中国BL小説『殺破狼(シャポラン)』 第二章 日本語訳

初めにお読みください
※これは中国の『晋江文学城』というサイトで販売されている『BL小説・殺(杀)破狼』の私訳です。中国語の勉強のために訳したものをupしてます。up範囲は無料で公開されている部分のみです。素人の訳ですので間違いあるかも(絶対あるね!)です。

設定⋯⋯古代中国を舞台にしたSF風ファンタジーBL
攻め⋯⋯長庚(チャングン) この一章では14歳。大人びた雰囲気の少年。かなりのイケメンだと思われる(ここではまだ容姿の描写はなし)
受け⋯⋯沈十六(シェン・シリュ)一章ではこの名前だが実は? 22歳ぐらい?目と耳がかなり悪い。今まで誰もみたことがないレベルの美貌の持ち主。
沈易(シェイ・イ) 25、6歳? 十六の兄ということになっているが⋯⋯ 沈先生


第二章

 長庚が薬湯を持って行ったとき、十六は窓辺に座っていた。
 灯りは蛍ほどの小さなランプ一つ。部屋は薄暗かった。十六の顔のほとんどが影になっていて、瞼を閉じてオカリナを奏でている。長い髪は結わずに、緩やかに肩に広がっている。目尻と耳に小さなホクロがあり、まるで針で刺して血が噴き出たように、赤く美しい色をしている。
 長庚は、部屋の中のわずかな光のすべてが、二つの美の印に吸い込まれていくような気がした、ランプに照らされた十六の姿は、いつもの何倍も魅力的で、その顔に慣れているはずなのに、思わず見入ってしまった。
 素早い瞬きを繰り返して、赤い点を視界から追い払う。
「十六、薬だ」
 咳払いをしてから、声をかけた。
 ちょうど声変わりの時期をむかえていたので、耳が遠い十六と話すのは少し難しい。十六はなんとか聞こえたらしく、耳障りなオカリナを奏でるのを止めた。
 十六が目を細める。そうやると、ぼんやりと戸口に立つ長庚の姿を、なんとか捉えられるのだ。
「長庚、義父への挨拶は?」
 実際には、十六は長庚よりもわずか約7〜8歳年上で、まだ結婚もしていない。自分が何の役にも立たないことはよくわかっているはずで、結婚するつもりもないだろう。そこに突然息子ができたのだ。きっと十六は父と息子という関係を面白がっているに違いない。そう長庚は思っていた。だから父親らしいことは何もできない代わりに、父としての立場だけはこうやって主張したがるんだろう。
 長庚は十六の言葉を無視して、薬湯を渡した。
「さあ、薬が熱いうちに飲んで。もう遅いから、飲んだらすぐに寝ないとだめだ」
 十六はオカリナを横に置くと薬湯を受け取った。
「義父を敬えとあんなに教えたのに、おまえときたら⋯⋯。全部無駄だったな」
 そう言いながら、慣れた様子で薬を飲み干す。長庚が口直しの水を渡すとそれも飲み、立ち上がった。
「今日、長陽峠の市場で楽しい物を買ってきたんだ、こっちに来てごらん」
 机の引き出しの前に座り込む。ほとんど引き出しに顔をくっつけるようにして、何かを探し出した。
 長庚はため息をついた。
「俺が探すよ⋯⋯」十六の代わりに引き出しを開ける。「俺さあ、もう子供じゃないんだ。⋯⋯俺にオモチャを買ってくる以外に、やることないのか?」
 ⋯⋯そんな時間があるのなら、もっとトラブルを起こさないようにしろよ。そうすれば俺はもっと勉強の時間ができる。
 そんな言葉も浮かんだけれど、それは口にはしなかった。十六が傷つくと思ったからだ。
 長庚には義理とはいえもう一人ちゃんとした父親がいる。母の再婚相手の徐百户だ。徐百户は優しかったけれど、軍の仕事が忙しくてほとんど家にいないので、この二年あまり長庚が親しくしているのは、この頼りにならない若い義父の十六だった。
 ⋯⋯頼りにならないなんてもんじゃない。
 長庚は過去の色々なことを思い出して、うんざりした気持ちになった。
 十六は本当に毎日をのらりくらりと遊んで暮らしていた。暇を持て余すのはいいけれど、いつも長庚を引きずり回すのだ。市場に引っ張って行ったり、馬に乗ろうと頼んだり⋯⋯。
 一度などはどこからか「子犬」を拾ってきて長庚にくれたこともあった。その「子犬」を見た兄の沈易は真っ青になった。盲人には犬と狼の区別がつかず、十六が拾ってきたのは狼の子だったのだ。
 そんな事がいっぱいあったけれど、十六が心から長庚のことを愛しんくれているのはよくわかっていたので、長庚の苛立ちはいつも長続きはしない。
