途上国の災害緊急援助をAmazonで注文・配送したらどうなるか? (By The Povertist)
Original article: The Povertist
18 August, 2016 by Ippei Tsuruga
Amazonが自社専用の貨物機を導入
「Amazonがついに自社専用の貨物機を導入して運用を開始」というニュースを目にしました(編集者注:本稿のオリジナル記事公表は2016年8月)。同社はすでに「自社専用の輸送機20機のリース契約を結んだ」様子。ロジスティックスを一元管理することで、コスト削減と配送スピードを改善することが狙いと報じられています。
ただ、Amazonがロジスティックスを一元管理することになると、「効率化」だけでなく、いろいろな新しい可能性が頭をよぎります。特に、開発途上国の緊急援助に関しては「大きな革命」が起きるのではないかと思っています。
緊急援助物資をAmazonで注文して直送できればおもしろい
インターネットの普及によって、オンラインで買い物を済ませることが多くなりました。その中でもAmazonは世界最大手で、誰もが一度は生活用品を注文したことがあるのではないでしょうか。
ところで、開発途上国に対する援助のアプローチには大きく2つあります。人道支援と開発援助です。この内、人道支援は災害や紛争の影響で避難生活を余儀なくされる人々へ一時的かつ迅速に行われるものです。そのため、「物流(ロジスティックス)が命」の分野です。
今回の話とどこに接点があるのか?
あらゆる生活必需品を世界各地で在庫管理しているAmazonが物流を自社で管理すること。緊急援助でAmazonと援助機関が連携できれば、潜在的な可能性は計り知れないものがあると思います。
日本の緊急援助はこうなっている
日本の緊急援助はJICAが担っています。JICAの緊急援助物資は、決められた物資リストに基づいて、世界各国の備蓄倉庫に常備されています。世界食糧計画(WFP)の倉庫を間借りしている場合もありますが、シンガポール、マイアミ、ドバイ、アクラ、マジュロ(マーシャル)、マルキョク(パラオ)に保管庫があります。
災害が発生すると、現地政府の要請が日本政府に届き、JICAが物資放出の調整を開始します。たとえば、中南米地域で災害が発生した場合、基本的にはマイアミの倉庫から物資を届けることになります。その際、JICAは自社の貨物機を保有していないため、民間機をアレンジすることとなります。チャーター便をアレンジすると思われている方も多いようですが、基本的には通常運航している民間の通常便に物資を載せることになります。
ここにある課題は何か?物資供給元、倉庫管理会社、民間航空会社など複数の会社が介在し、緊急援助は成り立っていることです。迅速性最優先させる必要がある分野では、関係者が増えれば増えるほど事務コストと時間がかかります。
Amazonが緊急援助に関与するとどうなるか?
世界各地にアマゾンは自社の倉庫を持っています。そして、常時生活必需品を有し、航空便も自社保有することになりました。JICAのような緊急援助実施機関が、一連業務を一貫してAmazonを通じて実施するとどうなるか。緊急援助業界では、かなり強力なパートナーとなりうると思います。
前述のとおり、JICAの物資リストは事前に決まっていますから、それに基づいてAmazonが調達すればよいことになります。そして、物資放出の際には、自社便で最速で届けてもらう。拠点に関しても、世界中に倉庫を抱えているので、より近い倉庫からの物資搬入が可能になる気がします。
具体的に検討をすれば、さらにいろいろな可能性が出てくる分野だと思いながら、ニュースを見ていました。
(編集者注:更に掘り下げた記事が読みたい方はこちらへ→「途上国の国際緊急援助物資供与はこう変わる?一問一答」)
※The Povertistは、開発途上国の貧困問題を深掘りするオンラインマガジンです。(提携先としてi&i Impactが転載している記事以外を読みたい方は上記バナーから。)
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