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『記憶ばかり』ライナーノーツ

atUMAではじめて音楽を作りました。
これを読むのは聴く前でも聴いた後でもどっちでも大丈夫です。
なんなら読まなくても無問題です。曲はたくさん聴いてください。

昔からグループで何かを作るということに憧れていました。その中でも特に音楽。グループで音楽をやれたら最高だなと思っていました。

僕が通っていた高校は文化祭が3年に1回しか行われませんでした。なので留年しない限り一回のみ。そんな文化祭のほぼメインとなる体育館ステージでの催し物の募集が行われました。僕は迷わず応募しました。ギター弾き語り。バンドとかいいなーと思っていたけれど、楽器ができる友だちがいない。ていうかそもそも友だちがいない。一人でやるしか無かったわけです。
文化祭当日、前の出番だった先輩女性デュオが高橋優の『福笑い』を弾き語り、すごい良い感じの空気になったあとが俺の出番。一人ステージに立って、歌った4曲15分。ほぼ記憶ないです。
終わった後、知らない同級生から「めっちゃ良かったよ!」と声をかけてもらったり、同じクラスの女子から「もっと聴きたかった」と言われたことで
とてもうれしかったと同時にとても調子に乗りました。そしてとても調子に乗った石井18歳は「将来は音楽もやりたい」と思うようになったわけです。

時が経ちatUMA結成。結成時にコントと演劇と音楽をやるぞ!とメンバーに高らかに宣言していました。
時間が経つとできることも増えてくるもので、所謂トラックメイクのようなことにハマっていた石井25歳はパソコンの打ち込みで作った曲をデモ音源として持っていきました。結果、反応は微妙。メンバーにすら伝わらないということは世に出せない。自分ができると思っていたことは、まだ素人に毛が生えた程度のものだったのだとひどく落ち込みました。

でも音楽はやりたい。話し合いの中でメンバーの山本が「あれいいじゃないですか」と言ってきました。
”あれ”というのは山本、古賀も出演した石井博貴短編演劇集「Cからはじめよう」で披露したコントの中で出てくる路上ミュージシャンが歌った曲でした。確かに自分で作曲したオリジナル曲ではありましたが、コントの中のいわば劇中曲だったので、音源化するなんて一ミリも考えていませんでした。ただ、普段良いものは良い悪いものは悪いと言ってくれるメンバーが良いと言ってくれたものですから、信じないこともないわけで、atUMAの最初の音楽作品はその劇中曲でいこうと、そうなったわけです。

劇中曲だったため1コーラス分しか作っていなかったので続きの歌詞や展開を考えるところからはじまりました。
ちなみに当初からあった1番の歌詞はこんな感じ

今日もいいことなかったなと
疲れた足を引きずりながら
駅前 路上の占い師に
話を聞いてもらったり
馬鹿な男と思うけれど
おそらくそれはお互い様
忘れたいのに思い出すのは
なぜだか楽しい記憶ばかり
先のことなど知ってたまるか
わからないからこそ人生は
楽しかったりするもんだな
つらかったりもするけれど

コントの内容が恋愛や仕事がうまくいかない女性が占い師に助言を求めるという内容だったため、こういう歌詞にしていました。音源化するにあたり一部変えたりしてしまおうかとも思いましたが、ここから物語を膨らませられたら楽しいかもと思い、このままいくことにしました。

今日はいいことがあったなと
思えるときは決まっていつも
あなたと言葉交わせたこと
思い出しては笑ったり
そんな時代もあったねと
懐かしくなり恥ずかしくなる
さようならだけこんな簡単
部屋中あなたの記憶ばかり
先のことなど知ってたまるか
わからないからこそ人生は
楽しかったりするもんだな
つらかったりもするけれど

これは2番の歌詞。
当初は1番が女性目線で2番が男性目線の歌詞でいこうと書き始めましたが、歌詞を書いてるうちにだんだんと単純な失恋の歌じゃなく、いろんな意味での”失う”ということについての歌にしようと思い、2番の主人公の状態はいろんなパターンが考えられるように敢えて抽象的にすることにしました。

今日はいいことがあったよと
話せるときは気づかないもの
あなたに代わる人なんて
いないのにいつも自分ばかり
先のことなど知ってたまるか
わからないからこそ人生は
楽しかったりするもんだな
つらかったりもするけれど

そしてこの3番に続きます。

年齢を重ねるにつれて何かを失うということが何ら特別なことではないということを実感するようになってきました。この数年で同じような気持ちになった人も少なくないのではないかと思います。
”失う”という事態に相対したときにはじめて気づく大切さみたいなことは今までも散々いろんな作品で描かれてきました。描かれすぎてそんなことはもうわかってんだよという気持ちにもなっていたので、この曲は「いずれ”失う”ということはわかったうえで知らないふりをして生きよう。それが人生だ。」と割り切ったポジティブな歌にしようと思いました。

そういう意味で楽曲自体のアレンジも、無理に慣れていない打ち込みなどで編曲をしたりせず、ギターとボーカルというシンプルだけど自信を持ってできることでやってやろうと思いこの『記憶ばかり』という曲ができあがっていったわけです。

思い返せば結局はじまりはギターの弾き語りになるんだなと、高校の文化祭のステージに立ったときのことを思い出したりしました。

自分で自分の作った曲に関して感想を言うのも変ですが、とにかく古賀は歌が上手い。山本は歌が苦手だと自分では言いますが自分の声の良さにそろそろ気づいた方がいいと思います。最後の3人でユニゾンするところは自分で聴いてもおっ!となりました。

『記憶ばかり』けっこう自信作です。ぜひ、たくさん聴いてください。
記憶ばかり by atUMA | TuneCore Japan (linkco.re)



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