 ある時、長庚は高熱を出し、医者からは危険な状態だと言われたことがあった。義理の父の徐百户はいつものように家にいなかったので、長庚を家に運んで看病したのは、この若い義父、十六だった。彼は三日間、朝から夜までずっと長庚を見守ってくれた。
 それに十六は出かけたときは、必ず長庚にお菓子やオモチャを買ってきてくれた。大人びた長庚にとってはどれも、そんなに楽しいものではなかったけれど、十六がいつでもどこでも自分のことを気にかけてくれているということが、嬉しくないはずはない。
 つまり長庚は、十六を見るたびにハラハラするけれど、見ていないと心配でたまらなくなってしまうほどに、この若い義父へ深い思いを抱いているのだった。
 ⋯⋯だけど。
 と、長庚は考えた。
 十六は武術家でも学者でもないし、仕事だって何もできないけれど、もしかしたら将来こんな男でもいいという女性が現れるかもしれない。少なくとも美しさだけは誰よりも優っているのだから⋯⋯。もしそうなったら、十六は結婚して自分の子供を持つことだろう。それでもまだ、この義理の息子のことを気にかけてくれるだろうか?
 そんなことを考えると、なんともいえない気持ちになった。心の中がぐちゃぐちゃにかき混ぜられるようだった。
「あったよ⋯⋯。これだろ?」
 頭の中のモヤモヤを振り払って、長庚は小箱を引き出しから取り出した。
「開けてごらん」
 パチンコのようなオモチャか、それともチーズだろうと思っていた。何も期待せずに開けて、長庚は息をのんだ。
「⋯⋯これって」
 箱の中には鉄製の腕輪が入っていた。
 この『铁腕扣(ティエワンコウ)』は、本当は鎧の一部で、鎧から取り外してこの腕輪だけでも十分に威力があった。铁腕扣の幅は約四寸(12センチ)で、中には3~4本の小刀を隠すことができた。特殊な製法で作られた小刀は、蝉の羽のように薄く、「袖中丝(シウヂォンシ。袖の中の糸)」と呼ばれていた。
 腕輪の中には機械バネが仕込まれていて、それで飛ばされた袖中丝は、数メートル離れたところからでも髪の毛を2つに分けることができると言われていた。それほど鋭い刃と威力を持っている武器なのだ。
「ど⋯⋯どこで手に入れたの?」
「シー! 沈易に聞かれるだろ、静かにしろ。あいつが見たら、これはオモチャじゃないってきっとうるさい。腕に合うかな、つけてごらん」
 薄暗い中庭では、沈易が花に水をやっていた。家の中の会話は全て聞こえていて、自分が聞こえないから人も聞こえないと思っている十六の言葉に、思わず苦笑していた。
 長庚は十六に铁腕扣(ティエワンコウ)の使い方と装着方法を教えてもらった。
 铁腕扣(ティエワンコウ)は貴重で、ほとんど市場には出回っていなかった。もしあってもそれは古い軍の中古品で、大きさも大人の男性のものだ。だけどこれは14歳の長庚の腕にピッタリと合う。
「どこで見つけたんだ?」
 長庚が戸惑って聞くと、十六は説明した。
「大人にはちょっと小さいから売れ残っていた。すごく安かったよ、不良品かもしれないな。武器なんだから、扱いには注意しろよ、人に向けるなよ」
 長庚は感情を表すのが苦手な性格だったので、「ありがとう」と小声で呟く。
「誰に言っているんだ?」
「義父(イフォ)、ありがとう!」今度ははっきりと喜びに溢れた声で言った。
「親を敬う気持ちを忘れるなよ、坊や」
 と言いながら、十六は長庚の肩に腕をまわすと、家の外へ促した。
「さあ、もう家に帰ったほうがいい。今夜は亡霊があちこち彷徨い歩いている」
 チャンゲンはちょっと考えてから、やっと今日が7月15日(中盆)だと思い出した。
 家に帰るとふと、十六がオカリナで吹いていた調子外れな曲が、埋葬の時に奏でる『送西』かもしれないと気がついて、「もしかしたら誰かを弔っていたのだろうか?」と考え込んだ。
 長庚を送った十六は、しばらくよろよろと頭を下げて辺りを手探りし、何とか門の入り口までだどりつくと、ゆっくりと中に入った。中庭で待っていた沈易が無表情に手を貸して、家の中まで連れていく。
「なあ、十六。あれは最高の種類の鉄で作られた腕輪だぞ。三つの刃は秋天林大師が自らお造りになった。大師が亡くなられた後はもう作り手はいない。それを不良品だって?」
 十六は黙っていたけれど、「おい、とぼけるなよ。本当のことをいうつもりなのか?」と沈易がさらに聞いてきたので、口を開いた。
