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『幸せに生きる力』をつける場所

 念願叶い、HILLOCK初等部(世田谷校)に初訪問。
 直ぐにでも言語化しておきたい、と思ったので、思いのまま書き下ろしました。粗削りのままですみませんが、読み返してみると、なかなかいいアウトプットになっているかと。

 HILLOCK初等部は、2022年4月に世田谷区砧公園近くに1校目を開校したオルタナティブスクールです。現在は代々木にも校舎があり、来月2024年4 月には井の頭公園近くに吉祥寺校も新規開校することになっています。

 今回、スクールディレクターである簑手章吾さん(みのさん)に最高の機会を頂きました。1日訪問させて頂いた様子を思い出し、感じたことと共にー。

1.『どうしても制度』

 今回の訪問で、ヒロックの流儀として一番感銘を受けたこと。それが、『どうしても制度』です。
 ここでは、多数決の形で合意形成をしない仕組みになっています。
 物事を決めるときに、人数が多い方で決定するのではなく、ひとり一人の思いをしっかり尋ねていく。『どうしても』という思いの強さを、表明させる。時には子ども達同士の 『どうしても』がぶつかるときもある。それを話し合いの場で【皆が気持ちよい思いをするためにどう合意形成を図るか】。そこに対話と学びの場を求めるのです。
 ↓ 以下の簑手先生の記事に詳しく書かれています。

2.みんなが対等な立場 〜サークルタイム・みな同じ目線で語らうから自分ごとになる〜

 前項であげた『どうしても制度』がここにも関わってくるのですが、学校でいう生活指導にあたる部分で1つ考えさせられた場面が。
 1日の流れ、ラストは掃除の時間。ある1人の子が、掃除の自分の役割をせずにふらふらとしている、ということがありました。

 ヒロックには、1日の始まり、終わりに『サークルタイム』とよばれる雑談の時間があります。全ての子どもたち(ヒロックでは、co.ラーナーとよびます)と先生が一同に介して円を作り、1日の流れの確認や振り返りを行います。
 そして、日々の生活での悩みや思いを打ち明け、改善点を話し合う。みんなでよりよい方向に向かっていくのです。

 ある男の子が言いました。

『○○さんが、掃除をしないでいました。したほうがいいし、僕はして欲しかったと思います』

 そんな要点の発言をしたのです。こうなると、教師としては、

『○○さん、ちゃんとやらないと駄目だよ。みんな掃除せず汚いと困るし、が周りも迷惑してしまうよね』

 と、その子に指導をいれてしまうでしょう。私がこの場面だったら、もしかしたら全体の前で言ってしまうかもしれません。
 そこで、蓑手先生が最初に意見した子にこうおっしゃっていました。

ありがとう。そうか、どうだろう。その気持ちって"どうしても"なの?

 と。(言葉尻違うかもしれません、すみません!)そこから。その意見を出してくれた男の子は、

『ううん、、どうしてもではないかな。でも、気持ち的にはしてほしかった。みんなでやればもっときれいになると思うし…(以下略)』

 のように、自分の気持ちを吐露し始めます。蓑手先生が「どうしてもなの?」と聞いたのは、絶対そうしないとだめだよ!と誰かの気持ちを押し付ける形にしないーのような側面もあったのではないかな…。
 その気持を聞いた、指摘された子。

『でも、掃除って実際好きではないんだよなぁ』

 その後クラスで、この件に関して、自分の気持がどうなのか、しない人がいると周りの気持ちがどうなるのか。掃除をみんなでするとどんなメリットがあるのかー。などクラスでのディスカッションがはじまるのです。ラーニング・シェルパ(先生)のみのさん、まーてぃ、たっちゃんはキャッチボールの中継点に徹しています。
 単なる生徒指導で終わってしまうと、さもすると「なんだよ先生め」となってしまうでしょうが、ヒロックでは皆が心地よく暮らせるように、思いを共有する場が毎日設けられている。自分たちで解決できるようにもっていくわけです。その経験1つ1つが共同社会の中で「幸せに生きる」につながっているなと思いました。
 自分たちで高め合うえる関係性。だんだん子どもたちだけでそれができるようになっていくだろうな、って感じられるような議論をしていて、子どもたちを尊敬してしまいました。

3.ヒロックでいつの間にか得ている宝がある

 今回ご一緒した教育関連の企業の方がおっしゃっていたことで、なるほどと思ったのですが、このようにヒロックで子どもたちが普段からしていることって、一般企業で新入・若手社員が研修を経ながら必死に獲得していく【ビジネススキル】に他ならない、ということです。特に、

 サークルタイムでのコミュニケーションでの課題解決。
 自由進度学習での自己調整、課題・経過・振り返りのPDCAサイクルを通じたプロジェクト管理と自己成長。

 学校で教科の授業を受ける、無意識に過ごすだけでは身につき辛いソフトスキルが、ヒロックの『日常』から育まれているのです。社会へつながる学びができている。
 そんな日常を送る子どもたちが羨ましいし、我々学校教員もそんな場作りを目の前の児童生徒にしていかなければ、と思いました。

