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塞翁が馬 ~我が道を行く~

 前回までは起業の具体的なイメージや帳簿の大切さ、考え方の癖等のお話をしました。
 今回は営業についてのお話です。

 「我が道を行く」

 起業するとそういう生き方をすると思われがちです。基本的にはそうならざるを得ないと感じます。ですが、その前に知っておくべきことがあると思っています。そのあたりについて書いてみたいと思います。

 私見ですが営業という職業は人としての最強属性が求められる職業なのではないかと思います。誰でもなれるんだけど、極めるには相当難しい。私が一緒にお仕事をさせて頂いている方でも特に営業部門の方には「この人には敵わない」と思う人がたくさんいらっしゃいます。

人間万事塞翁が馬

それは吉兆?それとも凶兆?

 生きていると様々な出来事が起きます。楽しいことや嬉しいことばかりではありません。どれだけ頑張ってもうまくいかないこともあります。そしてうまくいかないことは自身の成長とともに増えていくように思います。

 ところでタイトルの「(人間万事)塞翁が馬」という言葉はご存知でしょうか?
 周囲の人が吉兆だと感じる出来事に対して、浮かれることなく凶兆であると調子に乗らない。逆に凶兆だと思われる出来事に対しても雰囲気に飲まれることなく吉兆だと捉える。これができるのは単細胞の天邪鬼か、百戦錬磨の手練れかどちらかです。もちろん後者になりましょう。

モノは言いよう、聞き取りよう

 大学時代、アルバイトをしていた時のことです。そこで一緒に働いていた私よりも若い女の子にこんなことを言われたことがあります。

「先輩、モノは言いよう、受け取りようですよ」

 言われて嬉しかったこと。言われて嫌な気持ちになったこと。皆さんにも経験があると思います。明らかに愚弄するような言葉を言われた時に心が揺らがない人になるのは難しい。
 ですがそれほど極端な言葉ではない場合、あらゆる言葉は取りようによってその捉え方をコントロールすることが出来るべきだと考えています。
 さながら合気道のように発せられた言葉の力を利用するわけです。そしてそれには受け取る自分の力量が重要となってきます。

禍福は糾える縄の如し

 先日アカデミー賞を受賞した映画「ドライブ・マイ・カー」(原作著者:村上春樹氏)で西島秀俊さんが演じる主人公の名前が「家福」でしたね。字は違いますが「禍福」を意識したものだろうと思います。禍福とは幸不幸のこと。それらはまるで編んだ縄のように交互にやってくる、というのがこの言葉の意味です。

 自分に何かしらの出来事が起こるたびに「禍」と「福」が入れ替わり繰り返されます。何十回、何百回と入れ替わるうちに縄となり誰かの役に立つことがあります。もしかすると役に立つことなんてないのかもしれませんがそんなことは考えるだけ無駄。どうでもいいです。

 大切なのは「禍」ばかりでも「福」ばかりでもない。その理を理解しておくこと。そしてそのためには自己研鑽による心のスキルアップが必要だということです。くじが外れたぐらいでグダグダ言っている場合ではないのです。

失意泰然、得意平然

 仕事をしていると辛いことがたくさんあります。ですがそれと同じだけ幸せなこともあります。
 辛いことの方が多いと感じる人は内罰的思考が強く、辛いことの多い方が生きている気がすると思い込んでいるだけかもしれません。
 幸せなことが多いと思う人は楽観的、脳天気(しかし脳天気って凄い言葉だな)が強めかも。自分が原因で誰かが辛い思いをしているかもしれません(まあ「人は一日生きれば一日分の迷惑を誰かにかける」という考え方もありますが)

 私は経営者になりたての頃によく父から「失意泰然、得意平然」ということ言われました。誰かに何かあったの?と言われているようではまだまだひよっこなのです。

幸も不幸も同じ数

 辛いときはそれを誰かに気づかれないようにしたいものです。確かにしんどいです。嫌になります。ついつい誰かに気づいてほしいと思ってしまう人は(私ですが)できるだけ無理をしてください(笑)
 え?いったいなぜかって?

 神様が見ていてくれるから

 気付いていますよね?それは嘘です。ブルーハーツも言ってます。

「苦労すれば報われる、そんな言葉は空っぽだ」

 誰かに気づいてもらわなければいけないような頑張りは本当の頑張りではありません。それは承認欲求を満たす為だけにある頑張りです。自分がなぜ頑張らなければいけないのかという本質が見えていません。

 自分はそんなことないよ。という人がいます。え?本当ですか?それってそう思えない程度の頑張りってことじゃないですか?

