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進撃の巨人の25巻のヤバさについて

進撃の巨人って、運命と自由の物語なんですよ。

という話をするために、まず運命の話をします。

前提として、それは確実に存在するものです。身近な“運命”として挙げられるものは例えば、子供は親(環境)を選べないということ、人は死ぬということ、等々…。辞書的な意味としては、人の意志を超越してるもの。

そして運命の対立概念は、自由です。

ただ自由という言葉ではやや曖昧に聞こえてしまうので、こう定義してみましょう。自由とは、選択できる状態である

すると運命についてはこう定義できます。運命とは、選択できない状態である

で、もう一度言います。進撃の巨人って運命と自由の物語なんですよ。より厳密に言うなら、登場人物一人ひとりが運命を受け入れ、自由を獲得する話。選択肢のない現実を認め、それでも自分の手で何かを選ぶ物語。運命を、自由の力で抵抗する話。

具体的に見ていきます。

19巻のベルトルトが巨人化する直前のシーン。

進撃の巨人にはいくつかキーワードというものがあり「残酷な世界」「仕方がない」というのはその一部です。

「残酷な世界」という言葉は上述した通り選択肢のない場面で使われることが多く、「仕方がない」という言葉はそれを受け入れる覚悟ができたときに発せられます。要約すると、運命を享受し、その上で何をするのか自分で決めたんですね(自由)。

ベルトルトのこのシーンは、進撃の巨人のエッセンスが詰まった場面と言えます。

このように運命という言葉はいくつかの言葉に置き換えられており、例えば「奴隷」とかもそうですね。

……で、進撃の巨人は「選択(自由)」によってそういった「運命」に立ち向かう物語なのですが、人間には、絶対に、どうしようもなく避けられない究極の運命というものが存在します。

それは、「生まれてきたこと」です。

先ほどキーワードがあるという話をしましたが、その中でも最重要キーワードというか、作品のテーマそのものだと自分は考えています。

この「生まれてきたこと」というモチーフは、作品の至るところに散りばめられています。

ちなみにですが、この自分(達)が生まれてきたことに対して否定的なのがジークで、

肯定の祝福を受けているのがエレン、という対立構造になっています。


……と、ここまでが前提になります。本題に入ります。


25巻って、マジでヤバいんですよね。

正確に言うと、ちょうど第100話の“宣戦布告”の回がです。

この回で、エレンはこれまでの人生で受けてきた理不尽=運命を決定的に受け入れるんですね。

実は、わざわざエレンがライナーにこのタイミングで会わなければならない戦術的な理由ってないんですよね。足止めという理由もあるかもしれないけど、別にエレンがリスクを背負ってする必要はない。ではなぜ“エレン”が“ライナー”に会いに行ったのか。

“確認”するためですよね。自分の母親が巨人に殺されたことや、大勢の人々が死んでしまったことが「仕方がなかった」のかどうか。

ではなぜ「仕方がなかった」と受け入れることができたのか。

それはエレンたち調査兵団が、散々やってきたからです。“悪”である巨人を駆逐して、世界を救うんだと。ライナーが(結果論だとしても)エレンの母親を殺してしまった理由と、エレンが巨人を倒そうとする動機が、寸分違わず同じだったんです。

もっと言うなら……「この役割は自分じゃないほうが良かったんじゃないか」という自責の念に駆られて、殺せって言ってるようなところまでそっくりなんですよね。


同じだから理解できてしまう。受け入れることができてしまった。

そこにタイバーの演説が入ります。

「多分…生まれた時からこうなんだ」

ここです。この台詞が、進撃の巨人で多分一番ヤバい。

人の絶対的に避けられない運命は、生まれてくることだという話をしました。

タイバーは「生まれてきたくなかったが、生まれてきてしまったので、パラディ島の悪魔を根絶やしにしなければならない」と言っています(自らをエサにしたとはいえ)。

それを諦めたような、悲しげな顔で聞きながら「生まれた時からこうなんだ」とライナーに語りかけます。

では「こう」とは?

一つは、エレンという人間の性質、実存の話でしょう。

もう一つの意味は……こう、というのは、現状のことではないでしょうか?

つまり……エレンが生まれたときから、こうやってライナーたちと殺し合うことが決まっていたんじゃないか。

生まれてきてしまったからエレンたちを殺さなくてはならないという演説を聞いてしまった。

だから自然と口に出てしまった。「多分、生まれた時から俺たちが殺し合うことは決まってたんだ」と。

いくら自由を追求しても、より大きな運命の手のひらで転がってるだけなんだという諦念。

だから進み続ける。正解不正解が後からしか分からないとしても、たとえ間違っていたとしても、選択できる状態を、自由を失わないために。


……ごめんなさい、自分の文章力と表現力が足りないせいで伝わってるか自信ないです。伝わってます?

これがだいたい1年半前のツイートで、そっからずっと考えてたんですけど、結局うまいこと言語化できなかったですね。難しいなぁ〜。

あ、書きそびれたからので書いとくと、宣戦布告、というのは世界→パラディ島とエレン→世界のダブルミーニングですね。


……まぁもっとまとまったらなんらかの形で吐き出せたらいいな〜と思います。とりあえず来月号楽しみすぎる読ませてくれ〜って感じですね!

おしまい

#進撃の巨人10周年

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