見出し画像

『微分・積分を知らずに経営を語るな』内山力、PHP新書

 何冊か微分・積分に関する本を読んで、ようやく数Ⅲのテストで60点はとれるかな、ぐらいになったと思ったので、さっそく応用問題みたいな本を読んでみました。経営の数字の変化をデルタ(微分)にキャッチし、その変化をつなげて(積分)、将来を読んでみよう、という感じの本。

《文系世界の中で結構〝数学的〟なのが法律です。法律は、企業内のように〝特定のメンバー同士〟が話すわけではないので、解釈が分かれないようにしっかりと定義してい》るが、将来見通しに関しての共通言語は数学だ、と。《数学を考える学者たちは、すごく論理的で、計算方法や法則を見つけたりする時に、いろいろな論理テクニックを思いつきました。そしてそれを学者らしく皆で共有していきました。彼らはこうして「論理学」という数学の一分野を築き上げてしまいました》が、《この議論に数学者たちも加わり、その論理性でまわりを論破してしまいます。こうしていつの間にか哲学的論理学は消え、論理学は数学にのみ存在する学問となりました》というは、文系的には寂しい話しですが、まあ、真実だな、と。

 《数学の世界では、このように複雑でごちゃごちゃしたものを、すっきりとして単純なものに変えることを、「正規化」といいます。頭の柔らかい人は、まずは単純な例(非現実的といってもよいもの)で考えて、それを〝一般化〟(現実の話に戻す)していこうと》するものだ、と。

 微分の「微」には薄く削ぐという意味があって、differentialを微分と訳した明治期の学者さんは、漢文の素養も相当あったな、と感じるというのは前も書きましたが、《積分は、分かれているもの(分)を〝つなぐ〟(積)という意味です。積分は、微分の反対にデジタルをくっつけてアナログにするもの》というのも分かりやすい。

 《「コンピュータで最大値、最小値を出す」というのは、ビジネスのありとあらゆるところで適用されており、微分の基本的な活用法》であり、商品のピーク、ロングテールも見きわめられる、と。それは《成熟期の時間を長くしていくことの大切さがよくわかると思います。 また、衰退期も意外と面積(売上)が大きいことに気づきます。「日が経って売上が落ちても、企業への貢献度は高い」》ことを理解すべき、と。

《「偏差を2乗してその平均を取り、その平方根(ルート)を取る」――これが標準偏差の定義です》が、《この〝標準偏差を小さくして在庫を減らす方法〟は、あちらこちらでよく使われます》と。これによって《ムダ(欠品、売れ残り)、ムリ(欠品率)、ムラ(標準偏差)》を減らすために微分・積分を用いる、と。

《統計は、「わかっているデータを使って、わからないデータを推定する」というもの》という定義も改めて言われるとなるほどな、と。

 マーケティングだけでなく、微分積分は品質管理にも応用できます。新商品のテストをやめて製品として出荷するやめ時を品質基準といいますが、テレビCMなどで「厳しい品質基準をクリアした製品」と宣伝されるのは、リスクを排除できないから。ゼロリスクの代わりの概念が品質基準であり、それは「我社には不良品は一切ない」と宣伝することは不可能なことだから、と。

 しかし、各社が品質基準を低くしたら、問題なので、社会全体としての品質基準の合意が求められることになり、その合意の代表がISO9000(国際標準化機構によって定められた品質基準)というのも分かりやすい説明。

 設備的視点からすれば「初期故障期間をテストにあて、偶発故障期間に入ったら出荷し、この間は保守契約(おカネをもらって故障を直す)を結ぶ。そして、摩耗故障期間に入ったら買い替えを促す」ことが最適であり、《この設計仕様÷絶対満足を、仕様適合度といいます。こうすると、顧客満足度を上げるということは、「仕様適合度を上げること」と「品質÷価格を上げること」の2つ》だ、と。

 対数の説明はマグニチュードから。《人間が外から受ける刺激は対数的だといわれており、マグニチュード(地震)、デシベル(音)などは 10 をベースとした対数を使っています。マグニチュードは地震の揺れが「 10 倍になると1増える」という〝感じ〟》というのは知らなかったな、と。

《ビジネスの世界では、シャノンという数学者が情報の大きさである情報量を定義する時、これを〝びっくり度〟(それを聞いて〝驚く度合〟。情報量が大きいと「ヘー」と思う。小さいと「やっぱり」と思う)として、2をベースとした対数を使ったのが有名です》というのも知らなかったw

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?