 そう。頑張ったり工夫したりしたら認めて欲しいものなのです。めちゃくちゃ頑張った時は特に。
 でもね、自分が誰かの頑張りや工夫に気付けるようになることが先なんです。それが出来ていないのに自分の頑張りは認めてもらおうなんて虫が良すぎるんです。

では、誰が気付いてくれるの?

 先ほども述べたように誰かに気が付いてもらう必要がある努力や頑張りは本当のそれではないのです。ほら、B'zも言ってます。

「祝福が欲しいのなら、悲しみを知り一人で泣きましょう」

 そして輝くのがウルトラソウルです。

結局行きつくところは「人」と「なり」

 そうやって苦労を見せない人は話していると分かります。なんせ懐が深い。何を言ってもしなやかに対応します。多くの人と話ができてより高い次元でお話をされているように思います。
 もちろん彼も人、我も人です。ですが僅かな考え方の差が言葉遣いや態度に現れることも事実です。

それでうまくいくほど世の中甘くない

 ですが、その心構えだけで仕事が取れるほど世の中は甘くはありません。その心構えがあることがまずはスタートライン。自分のこだわりや柔軟性が細部まで行き届いてこそ、その先があるわけです。

こんな時どうする?「ディスカウント編」

 では少し具体例を見てみましょう。

 あなたは営業です。今月の売上げノルマがもう少しで達成できそう。そんな時お客様から連絡が入ります。

 「ディスカウントしてくれたら買う」

 多少のディスカウントは可能だとします。ですがディスカウントしてしまうと売上げノルマが達成できなくなります。そうなるともう1つ案件を取ってこなければいけません。
 このようなシチュエーションの場合あなたならどうしますか?

 お客様との関係性や将来性もあるので一概にどうということは言えないのですが、パッと思いつくだけでも様々な選択肢があると思います。私は以下を思いつきました。

選択肢

1.ディスカウントしない

2.ディスカウントしてもう1件探す

3.ディスカウントの条件としてお客様を紹介してもらう

 このような場合、先ずは選択肢が複数あることに感謝します(神様ありがとう!)
 そしてこの中からどれを選択するかにはコツがあります。それは、

どれにも決めない

 というもの。え?選択肢の意味w

 これらの選択肢は全てその可能性があります。1つに決めてしまうにはまだ情報が足りないと考えます。例えばお客様がディスカウントしてほしい理由は何なのでしょうか?もちろん予算がないわけなのですが、それは何故でしょう?

  • 見込んでいた案件がスリップ(時期ずれ)又はロスト(失注や立ち消え)して予算が取れない

  • 決算月である

  • 別案件でお金がかかる

 様々な事情があると思います。中には「知らんがな」というものも。
 ですがこれは恩を売るチャンスかもしれません。ここで恩を売っておけば次につながるかもしれません。もしつながらないような恩知らずならお付き合いをぼちぼちにすればいいのです(ここでお付き合いを止めないバランス感覚も必要です。もちろん許せない場合はお付き合いを止めるのもありなんですけどね)

これって

 人間関係にも言えることだと思いませんか?
 人間関係の全てを損得で考えるのは良くありませんが、この人になら何かしたいと思える人はきっと相手も自分に何かをしてくれようとしている人です。
 この人には何もしたくないなと思うのは何かしらの遣り甲斐を感じられないから。誠意をもって対応した人に相手にされないということは自分の誠意が理解してもらえない人なわけです。

 こんなところにも「禍」「福」が交互に現われるわけです。

 そこでベクトルを反転してください。

 あなたは誰かの誠意に気が付けていますか?
 それも特に

言わずにいてくれたこと

 に気付けるようになると上級者です。
 あの時本当はこう言いたかったんじゃないだろうか。でも言わずにいてくれたんだ。気が付けないくて本当に申し訳ない。心からそう思えることがありましたか?

 私は社長として社員に言わずにいることがたくさんあります。中には言う必要のないこともあります。ですがほとんどは彼らが自分で気が付くという成長を信じ、心から祝福したいという思いから伝えていない事ばかりです。

 はいここでベクトルを反転します。

 ということは私に対しても、言わずにいてくれた人や言葉がたくさんあるんです。そしてそれらは私の成長を心から喜んでくれている人達の想いや期待が詰まったものです。まだすべてに気が付けているわけではありません。ですが言わずにいてくれて本当にありがとう。その時にその心遣いに気が付けなくて本当に申し訳ない。だから、また頑張ろうと思います。

 さあ、準備ができたらあとは自分の思うように進むだけ。流した涙のことは忘れて、我が道を行きましょう。

今回の内容は2022年5月13日の stand.fm でお話しします。
生配信は朝10時から。皆さんのご意見お聞かせください。


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