見出し画像

20171203“ながれものたちの夜vol.5”@OOH-LA-LA

そういえば、冬の「ながれものたちの夜」は初めてだった。ウーララに向かう阪急電車からは紅葉が見えて、確かにまだ秋なのかもしれないな、と思いながら眺めた。あの日は春だったから桜が咲いていたのにな。

楽器の少なさを物ともしない、2ピースの可能性を教えてくれたバンド、50/50's。セットの都合上でもあったが、毎回のライブが間違いなくカッコいい彼らなので、安心してトップバッターを任せられた。

いつもライブ前にステージ上で乾杯する2人は、今日はハートランドで乾杯。ドラムの池本くんは曲の合間に「さあみなさん、ダンスの時間ですよ」と「KILL YOUR IDOL」のケイゾウさんのセリフで会場を沸かせる。ギターソロのときには、飛び跳ねたりお酒を飲んだり、自由な彼を見るのも楽しい。そしてギターボーカル礒崎くんは、絶妙なギターソロで観客を唸らせ、わたしもついニヤついてしまった。彼はいつもまるで何かに取り憑かれたかのようにギターを弾き、叫ぶ。良い意味でクレイジーで最高のギタリスト。曲名がまだわからないけど、最近やっている礒崎くん曰く「スローな曲」がとても良い。新しい50/50'sの一面を見られた気がする曲。はっきりとは思い出せないけれど歌詞も良かったから、次回もっとしっかり聴こうと思う。そしてそのスローな曲のあとも再びバチバチな曲を立て続けに披露。汗で髪を濡らしながら、最後までパワフルな演奏を続けた。まさに圧巻のパフォーマンス。期待通り、いや、期待以上にイカしてるライブをしてくれた。彼らは最高のエンターテイナーで、見ている人たちを楽しませるのが本当に上手いと実感した。惚れ惚れした。観客は拍手喝采、思わずため息を漏らしていた。

2番目はPurple Heads。ロックンロールを愛し、これからも継承し続けるであろう、若き3人組。まだ活動期間が短いことと、普段のライブの本数が少ないことからまだ彼らを見たことがない人が多いと思い、今回たくさんの人にどうしても見て欲しかった。

ドラムを中央に置き、3人が横並びになるセットは、あのバンドを意識しているのだそう。ドラムのソウトくんは中学3年生だが、素人のわたしから見てもわかるくらいの上手さなので、これから化け物みたいなドラマーになりそう。特に今日はギラギラとしたドラミングで、というか見るたびに間違いなく上達しているからいつも見るのが楽しみ。メンバー随一の破天荒・ベースの田吾作は、今日は自前マイクを壊していた。彼なりの気合いが垣間見えた。そして、ギターボーカルのはまくん。最近個人的に思うのが、彼の歌声はスローな曲で引き立つということ。「Through and away」は本当にいい曲。これからもずっと歌い続けて欲しい。

Purple Headsは同世代のバンドのなかで良い意味で浮いているというか、独特の雰囲気を醸し出していて…全然うまく書けないけれど、すごく良い。「見ればわかる」なんて言葉は投げやりな気がしてあまり使いたくないけど、見てもらわないと伝わらない。きっとこれからたくさん試行錯誤を重ねて、どんどん化けるバンドだと思う。面白いバンドだ。ただいまレコーディング中でアルバムをリリースするそうなので、そちらも期待したい。

続いてながれものたちの夜3回目の出演、ベランパレード。2015年9月から2年ぶりにウーララに来てくれた。あれからギターはコウタさんが加入し、関西に来る機会も増え、新曲もたくさん加わった現在のベランパレードをながれもので見せて欲しかった。きっと今回の出演者陣で一際違う雰囲気のベランパレードが、なぜ今回ブッキングしたのか不思議に思う人も居たかもしれない。その訳は後述する。

一曲目の「アイスクリーム」は曲名から予想できるように可愛い曲。続いてライブ定番曲の「海へ行こう」を演奏。きっとベランを見たことのない観客はこの二曲で油断したはず。ボーカルあびさんはキングのファンを「キンブラギャル」と称したり、いつもながら毒舌交えたMCで煽る。「ヤッチャイナ」「風邪のビリア」はポップでキャッチーだけど、確かにメンバーのパンク精神を感じられるパフォーマンスだった。

あびさんは「ロックンロールというのは音楽のジャンルじゃなくて、隣の席の女の子が消しゴムを拾ってくれたことが僕にとってはロックンロールなんですよ」とMCで言った。そうそう、そうなんだよ、ベランパレードは!という気持ちになった。なんかとても嬉しくなった。あびさんを筆頭に、ベランパレードはキュートなお面を被ったパンクスなのだ!