「もちろんそうに決まってるだろ。人の道として当然だろ? あの子の親だって長庚を僕に譲ってくれれば肩の荷が下りる。長庚には最高の暮らしが待っているんだから」
 沈易は少し間を置いてから低く呟いた。
「⋯⋯長庚に恨まれないように進めないといけないが、そこはちゃんと考えているのか?」
 十六は微笑むと、裾を持ち上げながら扉を押しあけた。それから「俺はもうすでに、たくさんの人間に恨まれているよ」と、意味深な顔で言った。
 この中盆の夜、灯りが川の水面に浮かび、魂は家に帰って行った。
 ⋯⋯夜明け前。
 眠っていた長庚はハッとして飛び起きた。彼の身体は熱を持ち、背中に汗をかいている。そして下着が、濡れていた。
 すべての青年は、こういうことがあると知っていても、大抵は慌てふためくだろう。けれど長庚は落ち着いていた。しばらく寝台の上で荒い呼吸を整えてから立ち上がる。
 自分がしてしまったことへの嫌悪感が、わずかに顔に浮かんでいる。
 バケツに冷たい水をくむと、まだ成長途中の若い体を頭からつま先までこすって洗った。綺麗な服に着替え、湯冷しを飲んで、それからいつものように勉強をしようと机の前に座った。
 夢精のことを春の夢という。長庚は他の少年たちの春の夢がどんなものかは知らなかったけれど、少なくとも彼が見た夢はとても『春』とはいえないような夢だった。
 チャンゲンの『春の夢』は激しい吹雪の夢だった。人間を凍らせて殺してしまうほどの、激しく吹き荒れる雪と風だ。白い毛皮のような雪混じりの暴風が、長庚の上を容赦なく襲い続けた。長庚は怪我をしていて、傷口から流れ出る血すらも凍っていた。遠くからは狼の遠吠えが聞こえ、鉄サビのような血の臭いがし、息をするたびに身体中に痛みが走った。長庚の手足は鉛のように重く、ほとんど息もできなくなっていった。長庚はきっとすぐに雪が自分を飲み込んで、押しつぶされてしまうだろうと覚悟した。
 だけど、そうはならなかった。
 長庚が目を開けると、誰かが彼を抱き抱えていた。その男は白い服を着ていて、ほろ苦い薬草の匂いを漂わせていた。男は黙って葡萄酒を飲ませてくれた。
 長庚は葡萄酒に詳しくなかったけれど、この葡萄酒が町で売られている酒よりも強いことはわかった。まるで炎が喉を転がり落ちていくようで、たった一口飲んだだけで長庚の身体中の血が燃えたぎった。
 男は、十六だった。
 恐ろしくリアルな夢で、自分を抱きしめる十六の手の感触が、目覚めた今も身体に残っている。
 ⋯⋯どうしてこんな夢を見たんだろう? 十六は体が弱くて、目も見えないし耳元でよく聞こえないのに。そんな十六が、俺を助けることなんてできるはずがないのに。
 十六にもらった鉄製の腕輪、铁腕扣(ティエワンコウ)は、一晩中腕につけていたのに冷たいままだ。鉄の冷たさを手首に感じながら、長庚は気持ちが落ち着くのを待った。
 ⋯⋯義父を夢で見ながら夢精?
 そんなこと馬鹿げていると思いながら、ランプをつけて本を読み始めたその時に、遠くの方からゴロゴロという地面が揺れるような音が聞こえ始めた。
 ⋯⋯そうだ、今日だ!
 北部へ巡回へ行っていた『巨鸢(ヂィーユァン)』が帰ってくる日だ。
 『巨鸢(ヂィーユァン)』は長さが五千尺以上ある巨大な戦艦だった。船には2つの翼があり、何千もの「炎のひれ」がついている。『巨鸢』が離陸すると、すべての「炎のひれ」が白い蒸気を出す。一つ一つの「炎のひれ」は、紫流金という手のひらほどの大きさの燃料で燃やされ、赤紫色の炎がきらめくのだ。白い水蒸気と赤紫色の炎が何万と輝く様は、人々をうっとりと夢心地にさせた。
 長庚が住んでいる国、大梁は14年前に北の蛮族との戦いに勝った。それ以来、毎年正月の15日になると、辺境の主要な町から十機ほどの『巨鸢』が飛び立ち北部を巡回しているのだった。この田舎町の雁回(ヤンフィ)からも一機が飛び立った。十機ほどの『巨鸢』は偵察を続け、北方の蛮族のわずかな反発さえも見逃さない。こうして反乱の兆しを調べることの他にも『巨鸢』には別の任務もあった。大梁への年貢と、燃料の「紫流金(ヅゥリォウヂィン)」を運んでくる役割だ。
 「燃えるひれ」が炎を吹き出す轟音は、二、三十里(50キロメートル)先からも聞こえる。
 今年一月に出発した『巨鸢』が今日、帰ってきた。

