ベンチプレス最強の俺が異世界転生してもやっぱりベンチプレス最強だった件 〜異世界転生人 言田〜

ブーブーブー!

朝からバイブレーションの音が響く
「ん…もうこんな時間か…」
いつものように言田は大胸筋がバイブレーションする振動で目覚めた。

まったく俺の大胸筋ってやつは触ってよし、挙げてよし、震えてよし、の便利なヤツだナ…そんな風に思いながら言田はスマホを覗き込む。

「hey 今日の天気は?」
『今日の天気は晴れ。ベンチプレスには最適な日ですよ。』
と大胸筋が答えた。

カーテンを開くと外はどしゃ降り
「おいおいどしゃ降りの雨だぞ」
『言田さまの天候に"雨"はございません。常に晴れでございます』
「ふん…わかってるじゃねェか。とりあえずジムに向かうぞ」
『かしこまりました。』

大胸筋はそう答えると、鍛え上げられた僧帽筋を傘のように広げた。

「今日も世界は?」
『言田さまの為に回る』

言田はニヤリと顔を歪ませると、ドアを開きジムに向かうのだった。


言田が道を歩けばそこはランウェイ。
「すごい身体だ…」
「プロレスラーか!?」
「おかあさん おしりがおむねについてるひとがいるよ」
「こら!あの身体はR15だからまだ見ちゃだめ!」
「CG!?」
「ベンチプレスの妖精…?」

しかしそんな声は言田の耳には届かない。
自身で作詞作曲歌唱した「BIG3はKOWARENAI♬」を爆音で聴きながら歩くのが、彼のSTYLE。

BIG3はKOWARENAI♬
作詞作曲歌唱
🐼言田泰宏 Yasuhiro Gonda🐼

俺はやるぜベンチプレス
プレートの音ならウェディングベル
向かう足取りベイビーステップ

どちらを選ぶハイアンドロー
もちろん俺ならハイだろうよ
ベンチプレスは最&高
ベンチプレスはダイヤモンド
誰にも壊せない最強硬度

ベンチプレスはKOWARENAI
出来るもんなら壊してみせな

俺はやるぜデッドリフト
ジムの中ならエゴイスト
ダンベルぶん投げるクソテロリスト
渡しとくぜウィットティッシュを
マナー違反にボディーブロー

どちらを選ぶハイアンドロー
もちろん俺ならハイだろうよ
デッドリフトは最&高
デッドリフトはダイヤモンド
誰にも壊せない最強硬度

デッドリフトはKOWARENAI
出来るもんなら壊してみせな

俺はやるぜスクワット
ライバル共が群雄割拠
俺の動画で渡す手榴弾を
見ればお前ら救急搬送
全てさらけ出すトゥルーマンショー

どちらを選ぶハイアンドロー
もちろん俺ならハイだろうよ
スクワットは最&高
スクワットはダイヤモンド
誰にも壊せない最強硬度

スクワットはKOWARENAI
出来るもんなら壊してみせな


言田がその巨体をベンチにごろんと横にし天井を見上げる。
少し目を閉じると浮かんでくるのはいつも自身の幼い頃。

子供(ガキ)の時分
───────────
紙を張り合わせ
──────────
又、張り合わせ
──────────
何枚も何枚も
──────────
何枚も何枚も
──────────
夢中になって書き続けた・・・・・・・
─────────────────────────







いつか必ず
ベンチプレス
になると信じていた


この話を思い出す時いつも言田は笑みを浮かべてしまう。
子供の頃の自分が愚かだったから、ではない、今も最後の”ス”を探し続けているから。

自身は今も”ベンチプレ”であり”ベンチプレス”に到達出来ていない

そんな怒りに似た衝動が自身の中に湧き上がるたび、言田は目の前の200kgを軽く超える鉄の塊をブチ上げる。怒りを焦りを打ち消すように。


ジムで汗を流すと言田は夕暮れの街を歩いた。ちょうど良い気温だ。
なにか食べよう。タンパク質が多いものが良いな…と横断歩道で立ち止まった時、言田の横から子供が飛び出した

