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格闘する姿を見てもらいたい

 今回のコロナ禍が長期戦の様相を呈している中、国際観光を学ぶために入学してくれた長崎国際大学の学生に、どのような話をしたらよいか、正直なところ思案している。
 もちろん、観光は人の健康・安全が確保されて初めて成り立つ業態であり、短期的には不要不急の外出を控え、ウィルス流行の収束に協力すべきであることは言うまでもない。しかし、歴史をみればパンデミックは時期が来れば必ず終わるのであり、ならば、国際観光学科の教員として、将来のある学生に対しコロナ収束後のことについて語る必要がある。その際のキーメッセージは、「コロナウィルスと適切に付き合いつつ、段階的にグローバリゼーションに戻していきましょう」ということではないだろうか。

 具体的にはどういうことか。ハウステンボスの二つの事例を紹介したい。一番目は、2011年、東日本大震災が起きた際の取組みだ。
震災後も売り上げキープした「1.2倍速の法則」 -ハウステンボス社長
https://president.jp/articles/-/8530
 ハウステンボスでは東日本大震災の影響で外国人客が激減した際、外国人や団体のお客様は6か月は来場しないと見切りをつけ、国内向けに反転攻勢をかけた。九州などの近隣のお客様がハウステンボスに足を運んでもらうことに当面注力し、その結果、4月には3割以上、5月には5割売上を伸ばすことに成功した。
 もちろん、今回のコロナ禍と東日本大震災は性質が違う。しかし、観光施設にとって、コロナ収束後、まずは近隣のお客様に足を運んでもらう、という方策は今回も有効ではないか。なぜなら、人の長距離の移動と感染の間に相関関係が認められることに加え、より遠方の外国のお客様の方が風評の影響を受けるからだ。

 二番目は、ハウステンボスが臨時休園後の3月16日に営業を再開した際の取組みである。
ハウステンボス 一部営業再開 屋外施設などに限定 長崎 佐世保
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200316/k10012333831000.html
 ハウステンボスでは、営業を再開するにあたり、テーマパーク内各所での感染予防対策を強化するとともに、利用できる施設を公園や屋外のアトラクション、レストランに限定することで、集団感染のリスクを抑えられるとした。僕はこの件に関しテレビでオンエアされたニュースを見た際、「これは相当現場レベルで対策を検討した上で再開を決断したのだな」と感じた。
 実際には、このパンデミックの収束後も、世界は元の状況には戻らなそうであり、今後は「withコロナ」、コロナウイルスと中長期的にも適切に付き合っていくことが求められることになりそうだ。その際、各観光施設においては必要な対策を講じ感染リスクを抑えることが必須となろう。残念ながら、ハウステンボスは佐世保市からの要請もあり4月6日より再び臨時休業に入っているが、このハウステンボスにおける現場レベルでの取り組みが、日本の観光施設にとってのモデルケースになる可能性がある。

 未来のことを一教員に過ぎない僕がわかるはずはないのだが、少なくとも、希望を持って入学してくれた学生に、「知で格闘する姿」、すなわち変化を怖れずに自分なりに考え、メッセージを発信し、行動する姿、を見てもらいたい。学生に「頑張れよ」と言うなら、自分自身がそれ以上に頑張らないと話にならないだろう。



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