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ansaレビュー#1 今手に取るべき小説No.1【流浪の月】

ミーハーで、オススメはすぐ買う。すぐ読む。すぐ聴く。そんな私が今回購入したのが、凪良ゆうさんの「流浪の月」です。

これは2020年の本屋大賞受賞作品で、読書家の方々には「遅いよ!」とツッコミを入れられてしまいそうですね。

ただ、繰り返しますが、私はミーハーで影響受けまくりな人間なのです。今回この本を手に取ったのは、好きな女優さんのオススメだったからというなんとも浅はかな理由です。お許しください。

早速、意気込んでレビューです。

ansaレビュー#1
「流浪の月」凪良ゆう 東京創元社

まず、読み終わって。私は愕然としました。こんなにも人の善意に傷つけられる人間がいるとは俄かに信じがたかったからです。いや、信じがたかったというより、受け入れられなかったとでも言いましょうか。善意を差し出す側も、受け取る側も、誰にも落ち度はありません。差し出す側は、ただ、優しくしたい、わかってあげたいという清廉なる想いを精いっぱい丁寧に包み込んで届けたいだけなのに。受け取る側も、これが痛いほどわかるから、その善意のヴェールを突き破ること、傷をつけることはしたくないのに。したくないのだけれど、でも、それを受け取って自分の中に浸潤させることもできないのです。

物語に特に目立った大展開がボコスカ出てくるわけではないのだけれどそのどれもがあまりに真っ当で、なのにあまりに残酷で、静かに心抉られる物語でした。

私が一貫して気になったのは、「ちゃんと」という表現が多発していたことです。
更紗からしたら文は「ちゃんと」した家庭で育った人。亮は更紗に、俺が「ちゃんと」するから、と。

「ちゃんと」するってなんだろう、と思わずにはいられませんでした。

普通でいること?
物事を真っ当にこなすこと?
じゃあ普通って?ちゃんとしたらどうなるの?

ちゃんとしなきゃいけない理由って、
なんなんでしょう。

更紗は「ちゃんと」しなかったから、被害者としての烙印を一生押され続けることになってしまったのでしょうか。文は「ちゃんと」生きていたのに、なぜ加害者として生きていかなきゃいけなくなってしまったのでしょうか。


最後に、これだけは言わせてください。

この本、装丁がとんでもなく美しい!!!

正直、「ジャケ買い」くらいの感覚で本を選んだ私には、本の装丁に興味関心はありませんでした。でも、手に取って、紙をめくり、表紙に至るまで、なんと紙質の絶妙なこと。惚れ惚れしちゃう。カバーを外してみると、ひゃあ!もうそこには見た人にしかわからないときめきが待っています。うっとりしてしまいました。(装丁を手掛けられたのは鈴木久美さんという方だそうです。)
文庫本ではなく、是非ともハードカバーで堪能していただきたい一冊です。

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