作)や場所を伝える。例えば、キーボードを指差すことができないため、「キーボードの左上にあるESCと書いてあるのを押して」など、サポートセンターの人が電話で操作方法を伝えるときのように、丁寧にしっかりと伝えるようにする。このことは、Zoomのパネルの操作などでも同様である。

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【リアクションの一斉練習】

教師:うなずき、OK, NG, 発言したい!、合意、反対など、リアクションの練習を全員で行う時間をとる。
学生:オンライン上の映像では反応が届きにくいので、恥ずかしがらず、嫌がらずに、しっかり反応するようにする。リアクションの練習も、楽しんで、乗ってみる。

【使いこなしの練習時間】

教師:オンライン・ツールに慣れていない人や、初めての人が必要最低限の使い方を実際に手を動かして体験する時間を設ける(いきなり最初に難易度の高い授業課題が出された場合、それにうまく対応できなかった学生は、オンラインの体験そのものがイヤな記憶になってしまう)
学生:練習のときにきちんと、ツールの使い方に慣れ、わからないところは質問して、クリアにしておく。

 
■■■ (E)授業のファシリテーションとインタラクション

【ラジオ・パーソナリティ】

教師:参加者のリアクションが感じづらいので、沈黙に対する恐怖感を感じてしまいがちだが、焦らず、ラジオ・パーソナリティになった気持ちで話す。ゆっくり話す・間を取る・抑揚をつけるように心掛ける。

【みんなのお便り】

教師:発言や提出物やチャットでの書き込みを、ラジオ番組でお便り(葉書やtwitterでの書き込み)を取り上げるように取り上げることで、履修者との時間差のインタラクションができる。
学生:この番組はお便りをもとに進行しているという意識で、躊躇せずに、どんどんお便り(発言やチャット書き込み)を送って参加するようにする。

【その場でのライブ感】

教師:準備しすぎるとライブ感がなくなり面白くなくなるので、授業内容は事前にガチガチにはつくり込まずに、そのときの状況を見ながら、臨機応変にアレンジする。

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【今日の見通し】

教師:毎回の授業の最初に、授業の目的、学んでほしいこと、進行の見通しを示す。

【こまめなブレイク】

教師:長くならないように、こまめに休憩時間を入れ、メリハリをつける。

【遅れずに戻る】

教師:休憩時間のあとの開始時間にはぴったりみんな集まるように促し、遅れる人を待たない。
学生:休憩時間からは、遅れずに戻る。

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【書いて飲み込む時間】

教師:参加者の状況はよく見えないが、授業の内容をノートに書いたり、情報を飲み込む時間をつくるようにする。
学生:オンライン授業でも、重要なところをノートをとったりして、自分のための記録をつくる。

【画面からの解放】

教師:画面越しにレクチャーや対話をするだけでなく、モノをつくる、メモを取るなど、画面から離れて行えるワークを入れる。また、デバイスから離れていいという時間をつくり、その場に居続けなければならないという息苦しさから解放するように心がける。

【共有タイム】

教師:講義を聴くだけでなく、自分の見方や考え方を参加者同士で共有し合える時間をとる。問いは、何か正解を出すようなものより、気になることや考えを尋ねるようなものがよいだろう。

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【発言を引き出す投げかけ】

教師:「何か質問ないですか?」と問うのではなく、指名して質問を引き出したり、全員に順番に発言してもらったり、質問をチャットに書いてもらったりと、発言を引き出す工夫をする。突然指名されると戸惑うので、事前に当てておいたり、毎回同じ順番で全員が発言するようにすると、心構えができるのでよい。

【チャットで拾う】 

教師:学生に、音声で発言するだけでなく、チャットにも反応を書き込んでもらうようにする。
学生:他の人からは反応・表情はわかりにくいので、キーワードや重要だと思った点、感想、関連する情報などをチャットに書き込む。

【チャットのつなぎ役】

教師:TA(Teaching Assistant)やSA(Student Assistant)などにチャットから話題・情報を拾う役割をもってもらう。
学生:TAやSAにかかわらず、チャットに重要な話題・情報があれば、それを拾って、音声で発言して、教師に知らせたり、議論の遡上に乗せたりするようにする。

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【確認の雑談時間】

教師:授業のなかでこれからやる作業や課題について、参加者が理解できているか不安に思ってもそれを解消できないので、数人での雑談確認時間をつくって、理解を確実なものにできるようにする。
学生:授業内の作業や課題については、雑談確認時間の間に理解を確実なものにする。


【数人で取り組む課題】

教師:課題に取り組んでもらうときには、2、3人ひと組(バディ)で助けあって取り組めるようにする(うまく対応できなかった学生は、オンラインの体験そのものがイヤな記憶になってしまう)。
学生:バディのメンバー同士で教え合い助け合い、みんなで課題に取り組む。

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【小・中・大のグループ展開】

教師:読んできた文献について話し合うようなときに、ブレイクアウトルームで3人くらいに分け、まずは少人数で話したあとに、ブレイクアウトルームを10人くらいの中規模の人数に振り分け直し、その人数で話し、最後は全体(数十人など)で話すという段階を追うと、徐々に、話の内容を深化・発展させるのを促すことができる。

【共感から発見へのレベルミックス】

教師:「小・中・大のグループ展開」をするときには、最初の小規模のグループのときには、経験・知識の度合いが同じレベルの人にする。そうすると、「ここが、わからないよね」、「難しかったね」ということを共感できたり、いきなり高度な話し合いもできる。そして、中規模に拡大したときには、いろいろなレベルの人が混じるようにする。そうすると、そのレベル差のなかでの学びや発見がある。その後、最後に、全体で話すときに、その学びや発見を共有するようにする。

 
■■■ (F)授業のクロージングとフォロー

【アナウンスしてからの記念撮影】

教師:オンライン授業の様子を撮影したいが、個人情報の問題に注意する必要がある。そこで、「公開用の集合写真を撮るので、写ってよい人はビデオをオンに、写りたくない人(カメラがない人を含む)はビデオをオフに」と言っておいてから、「はいチーズ!」でスクリーンショットで記念撮影をする。名前は後でPhotoshop等でぼかす。これで、個人情報を考慮した、本人の同意の上での活動記録写真を撮ることができる。

【達成感のクロージング】

教師:授業のおわりがあやふやだと、気持ちが切り替えられなかったり、次の授業に移れなかったりするので、「今日の授業は終わり」としっかりわかるように伝え、「達成した」という感覚をみんなで共有してから終える。

【チャット記録】

教師:チャットにおける発信や対話のログを編集して、履修者に紹介・共有する。
学生:授業のログになるように、チャットに自分の学びや発見を書き込む。

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以上です。

参考になるものはどのくらいありましたでしょうか? ぜひ、ご自身のオンライン授業の計画・実施にご活用ください。

そして、ここに書かれたことに関連したコツ・知恵・経験談がある方、ここにないコツ・知恵をお持ちの方は、ぜひFacebookグループ「オンライン授業のコツ・知恵・経験談の共有(よりよいオンライン授業を目指して)」の該当欄(カテゴリーごとに書く場所を設けます)にご記入ください。

                         井庭 崇(いば たかし)
                    慶應義塾大学 SFC 総合政策学部教授
             慶應義塾大学 クリエイティブ・ラーニング・ラボ代表


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