4.理科・社会領域の時間 〜先生のファシリ力から学ぶ〜

 午後の時間は、シェルパ2人がそれぞれテーマを設定し、ここでは1・2年生/3・4年生相当と学年に分かれ、理科・社会領域の学びが展開されました。この日はシリーズの初回。テーマは低学年は【火(燃える)】について。高学年は【溶ける】についてです。
 教科書はなく、最終的な学習指導要領で習う最低限度の知識、考えがおさえられるように内容が吟味されているとのこと。

 シェルパの2人はまず、それぞれ【火】【溶ける】から連想されるものごとや事象を、会話しながらどんどん聞き出し、内容を紡いでいきます。その中で、触れさせたい内容が入れ込めるときはこちらから出していくこともある。とにかく、ファシリ力がすごい。言葉では説明難しいけど、ほんと自然な感じ。皆にも見て欲しい。

 初回の授業から、早速実験も始まりました。ビーカーに水を入れ、身の回りにあるものを水に溶かしだします。
 区・地域のゴミの分別表が登場し、それを見ながら、「燃える」ゴミってどんなやつ?って考えたりしてます。実際に目で見て確認する、を大事にしています。

【溶ける】
 教室内にあるものから水に溶けるかな?思うものを持ってきて、実際に水に溶けるかどうか確かめていました。溶けるとはどういうことなのか。ものは水があれば無限にとけていくのか。水の温度をあげたらどうなるのか、時間をおけばとけるのではないかー など。

【火】
 燃えるってどういうことか。火が移れば燃えてるということ?燃えると溶けるは違うのか。燃える・燃えないものはどう分かれるのか。ゴミの分別表にはどう書いてあるか見てみようー など。

 教科書にあることを全て、順番に教えていこう、ではなく、あくまでも子どもたちの気付き、発言から授業をつむいでいこうという流れがすてきだなと思いました。
 「網羅(coverage)」と「看破(uncoverage)」という考えがあります。
 教科書すらも、学習の目的に対応するための1つの資料(『看破』の考え方)。今回の時間を見て、そんな柔軟な立ち位置で授業を考えられるスタンスでいたいなと思いました。

5.教室掲示の1つ【できごと年表】の深さ

今回お世話になった先生方と共に。みのさん、まーてぃ、たっちゃん、ありがとうございました。

 この写真の上方に映っている掲示、見えるでしょうか。数直線のようなものの途中に、1630  360°とか、紙が普及、とか書いてあります。そう。これは年表です。

 日々の学習で出てきた知識事項を、その概念が登場した年号の数字の部分に掲示するのです。何かはすぐ分かったのですが、思いを聞きたいモノだったので、蓑手先生に伺いました。このような意味をもたせた仕掛けだそうです。

・学校の授業で習わないと定着しない【数直線】的な考え方、見方を日々見て身につけさせる(右に行くほど大きい数、年号だと後)
・知識事項をタテヨコ両方でつなぐ(例えば、「紙」が一般に普及する前に「モナリザ」の絵は描かれているんだ、となり新たな探究、問いにつながる)

 深いですね。教科横断歴史的なものの見方が無意識に身につく。
 私もいつか取り入れてみたいなと思いました。

6.まとめ

 今回の機会は、先日のイベントで知り合ったmath channelの渡辺さんに声をかけていただいたことからはじまった1日でした。(渡辺さんありがとうございました!)
 授業をする時間も頂き、【ナインブレイク】という算数ボードゲームを紹介させて頂きました。(みなさんもぜひ検索してみて下さい。)

 自作用テンプレプレゼントします!これを印刷してラミネートなどすれば使えます!こちらは授業でつかったゲーム説明スライドです。見ればなんとなくルール分かりますか?ね。この時期なら、慣れれば1年生でもプレイ可能でおすすめです。頭使います。

セットを自作。

 子どもたちが帰ったあと、3人の先生方と意見をシェアするサークルタイムの時間を頂きました。私が話しさせていただいたことをもってまとめます。

 ヒロックは、子どもたちが、先生にあれこれを習うために学校に来るのではない場所なんだな、と感じました。
 得ていくものは一緒かもしれないけど、それが濃密だなと感じたし、その理由は【子どもたちが学ぶ必然性を感じて】【子どもたちから矢印が伸びてきて】得ていっているからだな、と思います。
 ラーニング・シェルパの立場、それは、もとの意味であるヒマラヤ登山ガイドからも分かる通り、知識やスキルをおしつけて教えるのではなく、学び取りにいきたくさせる。こんなのもあるよと紹介して興味をもたせると共に、自然とそれらを持って帰らせることができるような【環境・学びの場づくり】に徹する立場をされていると思いました。

 我々が行っている学校教育。土台の環境設定が違うし枠もあるので、全てを取り入れるのはもちろん難しいですが、参考にしていける部分はたくさんあると思います。
 これからの実践・教育に活力を与えてくれる1日となりました。

 この記事を読んだ皆さん(ぐわーっと書いた結果、結局原稿用紙10枚分以上笑)もぜひ機会があればヒロックを訪れてみて下さい。もしよろしかったらご一緒しませんか?
 私も、代々木や新しい吉祥寺の校舎にも行ってみたいなと思います。
 飛び込んでみないと得られないこと、絶対ありますよ!

 この記事公開当日(2024/3/8)の19時より、HILLOCKラーニングシェルパのまーてぃくん、私と同じように先日ヒロック見学を行ったひぐま先生と、Xのスペースで話します。(こちらのアドレスから)

 もし時間ある方いましたら聴きにきてくださいませ!

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