京都水族館に行ったら、水族館嫌いの僕が、水族館を好きになった話。
高専の後輩に誘われて、京都水族館に行ってきた。
タイトルの通り、僕は動物園や水族館が嫌いなところがある。小さな檻や小さな水槽に閉じ込められた動物たちがなんだか不自然でぎこちなく感じてしまうからだ。「人工」に押し込められた様子に勝手に感傷的になってしまう。
そう思ってしまった時は「ここは研究施設である」と言い聞かせて施設を肯定しようとする。生物たちの研究施設を覗き見ている、そう思うことで罪悪感というか、そういうネガティブな感情を殺せるからだ。
魚ではなく、子どもの写真でお出迎えをする京都水族館。
入場券を見せて中に入ると、オオサンショウウオが展示されていた。テンション爆上がりである。思っていたより大きい。写真を撮るのを忘れるくらいわっきゃわっきゃしてしまった。全長1.5mにもなるオオサンショウウオの群れは圧巻だった。
オオサンショウウオのコーナーを過ぎると、外に出てアザラシとアシカのお出ましだ。優雅に泳ぐアシカたち。(ここも写真を撮らず、はしゃいでいた。)しばらくアシカの泳ぎを眺めたあと、アザラシの水槽の前に立つ。身体の斑点が数えられそうなくらい近くを泳ぐアザラシ。これまたしばらく見とれてしまう。
スロープを上がると上からアザラシとアシカの様子を見ることができるスペースがある。アザラシが一匹、日向ぼっこしていた。乾いたアザラシの毛は全体的に泳いでる時の色と全く違う。気持ちよさそうに昼寝をしているアザラシにつられてこちらもぼーっとしてしまう。
このスロープの壁にこんなボードが貼られていた。
プロに依頼したものではなく、飼育さんが描いたと思われるアザラシの絵。下手ではないけれどめちゃくちゃ上手いわけではない絵が愛らしい。それぞれの紹介文は今日訪れただけでは決して分からない、それぞれの性格について書かれている。飼育員さんの愛らしいタッチが良い。
奥にはアシカのボードもある。
僕には全く見分けの使ないオットセイたちにもそれぞれ名前があり、それぞれの性格がある。
「プールが大好きすぎて出てこない事がある」あおばちゃん、最高じゃない?
クスッとするような茶目っ気溢れる飼育さんの記述が、この水族館での時間を凝縮していて、アシカたちのことをどんどん好きになる。
水族館には展示されているお魚さんの生態の説明が書かれてあるイメージだったのだけれど、京都水族館にはほとんどそういった学術的な記述が見当たらなかった。
こんな感じで、写真ではなく絵で紹介されている。この絵たちも素敵なんよな〜。
イワシの群れやエイ、アジ、タイなどをしゃがみ込んで眺めていると子どもがガラスに駆け寄って「ヒラヒラしてる〜」とガラスの前でヒラヒラを表現するために腕を振って踊り始める。
「うわぁ!僕に近寄ってきた!」
とさらに声をあげている。かと思いきや静かになってジーッと眺めたり、子どもは忙しいな。
デカい水槽を抜けるとペンギンコーナー。
飼育員さんがちょうどご飯を上げていた。
「さくらが食べました!!」
飼育員さんが魚をあげたペンギンの名前を呼んで、別の飼育員さんがそれを記録している。
ペンギンの食べる姿が可愛いのはもちろん、僕が何よりも惹きつけられたのは飼育員さんのイキイキした声だった。飼育員さんと呼ぶのが憚られるくらいエンターテイナーだった。
京都水族館はお魚さんやペンギンさんと同じくらい、ここで働く人々が魅力的なのだ。
あのアザラシのボードもそうだし、
ペンギンたちの相関図や
クラゲ別のキャラ診断があったり、
飼育員さんのマル秘メモが書かれたクラゲの大図鑑があったり、さらには「京都クラゲ研究部」というのが一角にある。
クラゲを研究している人ところを覗き見ることができる。
この水族館で働く人々がどうすればお客さんを楽しませることができるか、そんな工夫が色んなところに散りばめられている。
漁師さんから頂いた珍しい白いナマコのエピソードがあったり、(しっかり小ボケつきの。)
手書きの生態の説明があったり、
アナゴの生態の説明動画がプロジェクションされてたり。
ほんとに色んなところでスタッフさんの楽しませようとする気持ちを感じられるのだ。
細かいけれど、クラゲの名前が平仮名で書かれていたのが僕のお気に入りだ。
本当に色んなところで遊んでいる。
「近づくと、もっと好きになる」
スタッフさんたちの姿勢がこの一文に表れているではないか。入った時に読み流したこの文章が帰り際、全く違った質感を持っていた。
自分たちが大好きな水の生物たちをどうやったら好きになってくれるのか、その真摯な姿勢に僕は心打たれてしまった。
水族館が嫌いだった僕は、水族館が大好きになった。
帰り際ショップコーナーにあった「マフラーを付けたオオサンショウウオのぬいぐるみ」がめちゃくちゃ欲しくなった。財布の中身を見て、諦めた。
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