まさかウーララライスのこと覚えてくれてると思わなくて、むず痒くなったけど嬉しかった。

最後の曲「ナイトウォーリー」でばっちりと盛り上げ、2年前のながれもののライブをひょいと軽々超えてしまうくらい、格段にパワーアップしたベランパレードだった。

KBSホールでのライブ後、本日2回目のステージだったKING BROTHERS。わたしがキングに出逢ってからこんなことは初めてで、予測不能、主催者ではあるがワクワクしていた。それと同時に、気持ちがいっぱいいっぱいだったので、他のバンドに比べるとはっきりと覚えられていない箇所が多々ある。

お馴染みのSEで登場し、「魂を売り飛ばせ」で観客を踊らせたかと思いきや、彼らは早々にセットを動かしフロアライブに持ち込んだ。まさかウーララでこれを見れるとは…!「space ship」は個人的に久しぶりに聴いた気がしたので嬉しかった。至近距離でのフロアライブ、あっという間に会場はヒートアップ。

うろ覚えだが、ケイゾウさんは「今日2番目に出てたバンドのドラム、中学生らしいぜ」と言い放ち、どこか嬉しそうな顔をしていた。そしてさすがに天井も低いし、今日はないかもな、と思っていたがやはりマーヤは観客の上に飛び込んだ。お馴染みの西宮コールがながれものたち夜で聴けた。マーヤは「どこの誰だかわからない人たちがやってくるながれものたちの夜!ウーララ!」と叫んでいた。今日2回目のステージと感じさせない、流石のライブだった。

ケイゾウさんは最後に「今日出ていたバンド、これからも応援しましょう」と締めくくった。

わたしは、かっこいいバンドを見てると自分までかっこよくなれた気分になる。ロックンロールって音楽だけじゃなくて生き方だと思う。今回出演してくれたバンドはジャンルが違うけれど、そんな人たちだった。音楽の魔力は凄くて、聴くといつだって様々なことが鮮明に蘇ってくる。すごい。年を経ていくなかで、もう会えなくなった人も増えたけど、音楽を聴くとまた逢えそうな気がする。あの雨の夜に、いつかまた逢いに来てよって歌ってたのも、100回続けて、本気で言うてるねんでって指差されたのも、わたしは全部覚えている。

50/50'sとPurple Headsはこれから関西のシーンを牽引していくような若いバンド。ベランパレードはこの2組と住んでる場所も曲の雰囲気も違うけれど、誰でも思い付くようなブッキングならば、わざわざリスナーのわたしたちが企画を打つ意味はないとずっと思っていて、他の人がやらないような組み合わせをあえてやりたかった。「おもしろいことを考えて みんなを楽しくさせたいな」ってことだよ。

そして、大好きで自信を持って良いと言える若いバンドが、憧れのキングブラザーズと共演するところが見たかった。キングはツアーで各地方の無名のバンドを呼んだり、良いと思ったものは良いとはっきり言ってくれて、ベテランなのに若手バンドのこともちゃんと見てくれる素敵なバンド。ケイゾウさんは何も言わずとも今回のイベントの趣旨を汲み取ってくださっていた。それが心底嬉しかった。

来てくれたお客さんにはただただ楽しんでもらえてればそれで良いのだけれど、出来ればまた今日見たバンドのライブに足を運んでほしい。そしてみんな売れてほしい。バンドを続けてほしい。

西院からの帰りの車から見た5時くらいの空はまだ夜みたいに真っ暗で、落ちてきそうなくらいの大きな月が出ていた。朝が来てほしくなかった。あの日あの空拝めるのは、あの日のボクらだけなんだなあ。2017年の12月3日まで生きのばして良かったです。会いたくなったらまた来いよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?