三章につづく


感想

二章で受けさん十六が登場!! すっごく綺麗だというのが『文学的』に書かれてました。魔道祖師とかだったら、例えば藍湛の綺麗さならば、『彼の肌は抜けるように白く、非常に美しい雅な顔をしていた(第三章より)』と書かれていましたが、こっちは『赤いほくろ』を象徴的に使って、十六の美しさが描かれていました。この辺が機械翻訳で読みにくいという噂の元の一つかも?

春の夢⋯⋯夢・精ですよね。 エロい場面すらも『文学的』ですね!!!魏嬰(中華bl小説の魔道祖師の主人公)なら「うわー!、どうしよう!! え? え? なんで俺? 俺、なんで藍湛の夢で夢・精なんかするんだよーー!!」って感じでしょうか? 

出ましたスチームパンク!!巨大な戦艦が空を飛ぶ。これぞスチームパンクSFです。でも文だけだとわかりにくい⋯⋯。そのうちイメージ写真のまとめ作りたいです ww

では、また!


※ここから先は中国語の翻訳に興味がある方だけお読みください!!

ちょっとだけこうやって訳しているよというのを書いてみました!

まず原文、この第二章の最初、十六の美しさの描写です

长庚顺手端了熬好的药,进了他那小义父的屋子。沈十六屋里只点了一盏晦暗的小油灯,豆大的光晕,萤火似的。他正靠窗坐着,大半张脸沉在灯影下,只微许露出一点端倪来,大概是快歇下了,沈十六并未竖冠,披头散发,眼角与耳垂下各长着一颗朱砂小痣,像针扎的,屋里那仅有的一点灯光都被他收来盛在了那对小痣里,近乎灼眼。灯下看人,能比平常还要添三分颜色。爱美之心人皆有之,哪怕看惯了,长庚的呼吸依然忍不住一滞,他飞快地眨了一下眼,像是要把那晃眼的朱砂痣眨出眼皮之外,清了清嗓子,抬高声音道:“十六,吃药了。”


これを「百度翻訳」という中国語に強いと言われているらしいネット上の翻訳サイトで訳すと⋯⋯

長庚は煎じ薬をついでに持ってきて、彼の義父の部屋に入りました。
沈十六部屋では暗いランプを注文しました。豆の大きな光が酔い、蛍のようです。
彼は窓に寄りかかって座っています。大半の顔はランプの影の下に沈んでいます。わずかに手がかりが見えてきました。たぶん休んでいます。沈十六はまだ冠を立てていません。髪を振り乱しています。目じりと耳たぶにはそれぞれ朱砂のほくろが生えています。針で刺さるように、部屋の中のわずかな明かりは彼に収められています。
明かりの下で人を見ると、いつもよりも三分の色が増えます。
愛美の心は人に全部あります。たとえ見慣れても、庚の呼吸が止まってしまいます。彼は素早くまばたきをしました。眩しい朱砂の痣をまぶたの外にまばたきさせようとして、喉を澄まして、声を上げました。「十六、薬を飲みました。」

となります。この機械訳も参考にしながら、辞書を片手に訳しています。お話の前後の関係から「小説っぽく」書き直すと⋯⋯

 長庚が薬湯を持って行ったとき、十六は窓辺に座っていた。
 灯りは蛍ほどの小さなランプ一つ。部屋は薄暗かった。十六の顔のほとんどが影になっていて、瞼を閉じてオカリナを奏でていた。長い髪は結わずに緩やかに肩に広がり、目尻と耳に小さなホクロがあった。まるで針で刺して血が噴き出たように赤く美しい色をしていた。
 部屋の中のわずかな光のすべてが、二つの美の印に吸い込まれていくような気がした、ランプに照らされた十六の姿はいつもの何倍も魅力的で、その顔に慣れているはずなのに長庚は思わず見入ってしまった。
 素早い瞬きを繰り返して、赤い点を視界から追い払うと、
「十六、薬だ」
 咳払いをしてから、声をかけた。

となりました。結構、書き加えたりしてます⋯⋯。他にいい訳し方があればぜひぜひ教えてください、難しいですね、訳って⋯⋯。

kiyo

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