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「答えは現場にない」

先日、大学のある幹部の方のご挨拶で「私は問題の答えは常に現場にあるという信念でやってきた」というご発言があり、聞いているメンバーの多くはそこで大いに頷いていた。

だが、僕はそれを聞いて、苦笑しながらうつむかざるを得なかった。なぜなら「現場」には答えのかけらさえなく、のたうちまわった経験があるから。

それは2012年のある日のこと。笑顔のボスから次のお題をいただいた。「ロボットを活用した世界一生産性の高いホテルのプロトタイプをハウステンボスに作ってほしい。」

ちなみに僕は当時、ロボットはおろか、建築のプロジェクトにも関わったことのない、ど素人だった。一瞬「ひょっとしたらボスは駄目元で言ってるのかも、これはスルーした方が良いのでは」との思いもよぎったが、「いや、これはなんとなく面白そうだぞ!」という自分の心の声が上回り、検討を進めてみることにした。当時僕は社内で「一人室長」だったから、メンバーは他には誰もいない。周りの幹部・スタッフの皆さんはテーマパークで現業を持ってそれぞれ忙しく動き回っており、こんなアホな話に付き合ってくれそうな人はいなそうだった。

はじめは、「答えはきっと現場にある」、そう思った。

なので、テーマパーク内のホテル、あるいは施設管理部門のマネージャーにこの「お題」を投げかけ、意見交換を試みようとしたが、皆笑いながら「ボスがまた変なことを言い出した」と取り合ってもらえなかった。

困惑した僕は、ならばテーマパークの外ならこのお題のヒントが見つかるのではと考え、うなされたようにお題をつぶやきながら街を歩いたり、ホテルのロビーに入ったりしてみた。だが、どう目をこらしても、答えのかけらも見つかりそうになかった。

街をさまよい歩き疲労困憊した僕はようやく悟った。「このお題の答えもヒントも現場には一切ない」ということを。


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