「危ないっ!!!!」

周囲のその言葉より、言田の肉体の方がはるかに速く動き出していた。
「”ス”を見つけたかったな」そんなことを思いながら、言田は静かに目を閉じたのだった。



言田が目覚めた時、そこは森の中だった。




ついに異世界転生をしたところですが、飽きたので最初に書こうとしていたストーリーを箇条書きにして終わります。

・ゴブリンが美女を襲うところに遭遇する言田
・そのゴブリンは木で出来た粗末なベンチ台でベンチプレスを美女の眼の前で行う
・それを見た美女はゴブリンの言われるがままにされそうに
・言田は美女を救おうとするが美女は「”力比べ”で負けたものは勝ったもの言う通りにしなければならない」という絶対の決まりがある事を言田に伝える
・言田は今まで命と人生を賭けてベンチプレスをしてきたつもりだったが、本当の意味で命を賭けたベンチプレス(この世界では力比べ)を行う事になる
・想像以上にゴブリンの力は強く、簡単に持ち上がる重さでは無かった
・諦めそうになった時「・・・いか」「力が・・欲しいか?」と大胸筋が話しかけてくる。直感でこれは俺が探していた”ス”だと確信
・”ス”を見つけついに”ベンチプレス”になった言田は楽々と重りを持ち上げる
・大胸筋「私はずっとあなたのそばにいました」
・逃げるゴブリン、美女からこの世界の事を教えてもらう
・この世界では自身の名前の前に種族を名乗ることが礼儀でありとても大切なマナー
・言田は少し考え自身の種族は「人」だと伝える
・この世界には漢字が存在せず、美女に自身の「言田」という漢字を教える
・元の世界で死んだわけではなく、この世界を救うために呼ばれたらしい
・戻るためにはこの世界の魔王を”力比べ”で倒さないとならない
・敵と戦ううちに大胸筋は進化し、自身の筋肉を自由に変化させられる能力を得る
・色々あってこの世界を救うため魔王を倒す
・大胸筋がこの世界にとどまるか、元の世界に戻るかの二択を迫る
・向こうの世界で”ベンチプレス”の世界一となり、この世界に戻ると宣言
・不在の王としてこの世界の住人たちは石碑を建てる

・美女(そして王女)はその石碑に言田の種族と名前を刻む「人」「言田」と


この世界では自身の名前の前に種族を名乗ることが礼儀でありとても大切なマナー


・美女(そして王女)はその石碑に言田の種族と名前を刻む「人」「言田」と…




・そして物語はこの話の冒頭へ…
・その後 言田は元の世界でベンチプレス世界一に。そして消息不明となる。
・しかし元の世界には「信田」を名乗る巨悪が誕生し…?その話はまた別の話


購入してくれたあなた。(2023/05/19~ 有料部分を無料公開しました)
お金を大切にしてください。

わざわざこのnoteにお金を払ってくれるイカれ 方々がいらっしゃるのでちょっと説明等を追記します。多分読んでたら分かる内容とは思いますが…

・最初の方の言田のキャラ違くない?
あれは異世界から戻って来た後の言田ですね。数々の命を賭けた"力比べ"を乗り越えて来てるので、自信に満ち溢れています。
実はあの日がベンチプレス世界大会の当日だったりするのですが、言田は勝利を確信していて、彼にとってはその日すらもただの日常のため、大胸筋にも
"とりあえずジム(=大会会場)に向かうぞ"
としか言いません。彼にとっては世界大会の会場ですら、ベンチプレスができる場所はジムにしか過ぎないのです。
大胸筋の
「言田さまの天候に"雨"はございません。常に晴れでございます」
も勝利の暗喩ですね。
あれだけ自信に溢れて「自身を中心に世界が回る」と言い切る言田が、念の為大胸筋に目覚ましをセットしてるのも大会当日だからです。そんなかわいいところもあります。
ちなみに次の"言田が道を歩けばそこはランウェイ"からは転生前の言田です。だから覚醒した大胸筋も話しません(話せません)し、"ス"を見つけられない自分に苛立ちもあります。


・BIG3はKOWARENAIってどんな歌?
あれはラップですね。はじめは歌にしようとしたんですが「ベンチプレスとウェディングベルって踏めるな…」と思った時には書き上げてました。歌唱って書いたのは単純にそっちのが分かりやすいかなと思ったからです。
結構頑張って韻を踏んでます。


・ベンチプレ って何度も書いてるのはなんで?
刃牙の独歩が子供の頃に紙に「0.99999999……」と書き続けたらいつか「1」になると信じていた。
ってエピソードがあるんですが、それのオマージュです。
だから「ベンチプレ ベンチプレ ベンチプレ」と書き続けています。いつか「ベンチプレス」になると信じているわけです。
個人的にこのエピソードがめちゃくちゃ好きで、結構日常でも「0.99999…」って突き詰めて行くより、急に天から「1」が降ってきたりするなぁ…と思って書きました。言田も急に"ス"を見つけましたよね。
本当は敵との力比べで"ス"を見つける時のエピソードもあります。ただ、最初のゴブリンで見つけるのは微妙かな…(見つけるのが早すぎる)と思ってたので、ちゃんと書いていたら四天王辺りで見つけたら良かったかもしれないですね。


・言田って信田さんの事ですよね?
信田さん…?ちょっとその方は存じないんですが…


・轢かれそうになった子供はどうなったの?
助かりました。実は女の子だったんですが、その後何故か大胸筋フェチになったならないとか…


・言田はモテるの?
モテます。
ホントはもっとめちゃくちゃイヤなやつにして、最終的に魔王よりも遥かに"悪"にして非道の限りを尽させて魔王と他の種族達が一致団結して、言田、向こうの表記では'人言田'を倒すストーリーにしようとしたんですが、書いてたらイイ奴になってしまいました。

そっちのストーリーの言田(人言田)はバーベルに毒を塗ったり、ベンチ台に釘を仕込んだり、セーフティーに細工をして外れるようにしたり、飲水に毒を入れたり、力比べ会場の入口のドアノブに油を塗って開かなくしたりしようとします。
とにかく毒を多様するとんでもない巨悪です。魔王が「それはルール違反では…」と引くレベルです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?