【ある日の葉書】2022.6
冷たい足うらをくすぐる海辺のかけら
形にならないかけらを拾う
拾い集めて数えて捨てて 拾って捨ててまた数える
貝殻からこぼれ落ちるように
記憶の中にすみついているひと
手の届かない場所にいるのに
心に響く音楽をなびかせるひと
永遠に近いひとは
何度も彼方の海へ呼び返す
「ほら聴こえてくるでしょう?」
あらかじめ失われた恋人は
ばらばらになった海砂の一部だ
どれほど腕のある画家も写真家も
一生描写できない静物があることを
あなたを通じて知ってしまったとき
投瓶通信の差出人は足あとを残さず消えたのだ
渚がそれを消していったのだろう
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