見出し画像

五反田団 愛に関するいくつかの断片

どしゃ降りのGW初日五反田団の新作を観にアトリエヘリコプターへと向かった。五反田の静寂な住宅街と高層ビルの佇まいは観劇前のワクワクとドキドキを自然と落ち着かせてくれる最高の道のりだ。

観劇デビューは五反田団の「偉大なる生活の冒険」だった。初めて観るその舞台の衝撃と感動が忘れられず、その体験をもう一度味わいたいと願いそこからさまざまな劇場に足を運んだ。最初に食べた味がその後の人生を決める。ミニマムな五反田団とゴージャスな野田地図が現時点でお気に入りの劇団だ。

今回の公演も余韻が尾を引く紛れもない傑作だった。延期になったこの2年でより作品の純度が高くなったであろう。

男女間でのあるある話をバラバラに切り刻んでコラージュしミスリードさせる。登場人物全員が曖昧で目に見えない愛とやらに振り回されている。人間のわからなさやどうしようもなさをドロッとそのまま見せることで喜劇と悲劇を同時に堪能できる。笑えるのになんか悲しい、泣いてるのになんか楽しい。喜怒哀楽は言葉の響きほど単純ではない。

そして上演台本を読み終え改めて照明と舞台設計の巧妙さに唸った。物理的に狭い空間でも光と影一つで違うシーンにいとも簡単に転換させ、私たちの想像力をとめどなく広げる術は演劇ならではの豊かさ。制約こそクリエイティブの源であり、できることは無限にあることを再確認させられた。

愛は勝つ。愛がなんだ。愛こそすべて。愛を込めて花束を。愛なんていらねえよ、夏。愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない。

愛は永遠に語り継がれる。